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恋と学歴

「何よ、相手が早稲田ならまだしも慶應と立教は付き合っちゃいけないなんて法律ないでしょ?!」

「いや、麻里奈ちゃん、冷静になるんだ」


純子がメガネをくいっと指で上げて麻里奈を見つめる。


「麻里奈ちゃんは気にしなくても相手が気にする確率は著しく高いと思うよ」

「そうだよ~女が慶應で男がMARCHなんて、あず聞いたことないもん!」

「隠れて存在してるかもしれないじゃない!」

「いたとして上手くいってんのかな・・・」

「お互い胸の内に(くすぶ)るモノがありそうね」


麻里奈は絶句した。


中学・高校とグレまくって渋谷で補導されてばかりだった元チーマーの麻里奈の思考に、”学歴が男女の色恋に与える影響”などというものは存在しなかったのだ。


そしてここにきて、やっぱり奏士が麻里奈を好きな確率はほぼ皆無と見なされ、麻里奈の片思いという状況だけが残された。


「じゃあなに?!アタシどうすればいいのよ?!それでなくても最近コンプラ厳しいから下手なことはできないんだけど!!」


五人は輪になり作戦会議を開く。


「現状を整理すると、相手は麻里奈ちゃんより二十歳年下の新卒社員で直属の部下ってことだね」

「んで、大学は立教」

「対して麻里奈ちゃんは相手より二十歳年上で白鷗堂のグループリーダー、上司ってコト~」

「一浪してるけど慶應卒よ」


チラシの裏側に麻里奈と奏士のプロフィールとスペックが書き込まれていく。


「つまりこの二人を比較すると、どう考えても麻里奈ちゃんの方が色々上なワケだ」

「高齢、高学歴、高収入、つまり三高ね」


懐かしい単語出てきた~・・・という気分に一瞬なったが、そんなことを言っている場合ではない。


「麻里奈は圧倒的に不利だね」

「そうね。大学出たての男の子がこんな馬力の強い女に迫られたらビビるに決まってるわ」

「竹馬にイスラエル製戦車が突っ込むようなものだ」

「退職代行案件でしょ~」

「ちょっと!じゃあどうすればいいの?!諦めろって?!」


焦る麻里奈と真剣に考える四人。


中々の難題に直面しているが、こちとらこれでも慶應卒、福澤先生の門下生を名乗る人間にとって、問題とは解決するために存在するものである。


「広告代理店の中で生まれた問題なんだから、いっそ会社の力を使って解決すればいいんじゃないかな」

「え?どうやって?」

「世の中の価値観を変えればいいんだよ」


純子はおもむろにアイパッドを取り出し、画像を見せる。


「年上女性の価値を広めて、そのボーイに惚れさせる、とかね」


画面いっぱいに広がるのは、『私の一日は、これ』というキャッチコピーと、レモン味の炭酸水のペットボトルを持ちカッコイイ系パンツスーツでポーズをキメる人気女優・井川晴美(いがわはるみ)、御年四十八歳。


去年、麻里奈のグループが手掛けた炭酸飲料の広告である。


(その手があったかーーー!!!)


「いいじゃん!CMにブッキングするの全部アラフォーの女優とかモデルにしちゃいなよ!」

「雑誌の表紙も全部お姉さん系のモデルで埋めるとか!」

「年上女性とのオフィスラブのドラマ作るとか~!」

「ドラマ作るならテレビ局の偉い人の協力が必要だねえ」


五人はそれぞれの脳内に蓄積した人事データを高速で検索し、頼れそうな大学のOBOGをピックアップする。


「テレビアジアの大和田プロデューサー同じ学部卒!」

「モリプロの副社長は幼稚舎からで今年長男が医学部に入学してるわ!」

「ネットフレックスジャパンの専務はゼミのOGだったね」


次々と営業先をリストアップしていく麻里奈。


「いいじゃ~ん麻里奈ちゃん!仕事もプライベートも上手くいって一石二鳥だよ!!」

「そうね!アタシに実現できない企画はないわ!!」


夜通し作戦会議は続き、次々と企画書が作られていく。


「年上女性ブームを起こすわよ!!!」


かくして、麻里奈とその仲間達と三田会による、私利私欲にまみれた計画が実行されることになった!

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