穏やかなる血祭現場
朝チュンで目が覚める。
今日こそはスキルを決めて行こう。
現在『輝く希望』には魔術師メディアがいる。
となるとやはり前衛として体術系スキルを取っておくべきだな。
勇者の剣技には接頭語として大体ブレイブが付いている。
直訳すると勇敢だったり勇敢なという意味だ。
冒険者証の端の工学模様ボタンをタッチすると
ホログラムのスキルツリーが現れた。
スキルポイントはレベルが上がるごとに増える。しかし無駄にスキルを取ってしまうと。
以前話したように器用貧乏の誕生となってしまう。
剣技のスキルツリーへフリックする。
ブレイブエコー 速斬の剣音が反響する一閃
素早い斬撃といった所だろうか。
これを取らなければ次のツリーに進めない。
乗り気ではないが取らなければならない。
タップするとアクセプトと出て緑色の文字が赤色に変わる。
どうやらこれで取れたようだ。
次のツリーは
ブレイブガスト 突風のように素早い二連斬
二連撃かいいね取っておこうアクセプトだ。
ブレイブリフレクト 限られた範囲に弾けるような小型衝撃波を生じる
範囲攻撃が出てきたな。雑魚無双には必要だ取っておこう。アクセプト。
ブレイブスマッシュ 重い一撃で敵の体勢を崩す高威力の斬撃
エティンの体勢を自分で崩せなかったからな。
巨人族を相手にするなら必須だろう。アクセプト。
おっとここでスキルポイント切れか。
まぁレベル上げればどんどんスキルポイントも上がるだろう。
二日目にしてスキルを振りを終わってしまった。
『輝く希望』の活動まで5日間も余ってしまったな。
まぁ俺は宿賃の関係もあって金を稼ぐ必要がある。
一人で依頼でもこなしてくるか。
貧乏暇なしだ。
レベル公平がみんなと切れないように、極力経験値を抑えた依頼にしないとな。
となると、やっぱり薬草等の収集かな。危険地帯でもなければ戦闘もないし。
よし朝食を食べて冒険者ギルドへ行くか。
掲示板で依頼を探す。
薬草採取なんてどうだろうか。
錬金レベル1ポーションの薬草ミルドグラス。
擦り傷・切り傷・軽い打撲にしか効能がない。
故に相場は一枚につき銅貨2枚だ。
スケルトンを狩っていた方が、まだましだな。
錬金レベル2ポーションの薬草ルートバーム
深い切り傷・打撲・骨折の軽度回復
少し値段が上がって一枚につき銅貨20枚だ。
悩みどころだ。でも個人的には、ちょーっと安いかな。
錬金レベル3ポーションの薬草ブラッドブロッサム
深い刺し傷・骨折の治癒
この辺になってくると実用性は出てくる。
レベル50ぐらいのPTも臨時で持ち歩くレベルだな
値段は一枚につき銅貨100枚
このぐらいが妥当か。
確かポーションは5段階だったな。
錬金レベル4ポーションの薬草ドラゴンヴェイン
致命傷の回復・内臓損傷の治癒
この辺は高レベル帯でも念のために持ち歩いているポーションだ
値段は一枚につき銀貨10枚と100倍に跳ね上がる。
錬金レベル5ポーションの薬草エルダーブレス
瀕死から完全回復・魔力の全回復・体力の全回復
前世RPGでお馴染みのエリクサーだな。
ちなみに、生息地域は
霧がかかった神秘の森、精霊が宿る古代の大樹の根元、封印された遺跡内部
どこもレベル100PTであっても全滅の危険性のある場所ばかりだ。
ちなみに値段は葉っぱ一枚につき金貨1枚つまり銀貨1000枚だ。
郊外の小さな家なら買える値段。
前世で言えば億り人御用達って感じだ。
超上級冒険者が命がけの戦地に赴くときに持ってゆくポーション。
さて、今回俺が狙うのは
錬金レベル3ポーションの薬草ブラッドブロッサムの葉。これだな。
薬草という名だが、木に茂っている葉っぱだ。
群生地は、湿度の高い森の奥や洞窟の入口付近。暗く湿った環境を好む。
場所はギルド受付嬢に聞けば教えてもらえるだろう。
問題は依頼書があるかどうかだなぁ。
「えーブラッドブロッサム…ブラッドブロッサム。あった!」
他の冒険者が手を伸ばしかけている
俺は素早く依頼書をはぎ取った。早い者勝ちだ。悪く思わないでくれよな!
何々、一枚につき銅貨100枚 ブラッドブロッサムの葉を計100枚
つまり報酬は銀貨10枚か。うん悪くない。早速冒険者ギルドへ依頼書を持ち込む。
群生地を聞いてみると、この辺りでは馬車で一日の所にある洞窟フレッシュブラッド
の入り口付近に群生しているらしい。
赤い花弁を持ち、内部に血液のような濃厚な赤色の樹液を含む為、葉の色も幹も血のような赤色だ。
成長が遅く、乱獲により入手困難な事も多々ある。
うん。嫌な予感がする。
一日かけて乗合馬車で到着してみれば鬱蒼と茂った森の先にダンジョンの入り口はあった。
ブラッドブロッサムの木は、すぐに見つかった。
なにせ木自体が幹から葉に至るまで真っ赤だから見間違えようがない。
そして群がる冒険者達の群れ。まぁそうなるわな。
下の方の葉っぱは、むしり取られ放題だ
有用な効能を持ったばかりに哀れな木だ。
俺は身軽な子供である事が幸いし、ヒョイヒョイと木の上の方まで登り
沢山覆い茂っている葉っぱを悠々と独占できた。
「先ず最初の一枚。」そう言って俺は葉を摘んだ。
葉っぱの付け根からドロリと血のような液体が出ているため、手に付着する。
なにこれ…気色の良いものでは、ないなぁ…そう思いつつ
下を眺めると葉を摘み取ってる冒険者たちは
返り血か又は出血しているかのように体中血だらけのように見える。
これ、森の奥だからいいものの
街道沿いとかで何も知らない人が見たら、ちびるぐらいの地獄絵図だぞこれ。
そんな事を思いつつ俺も手を真っ赤に染めながら葉っぱを千切っていった。
「よし100枚達成!」意外と楽に収集は終わった。子供でよかったわ。
そうしてスルスルとブラッドブロッサムの木を降りた。
よくよく見てみると、周囲はまるで血だらけ
しかも冒険者たちは我先にと争い葉を千切っているため
血だらけになって、もみ合っているようにしか見えない。
完全に何かのヤベー事件の現場みたいになってるじゃねーか。
幸いなことに俺は手だけ真っ赤だ。
その辺の草木で手を拭く。青臭いが血だらけに見えるよりは幾分かましだ。
帰るために乗合馬車乗り場へ行くと全身、紅に染まった冒険者数人がいた。
マジか…馬車の人も気の毒だな…そう思っていると、馬車が来たので乗り込んだ。
全身真っ赤な人達は乗車を拒否されていた。残念でもなければ当然だ。
一日かけて町へ戻ると、早速冒険者ギルドへの報告へと向かう。
受付嬢に依頼品を渡そうとバックパックを開けると
俺のバックパックの中は紅に染まっていた。
後で洗わなきゃだなと思いつつ、ごっそりと100枚の葉っぱを取り出す。
受付嬢は数を数え始めた。まぁ確認は当然だよね。
「それではブラッドブロッサムの葉100枚確かにお預かりしました。
こちらは報酬になります。」銀貨10枚を受け取りバックパックに入れたところで気づいた。
これ銀貨も洗わないといけない奴じゃん。
まぁでも手に銀貨を10枚持った子供がウロウロしていたら
ゴロツキのいいカモだからな。
宿へ戻ると部屋に戻りバックパックと銀貨と俺をシャワーで洗い流した。
気分さっぱりだ。日も暮れかけている。
一階で食事をとり、部屋へ戻りベッドに寝転がる。
ただの収集とはいえ流石に三日がかりの冒険はしんどいな。
でもこの先、こんなの温いぐらいの旅もあるだろう。
慎むんだぞ俺。そう自分に言い聞かせているうちに眠っていた。