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災難は突然に

翌日、朝から俺は悩んでいた

勇者らしいスキルかぁ魔法系スキルと体術系スキル

均等に取っていくと、器用貧乏タイプになるのは明らかだ。

「うーん…」ベットに寝転がったまま考えていると

コン!コン!コン!ドアがノックされる音がする

誰かが来るというわけでもないため宿屋の人かなと思いドアを開けた。

「どちら様でしょ…」ガタイのいいおっさんが立っている。

「私の名前は、ギデオン・アイアンウッドと言う。

キミはアルトゥール君で間違いないな?」違いますと言ったら殴られそうな気がする。

「あっはい。」俺はそう答えると腕を掴まれ、どこかへ連れていかれる。

町中に普通の佇まいの一軒家があった。

ちょっと来なさい。そう言われて家に連れ込まれる。やめちくりー。

中へ入り玄関を抜けると客間があった。

雰囲気は荘厳にして堅徹そんなイメージだ。

「掛け給え。」腕の拘束を解かれた俺は訳が分からないまま椅子に座る。

ギデオンと名乗る男は対面の椅子に腰掛け深いため息を一つついた。

「何故君がここに呼ばれたか分かるかね?」険しい表情で聞いてくる。

呼ばれたも何も突然拉致されて連れてこられたわけなんだが。

その辺から大成功とか書かれた看板を持ちながら

テッテレーって誰か出てきそうまである。

「わかりません…。」

そうか…まな板の上の鯉は、こういう気持ちなんだな俺は思った。

男はまた一つ深いため息をつく。

もうやだ、誰か助けてクレメンス。俺は心で救援を呼ぶ。

「来なさい。」男が声をかけると

横の部屋からナタリーが出てきた。しかも泣いている。

どんな状況だよコレ?!本当に訳が分からないよ。

「君がパーティーリーダーのアルトゥール君だね?私はナタリーの父親だ。」

また随分ゴッツイお父さんですね、そう思いながら。俺はナタリーの方をちらちら見た。

何となく俺は把握した。

「私、ナタリーさんに何か粗相を致しましたか…?」腫れ物に触らないよう聞いた。

ナタリーの父親は不思議そうな顔をしながら聞いてくる

「キミ見たところ10歳程度に見えるが、どこか高貴な出自かね?」

「いいえ、私の両親は農家で、どちらかと言うと、その正反対ですが…。」

俺はありのままを答えた。

「君の受け答えは年相応に聞こえないが何か深い事情でもあるのかね?」

しまった。今の俺は10歳のガキなのだ。粗相とか使ってはいけない単語だ。

「一応、両親は農夫なれど、冒険者たるもの目上の方や高貴な方に触れ合う時の為に

と言葉遣いを学ばされました。」

ミスリードしておいた。

「そうか。私はナタリーを叱った何故だか分かるかね?」

分かんないです。全然わかんないです。

「何故…でしょうか…?」恐る恐る聞いてみる。

「娘は昨日の朝までレベル7だった。

だが帰ってきたら、どうだ!レベル21になっていた!」

あーアルトゥール分かっちゃった。無茶なレベル上げについて怒られるのだろう。

「一日で、このレベルの上がり方は異常だ。

聞いたらエティン討伐に行ったそうではないか!

あれはレベル20相当のモンスターだ!レベル7で連れて行くとは何事だ!」

ナタリーのお父様ビッキビキに血管が浮いている。

でも確かに一理ある。一歩間違えれば彼女を死なせていたかもしれない。

「申し訳ございません。全面的に私の落ち度です。ですから

ナタリーを叱るのはやめてあげて下さい。」俺は頭を下げた。

「下手したら娘は死んでいたかもしれないのだぞ!

もし万が一の事があったなら君は責任をとれるのか?!」

ゴガッ!!親父さんの足がテーブルに当たる。

「返す言葉もありません。しかし私は、この一命に変えましても

ナタリーさんをお守り致します。」

まぁこんなところでいいだろう

そう思いながら返答した。

「貴様は!!アホかー!!!」テーブルを叩き壊す勢いでドズン!!と叩き

親父さんは立ち上がり俺は罵られていた。

はい。 一体なにがダメだったんでしょうかねぇ。

覚悟を褒められると思ったんですけど

何故怒りを買ってしまったんでしょうかねぇ

「リーダーが身を挺して死んで何とする!パーティーメンバーを守れたとて!

その後どうなるか想像がつかんのか貴様は!」

めちゃくちゃ顔にナタリーのお父様の唾が飛んでくる。

わかった。この人はとても高潔な方で、リーダーには理性をもって

何事にも対処すべきであると言いたいのだろう。

「仰る通りです。私の不徳の致すところです。」

これはあれだ、言い返すとダメなやつだ。

不機嫌な上司と同じで、ひたすら耐えるしかない。俺はそう思った。

「コホン…しかし我が娘を案じる父としては、君の覚悟は嫌いではない。」

そう言いつつ、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。ん?親父さんデレた?

いい人なのは十二分に伝わってきた。でも凄くめんどくさい人だな。

「ナタリー、そんなところに立ってないで、こちらへ来なさい。」

そう言うと親父さんは座っている横長の椅子の隣をポンと叩いた。

ナタリーはトコトコと歩いてきて親父さんの横に座る。目は真っ赤だ。

親父さんが俺に激怒していたためか、ナタリーは、また泣いている。

可哀そうに…。

「ナタリー…そう泣くんじゃない…私は、お前の為を思って…」

デター!ナタリーの親父さん毒親確定演出!

毒親って自分の思想を子供に押し付けるんだよなぁ!

ナタリーも苦労してんだな…早く一人暮らし出来るようになれるといいな。

割と本気で俺はそう思った。

「アルトゥール君もすまなかったな…なんせ目の中に入れても痛くない

可愛いかわいい一人娘でな…ついカッとなってしまった。許してくれ。」

親父さんは頭を下げながら言った。怒りは収まったようだ。

「お気持ち、お察し致します。」俺は言った。まぁ父親ってそういうもんだろうな。

「しかし君は何というか…達観しているというか…不思議な子だな。」

人間歳をとると子供に戻るというが、子供のように振舞うのは難しい。

達観していると感じられても仕方ない。

その後延々と俺は親父さんの武勇伝を聞かされた。

何でも昔、王国第七騎士団団長だったそうだ。

清廉潔白な人物で、政争を嫌った結果、粗末な扱いを受けたそうだ。

そのせいで退団後の恩給は些末なもので、どこにでもあるような

一軒家に住んでいるという話だ。

母親は宮廷の神官だったらしい

その影響でナタリーは神術師を目指しているとの事。

正直何故俺はナタリーのご両親の昔話を聞かされているのか

よくわからなかったが話を合わせつつ聞いておいた。

ナタリーは泣き疲れたのか親父さんに凭れ掛かって寝ていた。

こうして俺の貴重なスキルを考える一日は消えた。

まぁナタリーに関しては母親にアドバイスを聞けば万全だろう。

それがわかっただけでもよしとしよう。

取り合えず俺は宿屋へ戻り、強く心に決意した。

知らない人が来たら扉を開けてはいけない。

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