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氷獄の神狼《フェンリルラグナ》

俺たち『輝く希望』一行は北へ向かう乗合馬車に乗っていた。

緊張しているのか、普段ならお喋りする三人も馬車の外の風景を見つめている。

普段お調子者のメディアですらこの状態だ。

それもそうだ、今回俺達の依頼内容は神獣の討伐若しくは恭順だ。

それぞれレベル70の中堅冒険者とはいえ

正直なところレベルギリギリの難易度の高い依頼だ。神獣だからな。

馬車はガタガタ揺れながら目的地に向かう。2日ぐらいの工程だ。

目的地に到着し、馬車を降りるとそこは、近隣国と境目の街

いわばこの国の防衛も兼ねている重要拠点だ。

「さーて依頼人の防衛隊長に挨拶しに行くか。」

と俺は言ったが。

「はい。」と三人の声は沈んでいる

空気が重いぞ。最初から気おされているのは良くないんだけどな。

早速防衛隊長に挨拶をする。

「初めまして依頼を請け負った『輝く希望』メンバーです。」

そう言うと防衛隊長は眉をしかめた。

皆10歳のガキだからな。もうこういうのは慣れてきた。

早速レベル70の勇者冒険証を防衛隊長に見せる。驚いた顔をして

「これは失礼な態度を謝罪します。」と一礼した。

しゃーなしだな!

「それでは詳細は冒険者ギルドで聞いていますか?」

と防衛隊長は言う。

「はい、勿論です。それで目標の現在地は把握していますか?」

俺が聞くと隊長は

「えぇ、パーマフロストアイスウオールにいるとの報告が入っています。」

永久凍土の氷壁か今回の標的らしい居住地選択だな。

「それでは早速向かいます、途中までの道案内を頼んでもよろしいですか?」俺が聞くと

「斥候兵!」隊長が叫ぶ。「はっ!」二名が部屋に入ってきた。

「例の神獣の報告場所近くまで案内しろ!」「承知しました。」

とのやり取りがあり、俺達は斥候二人組の後をついてパーマフロストアイスウオールへ向かった。

とても寒い。俺は道中この世界の魔法瓶っぽいやつに入れてきたアツアツのお茶を三人に振舞った。

体が温まって少しは元気が出たようだ。士気が低いのは良くないからな。

斥候兵は足を止める。「この先で発見しました。」

「案内有難う御座います。隊長さんに宜しくお伝えください。」

そう言うと斥候は街に戻っていった。

暫く歩くと永久凍土の崖の上に青と白の毛並みの巨大なオオカミがこちらの様子を窺っている。

禍々しい気を放っている。あいつだな。

「皆気を抜くなよ、アイツが氷獄の神狼フェンリルラグナだろう。」

「はい!」みな気の引き締まった返事だ。いいぞ。

俺はオブシダンソードを抜いて構える。

敵の襲来に先んじてクリスは詠唱を始める。

「圧縮されし時の狭間にその身を委ねよ!ファスティア!」

「其は難攻不落!顕現するは不可視の要塞!ソリディネイト!」

「魔力の流れをもって!円環と為せ!マナフロウ!」

全員の速度を上げ、物理防御も上げ、魔力消費を軽減し魔力の回復も促す。

続いてナタリーは詠唱する。

「我らが神よ、聖なる恩寵を我らに与え給え!ブレッシング!ディカプル!」

メンバーのステータスが全て10段階上がり俺の力も満ちる。

ガッ!!

神獣は氷床を鋭い爪で蹴りつけ、こちらに跳躍してくる。

跳躍の勢いに加え鋭い爪御一撃を放ってきた。

ガキィンッ!俺は剣で爪を受け流し、体に一撃を入れようと

そのまま流れるように、くるりと回転し剣で神獣の体を切りつけるが

とんでもなく硬い、まるで氷の鎧だな、俺は神獣の跳躍の勢いで体当たりをされる形になり。

巨大な神獣に吹っ飛ばされる。俺は氷壁に体を打ち付ける。「グッ!」

ズザザーと爪を立て神獣は勢いを地面で殺し体勢を立て直す。

しかし、この距離はクリスティーナの射程内だ。クリスは詠唱を始める。

「其に見えざる呪縛を、歪に滞れ!偏歪刻印バイアスマーク!」

「力の奔流を断ち切り、軛を放て!虚脱刻印フィーブルマーク!」

「装いし防備は虚構なり、儚く崩れよ!脆装刻印フレイルマーク!」

神獣に三つの赤黒い刻印が浮かび上がる。

それぞれ速度、力、防御力の弱体化の刻印だ。

神獣は俺に飛び掛かる、しかしさっきのような勢いは減衰し御しやすくなっている。

鋭い爪で三連撃を加えてくるガキン!ガィン!ガキィン!剣でいなし

ゴッ!!

俺は右足で思い切り神獣の図体を蹴飛ばした。

神獣は氷壁に激突する。待ってましたとばかりにメディアは詠唱する。

「炎の精霊よ!ここに集いて圧して爆ぜよ!エクスプロージョン!クワドラプル!」

一際大きな炎の爆発が神獣を包む。氷の鎧は爆発により粉々に砕け

青と白の毛並みも若干焦げている。

「ヴァンキッシュストライク!!」俺は剣に魔力を込め

神獣の背中に強烈な一撃を叩きつけた。

手応えはあった何本も骨が折れたろう。

背骨だろうから致命傷のはずだ体はもう動かせないはず。

見ると禍々しい気は消え、寧ろ神聖な気を纏っている。

今にも事切れそうな神獣を見て俺は叫んだ。

「ナタリー!今すぐ神獣を回復してくれ!」

俺は頼んだ、少し躊躇していたがナタリーは直ぐに詠唱を始めた

「我らが神よ、傷つきしこの者に癒しを!ヒール!ディカプル!」

ナタリーは神獣に触れるとみるみる緑の光が神獣を回復してゆく。

回復を見届けナタリーは急いで距離をとった。

俺は神獣の頭を撫でてやった、目を細め気持ちよさそうにしている

敵意は微塵も感じない。

「一体どういうことですか?」クリスは言った。

「はじめ俺達と対峙した時の神獣は禍々しい気を放っていたろう。

でも今は神聖な気に満ちている。

恐らく何かが原因で禍々しい気を纏う事となり

狂暴化していたのだろう。その何かは分からないが。

瀕死になった事で禍々しい気は散ったのだろう

もう危険はないと判断してもよいと思う。」

そう言うと俺は神獣の首筋を摩ってやる。嬉しそうに撫でられている。

「あたしもモフるー♪」そう言ってメディアは小走りに近づき

わしゃわしゃと神獣の頭を撫でている。神獣は大人しくなでられている。

その様子を見た二人も近づいてきて神獣をモフりはじめた。

完全にペットじゃねーか、俺は思った。

よし事の顛末を隊長に報告に行くぞ。

俺達が街へ歩き出すと神獣は後ろからついてきた。

顔つきも穏やかになって、本当にペットみたいだな。

街へ着き隊長に報告する。

何らかの理由で狂暴化していたと思わしき事。

神聖な気を取り戻した今

今まで通りこの街の守り神そして隣国に睨みを利かす存在として

この街を再び守ってくれるでしょう。

神獣の頭をポンと軽く触ると「ガル!」と返事をした。

「実に助かりました、早速ギルドへの任務遂行の

手紙を認め、印を押してきますので暫しお待ちを。」

そう言うと隊長は奥の隊長室へと足早でかけていった。

待っている時間はモフモフタイムだ、4人して神獣をモフモフする。

神獣も、まんざらではなさそうだ。

すぐに隊長は冒険者ギルド宛の手紙を認め渡しに来た。

「本当に有難う御座いました!道中お気をつけて!」

律儀に敬礼をしている。

「こちらこそ、この街の永遠の繫栄をお祈りしています。」

そう言うと俺達は乗合馬車に冒険者ギルドへの帰途につく。

街の入り口から神獣はずっとこちらを見ている。

見送ってくれているのだろうか。

何かこう、ペットとの別れって寂しいよな。神獣だけれども。

行きとは打って変わって、三人ともモフモフの神獣の話で盛り上がっていた。

時々俺にも話を振られたが「あぁそうだね。」と返しておいた。

冒険者ギルドに着き、隊長の冒険者ギルド宛の手紙を受付に渡す。

確かに確認しました。そう言うと銀貨8枚を渡される。

皆で2枚ずつ分け合って解散とした。

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