勇者VS勇者 前編
コンコンコン!俺の宿泊している部屋のドアがノックされる。
「はい。どちら様でしょうか?」以前の件があってから俺は確認するようになった。
「ギデオン・アイアンウッドだ。扉を開けなさい。」
???ん…?え…?ちょっと待って…。ナタリーのパッパがどうしてまたここに?
「あの…何か御用でしょうか…?」
本当は帰ってくださいと言いたいところだが
そんなことを言ったらブチ切れてドアを蹴破って入ってきそうだ。
「取り合えずドアを開けたまえ。」
「…」俺は鍵を外し黙ってドアをそーっと開ける。
バン!思いっきりドアを開きドスドスとナタリーのパッパが入ってきた。
その後ろからナタリーが、入ってくる。
場所は違うが、見たことあるような光景だぞ。
ナタリーパッパはドカッと椅子に座り、大きくため息をつく。
この人椅子に座りながらため息つくのが癖なのか?
「君に依頼がある。というか君たちパ-ティーへの依頼だ。
単刀直入に言おう。封印勇者の確認に同行してくれないか?」
これNOって答えたらBADENDになるイベントでしょ?
「詳細を聞かせていただけますか?」
取り合えず話を聞かない事には返事のしようもない。
「実は私が第七騎士団長をしていた時、ある出来事が起こった。
勇者の封印だ。」
え?勇者って封印されるものなの?やべーぞ俺。
「とある高位の賢者が愚かな事にクラスチェンジ魔術を使い
高位のリッチというアンデットへとその身を変えた。
それを討伐に向かった勇者一行がいたのだが
勇者は何らかの方法でリッチの手下となり、勇者以外のメンバーは
這う這うの体で逃げかえってきた。
報告を受けた王は、第一騎士団及び第一宮廷神官部隊と第一宮廷魔術師部隊に命を下し
討伐へと向かわせた。しかしそこには元賢者であったリッチの姿はなく。
その下僕となった勇者だけがいた。勇者を囮に使って逃げたのかもしれんな。
勇者を取り押さえるのに怪我人は出たものの捕らえることに成功。
しかし殺めるわけにはいかないという事で
王はとある遺跡を勇者の遺跡と名付け、そこに宮廷神官達により
何重にもわたる厳重な結界が張られ、一件は落着した。
が、最近王宮の勇者の遺跡の封印結界共鳴魔法陣が異変を示し
現地の結界が効力を失っている事が確認された。それの調査だ。
…まったく…嫌な役割だ。」そう言うとギデオンは再び深いため息をつく。
なるほど、重要な任務ではあるが極力、事を露わにしたくない為
白羽の矢が立ったのが、実力はあるが退役後も冷や飯食いの
ギデオン・アイアンウッド氏。
つまりナタリーの父親というわけだな。
「しかし、何故そのお役目に私たちが?」思ったことを俺は口にした。
父親自身がいるとしても愛娘を危険の可能性が濃厚な地へ
向かわせることはしたくないはずだ。
「それなのだ…。実は家内と二人で行こうと話をしていたのだが
それを娘に聞かれてしまってな…。」
ナタリーは決意を秘めた強い眼差しで俺の方を見ている。
「何度もダメだと言ったのだが。今回は全然折れてくれないのだ…。」
ギデオンは頭を抱える。
「父上は私たちの実力を軽んじておられます!
わたし達と同行してもらえば、必ずやその実力
分かって頂けると思います!」
いつになくナタリーは強気だ。
「何故わかってくれんのだナタリー!
相手は王が反逆の高位魔術師賢者の討伐を依頼したほどの者だぞ!
何かあってからでは遅いのだ!」
親父さんも必死だ。まぁそれはそうだよな。
「わかりました。では父上と母上は家でお待ちください。
私達だけで様子を見て参ります。」と強気のナタリー。
おいおいおい…っていうか、あれ?ナタリーってこんなに気が強かったっけ?
ちょっと俺の中のイメージと違うぞ。
「これだ…。」ギデオン氏は困った顔でこちらを見る。
俺だって親父さんに、そんな顔で見られても困るんですけど…。
「だから君達だけで行かせるぐらいなら、私達と一緒にと。こういうわけだ。」
俺はナタリーの顔を見ると決意ガンギマリの顔で、こちらを見ている。
職業は母親譲りだが、頑固な性格は親父さん譲りか…。
「わかりました。ご一緒させてください。
ナタリーも無理をしてはいけないよ?」
俺はそう言うとナタリーは顔をパァッと明るくして
「承知しています。」と答えた。
これでよかったのかなぁ…。
まぁでも元騎士団長と元宮廷神官と一緒なら
大体の事は何とかなるだろう。
「私は、早速二人にこの事を伝えてきます!」
そういうとナタリーは部屋から飛び出していった。
クリスとメディアの所へ行ったのだろう。
ギデオン氏はスクッと立ち上がると俺の肩に手を置き
「君も無理をするんじゃないぞ。出発は翌朝だ。」といい軽く肩を揉んできた。
「はい、もちろんそのつもりです。」そう返答すると
ギデオン氏は部屋から退出し、俺は翌日の準備を始めた。