僕の決断
結局僕は杏奈と悠馬を交えて今後のことを打ち合わせる羽目になった。悠馬はというと若干不服そうではある。そりゃ、そうであろう。自分が狙っている女子と友人をくっつける手伝いなんぞ、僕だって頼まれたら嫌だ。絶対に断るだろう。
「何で俺まで巻き込むの?」
「アタシ一人じゃ、凡太の全面的なサポートは難しいからね。アンタだったら凡太と同じ部活だし、放課後も凡太と行動することが多いだろ?アタシと情報共有してくれればいいからさ」
「でも俺としては凡太に協力しないで直接朝戸さんにアプローチしたいんだけど」
「そんなことするならアタシが全力で阻止してやるよ」
杏奈の眼光が鋭くなった。余りの迫力に悠馬どころか僕までたじろぐ。しかしながら何故杏奈は此処までに僕の世話を焼くのだろう。何か裏があるのだろうか。
「でも日暮さんは知らないかもしれないけど、凡太は中学時代に朝戸さんに振られてるんだよ?」
「知ってるよ。さっき凡太から聞いた」
「だったら尚更」
「尚更、何?アンタも知ってるだろうけど、今のイナには凡太に関する記憶が一切ない。ということはだ。凡太を振ったという記憶もないと考えるのが普通じゃないか?」
「うーん。まぁ、そりゃあそうだけど…」
「だからこそリベンジのチャンスとアタシは考えてる」
杏奈が真剣に悠馬を説得している。此処まで僕のことを考えてくれる杏奈に対して僕は何ができるのだろう。何だか自分のことなのに恥ずかしくなってくる。一方で悠馬はまだ渋っている。伊那のことに対してまだ脈があると思っているのか。
「もしもだよ?もしも凡太がまた振られたらどうするの?それこそ凡太は立ち直れないだろ」
「リベンジする前から負けることを考える奴がいるか?」
「うっ…それは俺が負けること前提?」
「そもそもアンタは戦ってないだろ」
「うーん…しかしいくら何でもな…」
まだまだ納得できない悠馬に業を煮やしたのか、杏奈は席を立つと悠馬を連れて外の方へ出ていった。僕は呆然としたまま二人を見送る。気づけば頼んだジュースの氷が溶けて味がスッカリ薄まっていた。この店にかなり長居しているようだ。
しばらくして杏奈が悠馬を連れて戻ってきたのだが、悠馬のテンションが何かおかしい。明らかに興奮しているみたいでかなり浮ついている。
「ようし!腹は決まった。任せろ凡太!俺も一肌脱ぐぜ!」
「へ?ど、どうした?一体何があった?」
「なあに、気にするな。俺が付いているからには大船に乗った気持ちでいろ!」
悠馬が笑いながら僕の肩をバンバン叩いた。悠馬の様子を見て顔を赤らめた杏奈が満足そうにウンウンと頷いている。後で話を聞くに杏奈がとある話をしてからプランを打ち出した途端に悠馬はやる気になったらしい。そのプランとは…。
「ダブルデートだ」
「はい?ダブルデート…??誰と誰が?」
「凡太とイナ、そしてアタシと悠馬だ。実は先日、遊園地の割引券が手に入ったんだ。最初は部活仲間と行こうかと思ったんだけど、いい機会だしね。コイツを使う手はない」
「へ???悠馬と杏奈も一緒に行くの?」
「さすがにいきなりイナに二人きりでのデートに誘うのはハードルが高すぎるだろ?アタシも居ればイナを誘いやすいだろうし、凡太も悠馬が居ればまだ気が落ち着くだろ?」
「そうかなぁ?」
「ちょっ!そこは素直に喜んでくれよ!」
僕が首を捻ると、悠馬が慌てて待ったを掛ける。しかし杏奈が悠馬のことを名前で呼んでいるなんて、珍しいな。大概は「エロ大名」で通しているはずだが…。まあ、気にしても仕方ない。まずは自分のことをやるまでだ。
「分かった、やるよ。伊那と一緒にダブルデートする」
「ようし!そう来なくっちゃなぁ!!」
「決まったな、善は急げだ!」
僕の決断を聞いてテンションが高くなった杏奈と悠馬がハイタッチする。いつの間に仲良くなったんだ、この二人?僕が首を傾げていると、杏奈がケータイを取り出して何やら操作をし出した。そして少しの間を置いてから杏奈のケータイから受信音が響いた。
「…いいね。順調だよ、凡太」
「??何が?」
「イナからの返事さ。さっきのダブルデートの件、OKだとさ」
「ええええ!!??展開が早すぎない??」
「言ったろ?善は急げだ。さ、いつにする?」
ケータイを仕舞いながら杏奈がニヤリと笑う。余りの急展開にクラクラするが、とりあえず僕は来たる伊那とのデートの為に頭をフル回転させることにした。その横でどういう訳だか悠馬が鼻歌を歌いながらカメラを磨き始めていた。




