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彼女の説得

 

「なるほどね。そりゃ凡太がイナを避けたくなる気持ちも分かるわ。全校生徒の笑い者になったようなもんだしね」



 僕の過去を知った杏奈がフライドポテトを頬張りながら僕に同情の言葉を投げる。僕は無言で頷きつつ、自分の置かれている複雑な状況を改めて理解した。


 なお僕らは長話になるからとファーストフード店に寄り道をすることにした。杏奈はハンバーガーのセットを注文すると、隅っこのボックス席に陣取った。どうやら長居するつもりのようだ。正直とっとと帰りたいが、このままモヤモヤするのも気分が悪い。



「まあ過去の黒歴史は分かったけど、凡太はこれからどうしたいんだ?」

「えっ…どうって?」

「このままイナを避け続けるのか?気持ちは分かるけど同じクラスだし、ずっと無視したりすることはできないだろ?」

「それはそうだけど…」

「辛いのは凡太の方だぞ」



 杏奈はカップに入ったコーラをストローで飲みながら僕を諭すように続ける。正論ゆえにぐうの音も出ない。いや頭では分かっているんだ。このままではいけないことは百も承知だ。



「イナのことがまだ好きなのか?」

「……正直好きだという自信がない。ただあの告白のあと、伊那の方から避けられたのは事実だからもう彼女への未練はないと思ってる」



 僕は杏奈に今の率直な気持ちを吐露する。すると杏奈がはあ…と呆れたように溜め息をついた。まるで人を馬鹿にする感じにも取れる。



「凡太、それは嘘だな」

「な、何で!?杏奈に何がわかる?」

「なら尚更、イナを避ける必要ないだろ。イナから逃げているのは凡太自身、過去から逃げているだけだ」

「それは…」



 図星を突かれた僕が言葉を濁していると杏奈がいきなり僕の胸倉を掴んで自身の顔に引き寄せてきた。杏奈の端正な顔立ちが眼前に迫る。よく見ると杏奈も美少女なのだが、普段の言動から恋愛感情までに至ることはない。さっきから動悸がするのは言いようのない不安からに他ならない。



「いいから聞け、凡太。もし凡太がまだイナのことを好きなのなら、これはチャンスだ」

「へ?チャンス?」

「だってイナが凡太のことを全く覚えていないのであれば、あの時の告白だってリセットされてるはずだろ?」

「う、まあ…そうだろうけど」

「ならもう一度やり直せるんじゃないか?」



 杏奈の目がキラリと輝く。マジで言ってるのか?一度振られているのに、全く人の気も知らずに…。とはいえ、杏奈の言うことも一理あるかもしれない。



「つまりリベンジしろと?」

「そういうことだ。安心しろ、アタシも手伝ってやるから」

「へ?手伝う?何で?」

「何かいいじゃん、そういうの。青春ってやつで。アタシなりのちょっとしたお節介ってやつさ」

「お節介というか余計なお世話…」



 僕が言いかけると杏奈が僕の頭をコツンと叩いた。杏奈は不満そうに頰をプゥと膨らませる。すると杏奈が何か気づいたのか、店の入口の方を向くと手を振り出した。



「おーい、良いところに来た。ちょっと来てくんない、エロ大名」

「ちょっ?!やめて、大声でそのあだ名を呼ぶのは!」

「アンタにも手伝ってほしいことがあるんだ」



 僕も気になって入口の方を振り返ると、ハンバーガーのセットのトレイを持って動揺している悠馬の姿があった。ニヤリと笑う杏奈を見て僕はそこはかとない不安を感じたのか、背筋が寒くなってきた。

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