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僕の彼女

 

「告白成就おめでとう!凡太、イナ!」



 翌日、下校しようとする僕らに満面の笑みを浮かべながら杏奈が後ろから抱き着いてきた。不意を突かれて僕は思わずよろけそうになる。一方で伊那は驚きながらも照れ臭そうな笑顔を杏奈へ向けていた。



「杏奈、いきなり何するんだよ」

「イイじゃん。ようやくお互いの想いが実って、推しのカップルが爆誕したんだから。これくらいはさせてよ」

「推しのカップルかぁ……うん、悪くない。…ありがとうアンちゃん」

「どういたしまして。いやー、散々世話を焼いた甲斐があったよ」



 杏奈はご機嫌で僕の肩をバシバシ叩く。確かに杏奈がいなかったら僕と伊那は平行線のまま、ずっと心にシコリを抱えてこれからの人生を過ごすことになっただろう。アクシデントはあったが、色々お膳立てしてもらったことで、ようやく僕らはトラウマを乗り越えて元の関係に戻れた…いやそれ以上の関係になれたのだ。



「僕からもありがとう、杏奈。杏奈がいてくれて本当に良かったよ」

「?珍しいな、凡太がアタシに素直に礼を言うなんて。雨でも降るのかな」

「失礼な。何かお礼をしようと思ったのに」

「ハハッ、冗談冗談」



 ちなみに僕は伊那と付き合い出したことについて他の人には内緒にするつもりでいたのだが、もう朝にはあっさりとバレてしまった。というのも僕と伊那は登校の際、ずっと恋人繋ぎをしていたのだが、すっかり忘れてそのまま伊那と一緒に教室に入ってしまったのだ。クラスメイトが一斉にどよめいたことでようやく僕は「しまった!」と我に返った。完全に舞い上がっていて注意散漫となっていたらしい。もはや後の祭りである。


 それからというもの女子からは根掘り葉掘り伊那のことを聞かれるわ、男子からは嫉妬と怨嗟の眼差しを向けられるわで全く落ち着かない一日となってしまった。そりゃクラスのアイドル的存在とその他モブが付き合い出したら騒ぎになるだろう。挙げ句他のクラスでも話題になったようだ。ようやく伊那とマトモに話せるタイミングが来た時にはもう下校である。で、二人で一緒にと思っていたら、タイミングを見計らって杏奈がやって来た訳だ。



「で、二人で帰ろうとしてたのか?」

「うん!!」

「じゃあ、お邪魔だったかな?」

「いや、そんなこと…ないよ?」

「……目が泳いでるぞ凡太」



 杏奈が意地悪そうな目で僕を見る。まあ、今日のところは仕方ないかと思っていると後ろから僕らを呼ぶ声が聞こえてきた。よく見ると悠馬が此方へ向かって全力疾走している。息を弾ませながらようやく僕らに追いついた。



「おーい!待ってくれー!俺も俺も」

「何だ、悠馬か」

「何だとは失礼な。大事な友達に向かってその言い草はないだろ」

「友達だったっけ?」

「ひどい!ひどいわ!彼女ができるとこうも冷たいのね!」

「悪かったよ、冗談だって」



 悠馬が白々しく泣く真似をする。すると杏奈が悠馬の肩に右腕を回した。悠馬がハッとして杏奈の顔を見ると、杏奈がニヤリと笑っている。だが、その表情はどこか怖い。



「あ、杏奈…さん?」

「悠馬君、ちょっといいかな?君の彼女は誰なのかな?」

「え、えーと…その…ち、違う!違うの!そういう意味じゃないの!俺は凡太が素っ気ない態度だからヤキモチ焼いて…」

「うん、そうだね。言いたいことは山ほどあるから、ちょっとあっちで話し合おうか」

「ひぃぃ!!杏奈様、どうか御慈悲を!」

「と言う訳だ凡太、伊那。ウチラはウチラで帰るから後は二人でゆっくり帰ってくれ」

「あ、ありがとう」

「じゃあ、また明日!!」

「うん!アンちゃんまた明日ね」



 杏奈は手を振ると悠馬の首根っこを掴んで引きずっていった。悠馬は弁解しようと必死になっているが、まあ頑張ってほしいものだ。二人の様子を見て伊那はクスクスと微笑ましい表情を見せている。

 と気づいたら僕と伊那だけになった。昼の騒々しさから一転して、心地よい静寂が僕らを包む。



「僕らも帰ろうか」

「うん!…ボンちゃん、今日は色々と大変だったね。やっと話せると思ったらもう下校だし…」

「そうだね…でも明日からまたクラスの男子から嫉妬や恨みを買って嫌がらせやらあるのかもしれないな〜」

「ええっ!?そんな…そんなのひどいよ!ボンちゃん何もしてないのに!」

「ま、そうだけど。でも別にそんなの気にしないよ。どうってことない」

「ホント?でも嫌がらせとか受けたら私やアンちゃんに言ってね。ボンちゃんは悪くないんだから!」



 プンプンと息巻く伊那を見て、余りの可愛さに僕はクスッと笑った。そして心の中で「彼女(伊那)があざといから悪いんだ」と意地悪く呟いた。

ご一読ありがとうございました。

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