Op Mistic Player
鏡のような水面の湖の畔に立つ、2人の少女。星の光を失った漆黒の空の下、今は白き聖女騎士そのものが、その隣に立つ黒き邪教の騎士にとっての唯一の光だった。そう、微笑みを忘れた少女の心と云う、星無き夜空に一つだけ瞬く星のように。
……視界が滲んだ。肩丈ボブカットの少女は、星空の下で切ないキスを交わす2人を映した6インチの画面から目を逸らし、ルームウェアの袖を目蓋に当てる。……何度このシーンをリプレイしたか、最早覚えていない。
彼女が唯一ハマっている、スマートフォン用パズルRPGゲーム。グラフィックは綺麗だが、ゲームシステムは典型的なパズル。ハイスペック端末でなくても十分遊べる。
机の上には、それのアクリルスタンドのグッズ。ディスプレイに映る2人のイラストが遇われている。それが、自分と最愛の少年をモチーフにしたのではないか、と思えるほどに似ている。
その彼とは、明日会える。いや、数分前に日付が変わったから今日だ。
少女は、シナリオ選択画面に戻ったゲームのアプリを一度落として再起動させ、リリース日から欠かしたことが無い無料のログインボーナスだけを獲得し、再度落とす。
ベッドに潜り、目を閉じる。
「おやすみ、ルナ」
少女は呟き、意識を手放した。
ゲームは遊びであり、遊びでない。エンターテインメントであり、ビジネスでもある。そして、世界を変えるツールにも成り得る。……使い方さえ、間違えなければ。