88. ヤバし!
リンは昨日の一件でカルロに叱られ、バツとして1階ホールの掃除をひとりでやらされていた。
「あ~、やっと半分終わったニャ。でも、どーしてにゃーだけニャ、おかしいニャン」
「リンは何をブツクサ言ってるのですか? 手が止まっていますよ!」
「はい! すいませんニャ。すぐやりま…………ニャニャ!? ヤカン様ニャ、メイド長そっくりだったニャン」
「フフフッ、頑張っていますか? 大変ですね~」
「まあ、なんとか半分まできたニャ。ご主人様も酷いニャ、ちょっとした茶目っ気だったのニャン」
「まあ、可愛そうだとは思いますが 昨日のあれはやり過ぎです。ポンタさんまで使って ”にせ乳” 作らせるなんて……」
「でも、ご主人様は喜んでたニャ! 目がくぎづけだったニャ、クリーンヒットニャン!」
「そうですね、クロナさんはもう少し押しが強くてもいいような気がしますね」
「そうニャ、だからこれからもご主人様のため頑張っていくニャン!」
「リン! 何をひとりで喋っているのですか? 手が止まっていますよ!」
「にゃははは、もう引っかからないのニャ、正体は分かって…………メ、メイド長!?」
「何ですか、その指は。人を指差すとはいい度胸です。ここが全部終わるまで、ごはん抜きです。まじめにやりなさい!」
「いや、違うニャ。ヤカン様が…………居ないニャ――――ン」
このあと、リンは昼過ぎまでごはんを食べることができなかった……。(乙)
「おかえりなさいませ、カルロ様。ただいまお茶の準備をさせます」
「うん、頼むよ。それで、披露パーティーの出席者名簿は出来たの?」
「はい、こちらでございます。ご確認ください」
「王族は王太子夫妻とセーラか。うちの家族入れて全部で40人だな」
「後は引き出物の選定と料理人の確保くらいか……」
ウイスキーが間に合えば良かったのだが、どうしてもあと1年ぐらいは掛かりそうなのだ。
「エレノア母様たちも、まだ帰ってないようだな」
「はい、エレノア様、エマ様、クロナ様の3名は王都繁華街にある洋服店を回られているということです」
「それは、また時間が掛かりそうだなぁ」
「それじゃあ僕は、自室で休んでいるから戻って来たら知らせてくれ」
「かしこまりました」
そして、セバスとの打ち合わせを終えた僕は自室に向かった。
部屋に入った僕は、部屋着に着替えひと眠りしようとベッドに向かったのだが…………誰か居る!?
猫人族メイドのリンであった。
箒がベッドに立て掛けてある。どうも部屋の掃除をしていて、ベッドの誘惑に負けてしまったみたいだ。
可愛い寝顔を覗き込んでいると、リンはその場にむくっと起き上がり僕に抱きついてきた。
…………このまま、しばらくおまちください…………
僕が目を覚ますと、隣りに…… はい、誰もいませ~ん。
当りまえだ、まだ日が沈んでいないのだから。でも、あーやってしまったなぁ。
だいたい、あの耳と尻尾は反則だろう?
これからは、エマがここに来ても寝せないようにしなくてはな。
もしバレたら、みんなに何を言われるか分からないしな。
さてと、シャワーを浴びてリビングにいきますかね。
リビングをのぞくと、シロとヤカンが並んでお座りしている。――可愛い!
ピーチャンは屋根の上か庭先の木にとまっているだろう。
そうして、外のお天気や来客者などを教えてくれるのだ。夜はシロの頭に戻ってきている。
「カルロ様、今戻りました。とても楽しかったです」
「おう、クロナお帰り。楽しめたのなら良かったよ」
「あ、カルロ様。着替えられたのですね。朝はたしか……」
「う、うん。少し汗かいちゃったからシャワーをね」 (汗)
「あっ、だから、襟足が濡れているのですね。ちょっと待ってくださいね」
クロナはバッグからタオルを取り出すと、僕の濡れている襟足を拭ってくれる。
「しっかり拭かないと、まだ濡れてますよ…………」
クロナは不思議そうな顔をして、タオルをクンクンしている。――ヤバし!
しかしそこに、エレノア母様とエマが雪崩れ込んで来たため、クロナの気は何とかそがれたようだった。
それから数日たち。
見事に合格を果たしたエマはクロナと共に学園へ通い始めた。
学園は貴族街の中に建っており、カルロ邸からの距離は3キロといったところか。
その距離を2人は10分で走破してしまう。それでも、ゆっくり走っているのだという。
そして、今日も2人を学園に送り出したあと、僕はシロ、ヤカン、ピーチャンを連れ王都の外へ転移した。
以前から、試したいことがあったのだ。
しかし、これまでの日々がとても忙しく、今日まで伸び伸びになっていたのだ。
それは、ピーチャンの新スキルの検証である。
ご存知ピーチャンは僕の使い魔なのだが、
このほど チルチット ⇒ 『チルチタス 』へ進化を遂げたのだ。
その進化を経て強くなったのはもちろんだが、その他にも素晴らしいスキルが発現したのだ。
それが、『巨大化』そして『空を飛ぶ』なのである。
この『巨大化』のスキルにより、人間なら6人を乗せて空を飛ぶことが出来るようになった。
さらに、『空を飛ぶ』のスキルを使えばピーチャンが行ったことがある町になら瞬時に移動することが可能になったのだ。
猫人族のリンは無邪気で奔放そうですが、とても面倒見がよく主人思いなメイドなのです。そんなリンに惹かれるところがあったのでしょう。まあ、猫好きなところもありましたしね……。そして、もうメイドのみんなにはバレたでしょうね。獣人族は鼻が利きますからね。 ピーチャンの新しいスキルは楽しみですね。旅をするのが楽になりそうです。
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