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81. 気づけよ!

 おお、蒼龍(そうりゅう)のヤツ そろそろ起きそうだぞ。空に浮いたまま身じろぎしている。


 「では、手筈通(てはずどお)りに草原まで転移させるぞ」


 ピーチャンはシロの頭に、僕とヤカンはシロの背に乗っている。


 ヤカンが前にお座りして、ミニ龍は僕が抱っこしている形だ。


 僕たちはリマの町から南に20キロの地点、つまりスタンピードの現場近くに転移してきた。


 まあ、ここならば町からも十分離れているし、スタンピードのさなか街道を通る者もいない。


 少々、(あば)れたところで誰にも迷惑はかからないだろう。


 それに、こいつが表に居れば、出てきた魔獣(まじゅう)(おの)ずと大森林に帰って行くだろうしな。


 しっかしデカいなー。どのくらいだ。伸ばせば150mは有りそうだよな。


 こんなのが上空でうねってたら、そりゃ逃げるわな。……ホントいい迷惑である。


 ミィーミィー、ミィーミィー。


 ミニ龍は草原の中をはいはいして、楽しそうに動き回っている。――可愛い。


 こいつも、早く何とかしてやりたいな。


 暖かく見つめる そのミニ龍には、腕が前2本しか生えていなかった。






 『ウウ、アゴがぁ……。ニンゲン ナニをシタ。ココはドコダ!』


 「特に何もしてないよ。都合が悪かったから場所を変えただけだな。お前さんの居た所は……ほら、あっちだ」


 僕は左手で大森林を指差しながら答えてやった。


 『フフッ、ドコマデモ ワレをバカにシオッテ。コウカイサセテヤル!』


 おや、またブレスか? まったく芸のない。


 「ピーチャン、電光石火(でんこうせっか)だ!」


 「ピー!」


 ピーチャンは返事をすると、素早く「電光石火」のスキルを発動させ蒼龍の喉元(のどもと)めがけて突っ込んでいく。


 (すご)い! 目にも止らぬ早さだ。


 ――グギョッ、ブヘッ。


 攻撃を受けた蒼龍は翻筋斗打(もんどりう)って悶絶(もんぜつ)している。


 さすがピーチャンだ! 


 あの小さい小鳥サイズのピーチャンが、如何(いかに)にあのような巨大龍をひっくり返せるのか?


 その答えは龍種の最大の弱点、「逆鱗(げきりん)」にあるのだ。


 逆鱗とは、龍の喉元に1枚だけ生えている「小さな逆さ向きの(うろこ)」の事である。


 ここを強打されると、どんなに強靭(きょうじん)な龍といえどもご覧のような有様になるのだ。


 であるから、普段はこれを隠しわからないようにしているのだが、コイツはさっきまでノビていたからな。


 それで、しっかり調査済みだったという訳だ。






 蒼龍をのし(・・)凱旋(がいせん)してきたピーチャンは、僕たちの頭上を嬉しそうに回っている。


 そして、またしても一緒に喜んでいるミニ龍。


 いいのか、ヤラレているのはお前の親なんだぞ。後で泣いても知らないからな。


 しかし、まさか従魔に……? 


 いや、いや、いや、鑑定なんかしないぞ! (汗)


 『オ、オノレ~。クソ、クソ、クソ――。サキにコウゲキさえデキレバ、コンナ ブザマなコトには』


 …………。


 まーだ、そんなこと言ってるのか。


 そろそろ気づけよ! まったく。


 「なんだ~、先に攻撃したいのか? それなら早く言ってくれよぉ」


 『ナニ、イイノカ。サキにヤッテモ。ホントにヤッチャウぞ』


 「どうすんだ? みんなでここに立ってればいいのか。こんな感じか?」


 「ソ、ソノママでオネガイシマす。ヨロシクです」


  と、何かボソボソと言いながら蒼龍は50m程上にあがり停止。


 そして、長めのタメをつくった後、僕たちに向け思いっきりブレスを吐いた。



 チュウィーン ボッ! ズガァ――――――ン!! 

  


 炎が(まばた)き――爆烈(ばくれつ)! 突風が周囲の草木を薙ぎ倒(なぎたお)す!


 『フフッ、フハハハハハハ。バカなニンゲンめ、コレデハ ナニもノコッテはイマイ』






 しばらくして、周囲に立ち込めていた煙が晴れていく……。


 するとそこには、月のクレーターのように丸く(えぐ)れた地面が現れた。


 そして悠然(ゆうぜん)としていたはずの蒼龍だが、目に入った光景に驚愕(きょうがく)せずにはいられなかった。


 なぜならば、僕たちがそのクレーターの ど真ん中に浮いていたからだ。


 まあ、一歩も動いていないだけなのだが、爆発で立っていた地面が無くなってしまったのだ。


 だから正確には、結界の上に立っているということになるかな。


 「これで終わりか? 次はこちらの番でいいよな。……おおい、何処(どこ)に行くんだ? 待てよ」


 「(ぬし)様、ヤカンにお任せください!」


 とヤカンが前に出ると、氷魔法の「フリーズ」を行使する。


 そうすると、逃げていく蒼龍の半身が氷漬けにされ、じわじわ地面に下りてくる。


 「なんだ~、つれないなぁ。挨拶も無しで行ってしまうのか?」


 『…………』


 「なんだよ、そんな(おび)えることないだろう。あっ、寒いのか? では、この氷を鱗ごと()いでやるかな」


 『カ、カンベンしてクダサイ。モウ、2ドとコノヘンにはチカヨリマセンから』


 「そうか、そこまで言うなら今回だけは見逃すけど、他所でも大人しくするんだぞ」


 『ハイ、ココロエました』


 「それから、この子は僕が預かるからな。変なちょっかいは掛けないように」


 『ハイ、ココロエました』






 そして、『行って良し』と許可を出すと、蒼龍はそそくさと南東方面に消えていった。


 これで、しばらくは戻っては来ないだろう。


 ついでにアズライトの鉱石群も頂いて、ダンジョンの中に貯蔵(ちょぞう)しとくかな。


 「しかし、派手にやっちゃったなぁ」


 そう言いながら、僕は目の前に広がる巨大クレーターをしばらくのあいだ見渡すのであった。




翻筋斗打つ(もんどりうつ)ですが、空中を大きく回るという意味です。「もんどり」は「もとどり」がなまったもので、この「もとどり」とは、まげの元の部分を指します。ようは頭についてる「ちょんまげ」を打つぐらい回るという事なのです。ミニ龍はどうもカルロの従魔になったようですね。



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アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] わーっ!ミニ龍ちゃんも仲間に!? 可愛いがいっぱいで天国ですね( *´艸`) まだ腕が二本生えてるだけなので、これからどんどん成長しそうで楽しみです♪
2022/05/22 17:45 退会済み
管理
[良い点] 彼らを前に龍でも太刀打ちできませんでしたね☆彡 ミニ龍が仲間に加わってまた賑やかになりますね◎
[良い点] 従魔ズ大活躍の巻!\(^o^)/ ボルテッカーの追加効果で麻痺状態にしてそう♪ 【蒼龍は おびえている…】 【蒼龍は にげだした!】 解説しよう! 全国各地を放浪する幻&伝説のポケ○…
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