80. 蒼龍
僕たちは今、ガルーダ大森林は『青の岩場』の地下に広がるドームの中いる。
みんなで楽しく牛丼ハッピータイム中だったのだが、何やら上に来ているようだ。
「シロ、上までやってくれ」
僕は持っていた牛丼を素早くかき込むと、口をモゴモゴさせながらミニ龍を抱えあげた。
あれっ、暗くなってる?
僕たちは、ポッカリ開いた穴のふちに戻ってきたのだが辺りは暗くなっていた。
これは雨でも降るのか? さっきまで晴れていたよな。
そう思い空を見上げてみると……。
ハハハッ、コイツのせいだったか。
見上げたそこには巨大な鱗が見えていた。
腹の部分なので白っぽい感じではあるが紛れもなく「龍の鱗」であろう。
今は鉱石群の下におり視界が利きにくいので、コイツがどれ程の大きさなのかはわからない。
しかし、どうやら ”お食事中” のご様子だ。向うの方からガスガスと岩を削るような音が聞こえてくる。
大方の有り様が掴めた僕はしばし考える。
状況的にいって、コイツがミニ龍の親なんだろうな。
鱗の色も同じ青だし……。
普段なら、ミニ龍をそっと置いて立ち去るところなのだが、今回の場合はコイツに出ていってもらわないと困るわけだし。
――さて、どうしますかね。
ミィーミィー、ミィーミィー。
僕が考えあぐねていると突然ミニ龍が鳴きはじめた。
なんだ? あいつが親だと分かったのかぁ。
まあ、何にしても親と一緒がいいよな。
とりあえず、ミニ龍はお返ししておこう。
すると、「デカ龍」 …………なんか、バカっぽいな。
「蒼龍」でいいか!
すると、蒼龍の方も鳴き声に気づいたらしく、岩を齧る音が聞えなくなった。
そして体をくねらせて顔を此方に寄せてくる蒼龍。
その場にミニ龍をそっと地面に下ろし、僕たちは穴の反対側まで下がった。
ミィーミィー鳴いているミニ龍の元に、匂いをかぐように顔を近づけていく蒼龍。
すると、地を這って近づいてくるミニ龍に対して蒼龍は鼻息を吹く。
その鼻息に吹き飛ばされ目の前の穴に落ちていくミニ龍。
「シロ!」
シロは直ぐさま穴へダイブ。次の瞬間には、ミニ龍を口に銜えて僕の隣りに現れた。
…………。
コイツ今、ワザとやったよな!?
ってことは、最初にミニ龍を地下で見たのもコイツが落としたからなのか……。
『ソコのニンゲン、ヨケイナコトをスルナ』
蒼龍である。
念話にて意思の疎通が図れるようだ。――カタコトではあるが。
『ソヤツは トブコトもデキヌ デキソコナイ。シマツをツケルダケダ』
「そうか、要らないのなら僕が貰い受けるが。それでいいか?」
『ソレはデキヌ。ワレら リュウゾクのコケンにカカワル』
なに言ってんだ、このバカ龍は。だいたい龍は群れをつくらないだろうが。
住処も点々としているのに、誰に対する沽券なのか、ここ半刻 (1時間)ぐらい問い詰めたくなってきた。
ようするに、気にいらないから「処分する」という事だよな。
直接 手を下さないのは、『龍は決して龍殺しは行わない』 これがあるからだろう。
なぜ、そうなのか? 竜はいいのか? いろいろ疑問が残るところであるが、そういう事らしいので仕方がない。
「ところで、おまえか? 最近ここいらで暴れているのは」
『フン、ナンのコトか ワカラン。ココはワタシのリョウイキだ。ニンゲンにはカンケイナイ』
何のことかって、お前しかいねーだろうが。産後の鬱憤ばらしでもしていたのか。
って、まてよ。この前きた時に卵なんかあったか?
……ああ、上からは見てなかったよなぁ。鷲の巣みたいに岩棚にあったのかもな……。
『オイ! キイテイルノカ。ニンゲン』
おっと いけない。また、もの思いに耽ってましたわ。
「おっ、すまんな。なんだ?」
『ワレをメノマエにシテ、カンガエゴトとはヨホドシニタイラシイ』
「いや、僕もまだ死、って待てよ! おい!」
蒼龍は顔を後ろに引きながら、溜めをつくっている。
これは、”ブレス” だろう!
躱すのは簡単であるが、ここで暴れられるとスタンピードを拡大させてしまう。
「シロ、ボルテッカーだ! 顎の下を狙え」
シロは、すぐさま巨大化。
全身からプラズマを迸らせ、低い姿勢で突っ込んでいく。
ボッ! ドガァ―――ン!
昼日中に打ち上がる花火。
シロの「必殺ボルテッカー」が決まった瞬間でもあった。――フラグ回収である。
と、作者でも忘れているような遠い昔のフラグを回収しつつ、意気揚々と引き上げてくるフェンリル姿のシロ。
もちろん、もふり倒して褒めまくる。
何故だか知らないがミニ龍も上機嫌である。 ミィーミィー鳴いてシロにまとわりついている。
そうかそうか、お前もシロの活躍が嬉しいのか。――ええ龍やな。
さて、今は電撃を喰らって沈黙している蒼龍だが、また暴れられても面倒だな。
ここガルーダ大森林の中に居ては何もできん!
僕はみんなを集め、しばし作戦会議。
途中、『このまま、殺ってしまいましょう』や『回収してダンジョンで実験しましょう』といった過激な意見も飛び出す中、
『実力を見せて、わかってもらいましょう』
ということで、話が纏まったのだ。
ただ、どのように『わからせる』のか、少々不安ではあるが……。
青龍にしろ蒼龍にしろ、龍は生まれた時から空を飛べるのです。それでも、生まれてまもなくはプカプカ浮いているだけなのですが。 カルロは何か気づいているようですが、蒼龍とカタをつけてからのようです。あとフラグの件ですが、旧作のどこかでシロに「ボルテッカー」を覚えさせると書いたような……。
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