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78. 夏休みが……

 僕は今、シロとヤカンを連れて南門の城壁(じょうへき)の上に来ている。

 

 ピーチャンは上空にて警戒中だ。


 ――ふぁ~~~、眠い。だいぶ明るくなった外の景色を(なが)めながら大あくび。


 というのも、昨日の日没間際(にちぼつまぎわ)に1匹の魔獣(まじゅう)が迷い込んで来たからなのだ。


 その魔獣の名は「レッドビー」、決してレッドイットビーではない。


 ――放っておく訳にはいかないのだ。


 こいつは蜂の魔獣で全長40cm、厄介(やっかい)なことに空を飛ぶことができる。その移動速度は陸上を行く魔獣とは比べものにならないくらいに早い。


 (さら)に、この時期は大陸を渡る南風が吹いている。これに乗ろうものなら1日で100キロ近く移動することも可能なのだ。


 ただ、夜は地面に下りて休むようなので、昼だけ警戒すればいいことになる。


 『おお、ちょこちょこ来だしたな。え~と上にあがっているのは……』


 上にあがった個体だけをパラライズで落としていった。


 僕が担当しているのは、風に(あお)られて上空高くあがった個体だけである。


 このレッドビーは、基本的には地面から2~3m程を飛んでいる。


 であるから、10mの城壁の上から弓矢で(ねら)い撃ちである。


 体も軽く薄いため、一矢当てればポトポト落ちていく。ある程度()まったところで、回収班が出て(むくろ)と矢を回収していく。


 そして、昼前には風向きも変わり、僕のこの日の任務は終った。






 この間にも、リマの町では衛兵隊や冒険者が中心になって、町門の裏に土のうを積んだり城壁の上でも(せわ)しく準備に追われていた。


 スタンピードによる魔獣の第一陣が到達するのが明日の昼前になるという。救援(きゅうえん)要請(ようせい)は各方面に出してはいるものの、それまでは籠城(ろうじょう)して耐えなければならない。


 本格的な救援部隊が到着するまでとなると短くて10日。天候の関係もあるし、真夏の行軍を考えるなら+3~4日は見ておくべきだろう。


 …………。


 ――ダメだな。下手したら夏休みが終わってしまうじゃないか。それは嫌だ。


 僕は領主邸(りょうしゅてい)に戻って、フランツ伯爵(はくしゃく)直談判(じかだんぱん)することにした。






 「と言うことは、今回のスタンピードの元になっているものを排除(はいじょ)して、出てきている魔獣は大森林へ帰ってもらう……と、そう聞こえたのだが」


 「はい、それで間違ってないです。僕にもいろいろと予定がありまして……。申し訳ございませんが、3日ほど時間を頂きたいのですが」


 「……あのねカルロくん、今回の事もそうだけど これは 『ガルーダ大森林の主』 の仕業なんだよ。キミや私達がどうこう出来るようなものではないのだよ」


 「なるほど、『ガルーダ大森林の主』ですか。()っちゃいけないのですね。それなら、場所を変えてくれるようにお願いしてみましょう」


 「…………」


 「いやいや、ちゃんとヤリますから。大丈夫ですって。だから3日ください。お願いします」


 「……まあ、そこまで言うのなら無理に止めはしないけど、ちゃんと報告はしてよね。逃げちゃダメだからね」


 「大丈夫です。逃げも隠れもしませんから」


 こうして僕は、なんとか町を空ける許可を得たのであった。






 僕たちはリマの町を出て南の草原地帯に来ていた。


 数日前の依頼でグレーウルフを狩った場所である。


 「シロ、スタンピードを起こしている場所まで案内してくれ」


 すると、シロは虎ぐらいの大きさにサイズチェンジすると、僕を背中に乗せ草原地帯を疾走(しっそう)する。


 そして、現場へ着いた僕たちは結界魔法を展開。上空から魔獣達の動向を観察した。


 ほほう、ガルーダ大森林を出てきた魔獣達は、(とりで)から続いている石垣の前で北と南2つに分かれて、それぞれが石垣沿いを進んでいた。


 「じゃあシロ、こっちからな! 少しきつめの ”パラライズ” でいくからな」


 ――パラライズ発動!


 石垣沿いを行進していた、ゴブリン、ウルフ、オーク、ビックボア等の魔獣はその場で力なく倒れた。


 「よーし、一旦下りて今度は向うだ。行こう」


 そして、そこでも同じようにパラライズを発動。どんどん魔獣を麻痺(まひ)させていく。


 「よ~し、ここはこんなものだろう。次だ」


 こうして、短時間の内に2000匹もの魔獣を麻痺させていった。


 この状況は騎士団の監視員(かんしいん)の目にも映っていたのだが、訳もわからず次々倒れていく魔獣に ただ驚愕(きょうがく)するばかりであった。


 さて、いよいよスタンピードの発生源を探しにガルーダ大森林へ入るのだが、心当たりといえば ただ一つだよね。


 そう、『絶望の丘(ぜつぼうのおか)』である。


 「シロ、転移のあと すぐに結界が張れるようにな。ピーチャンはシロの頭、ヤカンは僕の隣りにいるな」


 「よし! 行こう」






 あれっ、……何も居ない。原因はここではなかったのか? まあ、とりあえず調べてみますかね。


 「シロ、この前行った『青の岩場』に頼む」


 僕たちはアズライト鉱石が密集する「青の岩場」へとやってきた。


 「ピーチャンは上空警戒(じょうくうけいかい)。シロは僕とこっちに、ヤカンはあっちの方を満遍(まんべん)なく頼む。地面に穴が開いているところがあるから、要注意な!」


 「はい、了解しました。主様もお気をつけて」


 「おう、何かあったら すぐ念話で知らせてくれ」


 それぞれに指示を出し、僕たちは手分けして「絶望の丘」を調べることにした。




レッドビーはハニービーの仲間で、ハニービーが黄色と黒に対してレッドビーは赤と黒のストライプです。お尻の針には毒があり、刺されると麻痺します。昆虫由来なのに魔獣なんだとか突っ込まないように。カルロがシロとパラライズを使っていますが、今回は強めで1日は動けないでしょう。

(∪^ω^)ヤカンの影がうすいお!  ごもっともです。(汗!



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― 新着の感想 ―
[良い点] みんな大活躍ですねっ! ピーチャン、ヤカン、シロさん。 モフモフしたい〜(*´∇`*) 「レッドビー」←大好きな曲です( *´艸`)だから違うって 巨大な蜂は怖いですね((((;゜Д゜))…
2022/05/16 22:33 退会済み
管理
[良い点] やはりカルロくんは無双ですね(*^^*) パラライズはカルロくんとシロの二人の合わせ技ってことですか? あと麻痺だけで何故倒さないのですか? 盛り上がってきているので前のめりになっちゃって…
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