表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/137

73. フランツ

 僕は今、リマの町 南門すぐの所にある衛兵詰(えいへいつ)め所に来ている。


 入れられた部屋は窓もない10畳ほどの部屋で、真ん中に四角い机と椅子(いす)が3脚。


 さながら取調室のような所で、僕は奥の椅子に座るようにと言われた。


 歓迎(かんげい)されている訳ではなさそうだ。


 心当たりは、やはり昨日の盗賊(とうぞく)かな。あれは、町公認だったとか? 


 まあ、それはないだろうが何が出ますやら、少し楽しみになってきたな。


 あれから、どれくらい()ったのだろう。いろいろ考えていたので半刻(1時間)程だろうか、ドアの外の衛兵が誰かと(しゃべ)っているのが聞えてきた。


 すると、ノックもなくドアが開き、


 「いやーごめんごめん、仕事が立て込んでてね」


 入って来たのは、衛兵隊らしく細マッチョの青年。歳の頃は20代半ばといったところか。


 「ごめんね~、上手く話が通っていなくて。場所を移すからボクについて来てくれるかな~」






 そして連れて来られた部屋は、さっきの部屋よりは幾分(いくぶん)いい感じの部屋だ。ちゃんと窓も有るし、椅子がソファーに変わっている。


 ちょっとした応接室(おうせつしつ)のような感じか。まあ、衛兵隊の詰め所だからな。こんなものだろう。


 「ここは1人で大丈夫だから、君たちは下がってていいよ。用がある時はまた呼ぶから」

 

 この隊長と呼ばれていた青年は、お茶を持ってきた隊員とソファーの後ろに立っていた隊員を部屋の外へ出してしまった。


 「今日は悪かったねー、まずはお茶でも飲んでよ。話はそれからしよう」


 そう言うと青年も前のソファーに腰掛け、お茶を(あお)るようにぐびぐび飲んでいる。


 僕もお茶で一服(いっぷく)し、木製のミニジョッキを前のテーブルに戻した。


 「へー、大したものだ。こんな所で出されたお茶なんか普通手を付けないだろう」


 「まあ、あなたがいろいろ気を使っているのが見えましたので、あまり疑うのも失礼かなと……」


 「さすがだねー、『カルロ男爵』 ようこそリマの町へ! 私はフランツ。ここの領主をしている」


 「…………」


 「あれっ、疑われているのかな? え、ええッと……」


 (あわ)てたように、フランツと名乗った青年は周りを見回したりポケットに手を突っ込んだりしている。


 「ぷぷっ、いえ失礼。違うのですよ……。 違いますよね……」


 「ああ、もうバレちゃったのか。でも笑う事ないでしょ。これでもザークの領主なんだよー」


 「くくっ、そ、そうですね。お初にお目にかかります。フランツ伯爵(はくしゃく)様」


 「あ~もう、まだ笑ってるし。けっこう得意だったんだよ変化魔法(へんげまほう)は」






 「それで、僕に何かご用があったのでは?」


 「もういいよ! 帰っていい。 東門から冒険者が来たと聞いたから、どんなヤツか見てみたくてね」


 「そうですか。それは有難いのですが、そんなに(めずら)しかったですか?」


 「ああ、そうだよ。ここ1年ではじめてだよ東門、つまり北からの冒険者はね」


 「その少ない理由は何であるとお思いですか?」


 「そんなもの、大森林からの魔獣(まじゅう)に決まっている。何を言っているんだい」


 「…………」


 「他に何か理由があると?」


 なるほど、領主は知らない……っと。まあ、あんな事は普通しないよね~。


 てことは、騎士団(きしだん)、もしくは魔法士団(まほうしだん)ということか? 騎士団はあんなセコイ事しないよな。


 残るは、『魔法士団』ということか。


 しかし、魔法士団はエルフ組の子飼(こが)いのはず、どう出てくるか様子を見てみるかな。






 「それが、リマに入る直前にチンケな盗賊(とうぞく)(おそ)われましてね。大変でしたよ」


 「なんだって、盗賊? それは無いよ、ここには王国騎士団や魔法士団が駐屯(ちゅうとん)しているんだ。いくらチンケな盗賊でもそんな()はおかさないだろう」


 「いったいどの辺りで襲われたんだい。ヨーラン村とかそっちの方だろう」


 「いえ、ほんの目の前です。リマの町と(とりで)への分岐点(ぶんきてん)からちょっと行った所ですよ」


 「分岐って直ぐそこじゃないか! いや、では何で衛兵に知らせないんだ。おかしいだろう」


 「あ~、まあ、そうなんですけど。面倒になりそうだったもので……そのう……」


 「あ――、なんでそんな大事なこと言わないかな~。もう、そいつら逃げてるでしょう。これは責任問題になるかもよ」


 「いえ、()らえました」 (小声)


 「ふ、ふぇっ、今なんと?」 (小声)


 「だから、捕まえてますよ! 盗賊も、一緒に行動していたオーク共もみーんな」


 「みーんな?」






 それからが、また大変だった。


 (くわ)しい経緯(けいい)を領主に話して聞かせ、夜だというのに衛兵の練兵場(れんぺいじょう)まで連れて来られた。


 そして、篝火(かがりび)()かれ衛兵たちが見守る中、例のエルフ3人組と オークは1匹だけ、パラライズが()いている状態で排出した。


 気がついた3人組は、はじめはワーワー騒ぎ立てていたが、僕が ”爵位持(しゃくいも)ち” だと知ると 途端(とたん)に大人しくなった。


 貴族の当主には『無礼打ち』が認められているからである。


 そうして、後のことは領主であるフランツに任せて、僕はみんなが待つ宿屋に引き上げることにした。


 これからみんなで屋敷に来ないかと誘われはしたが、明日も依頼(いらい)があるからと丁重(ていちょう)にお断りしておいた。


 ”それでも” ということで明日の夕刻に馬車を差し向けるので、領主邸まで来るようにとお願いされてしまった。


 僕もさすがに、このお誘いは断ることが出来なかった。




おお、これはカルロのピンチと思いヒヤヒヤしていたら、領主フランツのわがままでしたねー。これで魔法省の重鎮なのでしょうか? 何か色んな顔をもってそうですよね。言葉通り。ところで、カルロは何故かエルフや目上の人には鑑定をあまりつかいませんよね~。まあ、エルフにはバレる危険もあるのかな。



ブックマーク、評価、感想、いいね! などいただきますと励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] カルロくんの危機……かと思いきや領主様のわがままで安心しました( *´艸`) 魔法者って響きがファンタジー感溢れていてすごく好きです♪ 明日のお誘い、何が待ち受けているのかドキドキです(*…
2022/04/29 19:17 退会済み
管理
[良い点] この頃 噂の男の子、こっちを向いてよカルロ男爵~♪ って好奇心で、ハートがドキドキしちゃったフランツ氏のせいでしたか…(呆れ) どんなに豪華な夕食でゴメンね摂待しようが、某『牛丼』様やカ…
[良い点] 魔法省のおえらいさんが茶目っ気たっぷりに登場ですね◎ あっという間の戦闘で、もはや不戦勝でした(*´艸`*) リマの町も楽しそうだ☆彡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ