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71. リマの町

 リマの町を目前にして、街道(かいどう)に現れたゴブリン共。何か引っかかりはするが、今はゴブリンの殲滅(せんめつ)を優先させていた。


 場所的にいえば、リマの町方面と(とりで)方面へ別れる分岐点(ぶんきてん)のあたり。


 戦闘の方は、エマを乗せたシロがまもなく接敵(せってき)するかというところだ。


 …………!?


 『シロ、戻れ!』


 『ヤカン、光学迷彩(こうがくめいさい)を張って離れろ』


 『ピーチャンは上空警戒(じょうくうけいかい)! 上で待機だ』


 僕は矢継ぎ早(やつぎばや)従魔(じゅうま)たちに念話(ねんわ)を送り的確な指示を出していく。


 すると、間髪入(かんぱつい)れずにエマを乗せたままのシロが僕の横に現れた。ピーチャンは(すで)に上空警戒任務についており、上空からの情報が逐一(ちくいち)伝わってきている。


 ゴブリンまでの距離は50m程。今度は街道際(かいどうわき)の草むらからオークが40匹、道を(はさ)み込むかたちで雪崩(なだ)れ込んできた。


 ――やはりか。大体、この場所に最弱のゴブリンがのこのこ(・・・・)顔を出せる訳がないのだ。


 現に数匹のゴブリンは左右から出てきたオークに駆逐(くちく)され、朝ごはんにされているのだから。






 しばらくすると 朝ごはんに夢中だったオークも落ち着いていき、ぞろぞろと此方(こちら)に押し寄せて来た。


 そして、その距離が20mに迫った時、隠れていた者たちがようやく姿を現した。


 そこに現れたのは、男2人に女1人の3人組であった。


 (そろ)いの革鎧(かわよろい)(まと)っており、驚くことに耳が長い。――まさか!


 「あんた達も運がなかったね。命は取らないから武器を下に置きな」


 「おい! 聞こえただろう。さっさと武器を放れ。死にてーのか!」


 まるで盗賊(とうぞく)である。


 いや、盗賊だよな こやつらは。


 だいたい、そんな安っすい命の保証で得物(えもの)を手放すバカは何処(どこ)にもおりましぇーん。


 しばらく経っても、反応しない僕たちに業を煮(ごうをに)やしたバカ共は何をとち狂ったのか、


 「あ~、もういいよ。後ろの同胞(どうほう)2人は残して、お前たちやっておしまい!」


 「「アラホラサッサー」」


 正真正銘(しょうしんしょうめい)の大バカであった。






 …………。


 「なにやってんだい! 早くおし」


 「それが(あね)さん、どうにも足が地面にくっ付いて離れないんでさー」


 「なにバカなこと言ってるんだい。そんなバカなことが……。そんなバカな」


 「バカはお前らだ」


 僕は目の前の3人と後ろのオークにパラライズを()らわすと、この全員を一気に収納してしまった。


 「さて、時間くったけど町に行こうか」


 「……カルロ氏、目の前にいた者たちは何処へ」


 「収納しているよ。あの3人は後でキッチリ『おしおき』しないとね」


 「あと、クロナ。ポンタで足止めをありがとう。助かったよ」


 「いえ、お役に立てて嬉しいです。……そのう~」


 と言い、クロナはおずおずと頭を差し出してくる。――可愛い。


 ()でましたとも、心ゆくまで撫でて差し上げました。従魔とピーチャン、エマまでみーんなね。






 そして、僕たちは無事にリマの町にたどり着いた。ゴツい城壁(じょうへき)圧迫感(あっぱくかん)を覚える。


 近くで見ると結構な高さがあるな。10mはあるだろうか。


 懸念(けねん)していた門での検問も、意外にスムーズに進んでいき、


 「この街道をよくも無事で……運が良かったな。帰りは止めておけ」


 と、心配されたぐらいだ。


 ただ、念のため従魔はシロだけとし。


 ヤカンは光学迷彩をかけさせ、ピーチャンは普通の小鳥のようにその辺を飛び回っている。


 ポンタは言わずと知れたこと、クロナと同化している。


 とりあえずは、冒険者ギルドかな。そのあと宿を取り食事に出かけよう。


 門番を務めている衛兵に冒険者ギルドの場所を聞き、リマの町のメインストリートを西に向かってみんなで進んで行く。


 町の中央に進むにつれ、閑散(かんさん)としていた道が一気に活気(かっき)を帯びてきた。


 そして理解したのだ。東に向かているのは(わず)かな騎士や兵士だけで、町のメインは西側と南側であることに。


 冒険者ギルドは中央広場を左に折れた南側の一角に建っていた。


 建物の周りはとても(にぎ)やかで、武器屋や食堂、洋品店といった様々な店が建ち並んでいる。






 ここが、この町の主力であるようだな。冒険者ギルドの建物が王都並(おうとな)みに またデカいのだ。


 僕らはさっそく冒険者ギルドに入った。


 ――うぅわっ、中はすごい熱気だ。もう、朝の混む時間は過ぎてますよね~。


 なのに、この熱気に この人の多さ。それに様々な種族が入り混じって、独特どくとくの雰囲気を(かも)し出している。


 え~と、受付カウンターはこっちだな。


 僕は片手でエマを腕抱きにし、もう片方の手で人をかき分けていき、ようやく列に並ぶことができた。


 その後は特にテンプレに悩まされることもなく、移動登録とおすすめの宿も紹介してもらえた。


 そうして、熱気あふれるギルドから解放され表に出てきたのだが、何故(なぜ)だかクロナがプンプン怒っているのだ。


 「クロナ、どうかしたか?」


 「どうかしたというか、痴漢(ちかん)にあいました! わたしの大事な尻尾(しっぽ)……誰かに(つか)まれたのです!」


 半泣き状態で(うった)えてくるクロナ。


 僕はどう答えていいのか分からず。泣き出すクロナを抱きしめ、頭を撫でてあげることしか出来なかった。


 まあ、あの状況では犯人を(さが)すのは困難だろう。


 だが、もし見つけたら絶対ゆるさない! 僕がその腕をへし折ってやる。


 クロナが泣き止むまで みんなには待っていてもらい、落ち着いたところで 宿屋に向かって行くのであった。




オークと共に出てきた。エルフの3人組、魔獣使いのテイマーなのか? まさかのオーク牧場か? まさか、こんな砦の近くで盗賊もないだろうが やることが荒っぽいよね。報告、揉み消し、どうとでもなるんだろうね。そんなことより、誰だよ! クロナ泣かしたヤツ。許さぬぞ~。

(∪^ω^)痴漢ダメ! ぜったいお!



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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなをなでなでしちゃうカルロくん、めちゃくちゃいい子ですね( *´艸`) こらっ、誰だー! クロナちゃんの尻尾を掴んだやつはo(`ω´ )o 私も許さないぞっ!プンプン!
2022/04/24 12:07 退会済み
管理
[良い点] エマちゃん、初の遠隔地お出かけでしたが、無事に街に到着~! ダンジョン?転移?知らないなぁ…(すっとぼけ) [気になる点] なんか変な3人組が出てきましたね… え? 木に登るブタ?頭蓋…
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