69. ママにも
そういったことで、まあ テリュース兄には冷や汗をかかされた訳だが、2人の兄はそれぞれ頑張っているとだけ伝えておく。
お次はエレノア母様38歳。
最近、凝っているものといえば料理なのだが。家では今、しっかりとしたコックが5人働いている。
当然、朝、昼、晩の3食に加え、アフタヌーン用にパイやケーキといったものも作っている。
だからエレノア母様が出るような事態にはならないのだが、
僕がおもしろ半分で渡したものを、いたく気に入ってしまい 使い続けているのだ。
そのあるものとは、「ホットサンドプレート」である。
食パンは毎朝10斤、ダンジョン・サラ から送られてくるし、携帯に便利なようにカセットコンロも渡している。
あとは、パン切りナイフ、軍手、皿、クロス等は自前で用意している様子だ。
それは色んなものを挟んで焼いている。朝食ように焼いてあった目玉焼きから始まり、ハムと野菜、この3品だけでもかなりのバリエーションが楽しめる。
さらにチーズなどを加えれば、得も言われぬ ”出来たての味” が手軽に作れてしまうのだ。
最近では ”ジャム” や ”あんこ” なども使い始め、毎日 家の者を集めては出来栄えを披露していたのだ。
ところがだ。
ある時、温泉施設に来ていたロイド様たちを、突然アストレア邸に招いてしまったのだ。
そのため、家人たちは ”てんやわんや” の大騒ぎになったらしい。
エレノア母様はあんな感じで、いつもおっとりしているから、
『良かったら、寄っていってちょうだい』
そんな軽い感じで招いてしまったに違いないが、周りにいるものはたまらない。
お相手は畏れ多くも、クルーガー王国 王室の王太子妃様なのである。
ちょっとしたことで、首が飛ぶかもしれないのだ。
まあ、ある程度粗相をしたところで、ロイド様が気を害することなどありはしないのだが。
そんなことは、田舎者である邸の家人達には分からない訳で、それは大変だったということだ。
今はすっかり慣れてしまって、ホットプレート片手に みんなでワイワイやっているようだが……。
僕らは、みんな揃って朝食をいただいていた。
エマはクロにゃんとシロに挟まれてニッカニカだ。昨日約束しているので、今日は ”エマの日” にして思いっきり相手をしてやろう。
そして、食事を終えリビングでしばらく待っていると、懐かしの赤いローブを手に持ったエマがちょこまかと部屋に入ってきた。
「おう、エマ準備は出来たか? トイレはすませたのか」
「もう、カルロ兄さま大丈夫です。トイレは行きましたしハンカチも持ちました」
「そうか、問題ないなら行くが、何かあったら直ぐに言うんだぞ」
「はい!」
エマは大きな声で返事をしつつ、クロナと手をつないでいる。よし、大丈夫だな行こうか。
まずは全員で温泉施設に渡る。
ここで、キリノさん、コリノさんのエルフ姉妹とは別行動になる。
ふたりは今日、迷宮都市まで下りてキリノさんの冒険者登録をする予定なのだ。
そのあとは、久しぶりだし ふたりで迷宮都市をぶらぶら回ってみるとのことだ。
ふたりには、ここの温泉施設入室とアストレア邸の転移門が使えるパスをそれぞれ渡している。
ただ、さっきリビングに集合した際、キリノさんのかっこがかなり気になってしまった。
そのため、身体に合いそうな薄いグリーンのワンピースに、夏なのでサンダルを用意してあげたのだが、それがなかなか似合っていた。
長い銀色の髪がとても涼し気にみえて薄いグリーンに映えるのだ。
そのように僕が見とれていると、
「カルロ氏。これは何とも頼りない服であるな~。そして、お股がスースーするのだが……夏だからいいのかな?」
と言いながら、スカートの裾をヒラヒラめくる。
ん! んん何? 履いてな――――い。(大汗)
急ぎ、シロに頼んでパンティーやストッキングなどをポイポイ出していると、
「おお、これがいいぞ! カルロ氏」
そちらに目を向けてみると、濃紺のスパッツであった。――もう履いてるし。
といった感じで、キリノさんに振り回された ”朝の一幕” もあったのだ。――やれやれ。
玄関でふたりを見送ったあと、僕たちも ダンジョン・サラ へと転移していった。
やって来たのは、ダンジョン・サラ の4階層。ここではスライム、コボルトが駄菓子を落とし、ゴブリンがチ〇ルチョコを落とす。
エマをシロに乗せ、サクサク狩らせ僕とクロナが後ろについてドロップ品を網かごの中に入れて行く。
一旦、休憩をはさみ、5階層も蹂躙していく。
5階層からはウルフがチュ〇パチャップス、ホブゴブリンがチョコビを落としていくのだ。
さらに、昼までに6階層も制覇し、キープ駄菓子も結構集めることができたと思う。
僕たちは、ダンジョンリビング 内の ”海の家” に入り昼食を頂いていた。
張りきり過ぎて 少し疲れたのか、エマはシロにもたれかかりお昼寝中である。
さて、後半戦は9階層でゴブリンライダーを狩っていく。
ゴブリンは変わらずチ〇ルチョコなのだが、乗せているブラックウルフが狙い目なのだ。
ブラックウルフは ”マドレーヌ” を残してくれる。
なんだかエマも気合が入っており、シロと会話しながらゴブリンライダーばかりを狙っているように見える。
休憩の際に、どういうことか聞いてみたところが、
「ママにおみやげ、いっぱい獲るの!」
「…………」
かぁ――、なんてええ子や。
よーし、めいっぱい協力すんぞ!
まあ、エレノア母様も普段料理しない分、憧れ的なものが有ったのかもしれません。ホットサンドプレートはハマリますよねー。お手軽だし、美味しいし自分でつくる喜びも入りますからね。しかし、いきなり連れて来ちゃダメでしょう。 それに、キリノさん……。ずっとノーパンだったのか?
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