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65. 龍

 ガルーダ大森林に突入して4日目。僕らは次のコミュニティを探すために進行していたところ、森林内にある大きな草原に出てきていた。


 すると、そこで「絶望の丘(ぜつぼうのおか)」? という名の草原を()えてきたという ひとりのエルフに出会うことができた。


 「え~と、僕はカルロです。そして、こっちがクロナで奥にいるのがコリノさんです」


 「んっ、コリノ? ……おおー、コリノじゃないか! 元気そうだな」


 「えっ、コリノさん。まさかの知り合い?」


 「…………あね……」


 あね、……ああ、姉なのね。って女の人だったの!


 てっきりヤローとばかり思っていたわ~。――あぶなかった。


 「(あらた)めまして、ボクはキリノ。そこに居るコリノの姉だ。久しぶりですぐには思い出せなかったよ」


 「そうなんですね、よろしくお願いします。それで良かったら、もうすぐお昼なので食事など御一緒にいかがですか?」


 「えっ、ご馳走(ちそう)してくれるの?」


 「ええ、キリノさんさえ良ければですが……」


 そうして、僕らは草原に少し入った所に石を積んで(かまど)(こし)え、持ってきた炭に火を点けた。


 と同時に、カセットコンロを取り出し水をはった寸胴(ずんどう)を置いた。


 「それは(すご)いねぇ。魔道具なのかい?」


 「そうですね、似たような物ですね。このボンベにガスが入ってて、それが燃えている訳です」


 「…………ガス? よく分からないがスゴク便利なことはわかったよ」






 「こちらがスープです、熱いので気をつけて。お肉も焼けてますよどうぞ」


 「うん、ありがとう。キミは収納魔法(しゅうのうまほう)も使えるのだなぁ。うらやましいな」


 「ほら、ボクたちエルフは森の中を行ったり来たりだろう。すると持っていきたい物も増えちゃってね」


 「なるほど、わかります。荷物が多いと魔物と遭遇(そうぐう)した時なんか大変ですからね」


 「そうそう、数が多い時なんか荷物を投げ出して逃げるからね。ハハハッ」


 お昼を一緒に頂いて、キリノさんともだいぶ打ち解けてきたところで、この草原について聞いてみることにした。


 「ところでキリノさん、ここの草原はなぜ『絶望の丘』なんですか?」


 「んん、そうかキミたちは知らないのか。コリノも知らないのか」


 「……知らない……」


 「ここはドラゴンの縄張(なわば)りなんだよ。昔はちっぽけな丘でね。そこに、あるとき1匹のドラゴンが(おとず)れて住み始めたのさ。すると、必然的(ひつぜんてき)にそのドラゴンから遠ざかろうと あっちこっちでスタンピードが起こってしまってね」


 「それで、たび重なるスタンピードに業を煮やしたコミュニティが有志(ゆうし)(つの)って、そのドラゴンを追い払おうと動いたのだけれど……。結局、誰も帰って来なくてね。後で違うコミュニティが様子を見に来たところ、そこには草も木も無い真っ黒な荒野が広がっていたんだ」


 「それからだね、ここが『絶望の丘』と言われ出したのは……」


 「そうだったのですね。しかし、ここを丸ごと……(すご)い! どんなブレスを吐いたらここまでなるのやら」


 「ヤツかい。ヤツは形も普通のドラゴンとは違うんだ。なんというか、こう蛇のように長いんだ。それに、蛇とは違って手が4本生えているんだ。こう」


 と言いながら、キリノさんはドラゴンの手を真似(まね)て、ガォーをしている。――お茶目だ。


 この話を聞く限り、ここで暴れたドラゴンは「竜」ではなく「龍」なのだろう。






 「それは怖いですね。それってどのくらい前のお話なんですか?」


 「えっ、どのくらいって?」


 すると、キリノさんは妹のコリノさんの所にまわって今川焼をひとつ(もら)っている。それから、ふたりで何やら話しこんでいた。


 「……100年まえ……」


 食べかけの今川焼を手にコリノさんが答えを返してくれた。――白あんだった。


 何故(なぜ)にコリノさんが答えてくれたのか疑問に思ったのだが、どうやら整合性(せいごうせい)(はか)っていたようだ。


 つまり、森の中のエルフは外界とは隔離(かくり)されているため、日付の感覚が曖昧(あいまい)になっているのだろう。


 だから、コリノさんに話を振り 少しでも近いところを算出させたのだろう。……多分だが。


 まあ、何十年か違ったところで誤差の範囲(ごさのはんい)だろう。彼らエルフにとってはな。


 「それで、ドラゴンは今何処にいるんでしょうか?」


 「うん、今は分らないなぁ。ただ、いつ帰って来るかは大体わかるよ」


 「ええー、ドラゴン帰ってきちゃうんですか。どうして?」


 「そんなに驚くこともないさ。ただの食事だよ」


 「食事なんですか?」


 「そう、年2回ね。この前は春ごろだったから、今度は夏すぎてだろうね」


 「それって、100年前からず――とですか?」


 「そう、ず――とだね。ここから東の方、えっと こっちだね。まっすぐ行くと岩場が点在しているんだ。珍しいよ青の岩場なんて」


 そこの岩場はおそらく「アズライト」の岩場だろうな。


 何故だか知らないが、ここ ”サーメクス” では地中でアズライト鉱石が出来あがると地上に(あふ)れ出すようになっている。その為、アズライト鉱石群の下は空洞(くうどう)になっていることが多いのだ。


 「シロ、おいで!」


 クロナに後片付けを ヤカンにはみんなの護衛(ごえい)を頼んで、僕は虎サイズになったシロに(またが)った。


 そして、キリノさんが示した「青の岩場」のある方角へ向けシロを走らせるのであった。




エルフのコリノさんにお姉さん登場です。カルロは男と思ってたようですが顔面偏差値は激高です。そして、アズライトは精神の安定などヒーリング効果が高いパワーストーンです。ブルーの奇麗な石で、龍が好んで食べたと言われています。



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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかコリノさんのお姉さんだったとは! キリノさんもカッコ良くて好きなキャラです( *´艸`) なるほど、「龍」ですか。宝石を好むのですね。 エルフの寿命は長いと聞きますが、100年前で誤…
2022/04/19 19:53 退会済み
管理
[良い点] スナフ○ン(仮)じゃなかった(笑) うっかり「野郎」って間違えてたら、『意思疎通が不可能で永遠に異動し続ける謎の白いニョロ生物』の種をばら蒔かれたりして、ヤバかったかも…(汗) (↑ ム…
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