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64. 草原地帯

 ガルーダ大森林に突入して3日目。


 ダンジョン・サラ内の ”海の家” で、僕らはのんびりと朝食をとっていた。


 コリノさんは、ここぞとばかりにフレンチトーストに あーまいホットチョコレート、デザートには生クリームとアイスクリームたーぷりのフルーツパフェが横に(そび)えている。


 さらに足元の紙包みには、白あんと黒あん5コずつの今川焼 (回転焼き)が入っていることを僕は知っている。


 見ているだけで胸やけしそうになるので、そちらをあまり見ないようにしながら、


 僕は飯盒(はんごう)で炊いたご飯に 出し汁を加えて作った ”たまご雑炊(ぞうすい)” をいただいている。


 そして、よせばいいのにクロナも同じ ”たまご雑炊” を食べているのだ。


 「ほら、大丈夫か? これに(うつ)して冷ましてからお食べ。ゆっくりで良いからな」


 飯盒についているアルミの中蓋(なかぶた)をクロナに渡してやる。


 クロナには少々熱かったようだ。舌を出しながらも悪戦苦闘(あくせんくとう)する姿が微笑(ほほえ)ましい。


 そして、おもての砂浜に目を向ければ、うちの従魔(じゅうま)たちが仲良く遊んでいる。


 海の中を顔だけ出して、泳ぎまくるシロ。


 その頭の上で悠然(ゆうぜん)と毛づくろいをしているピーチャン。


 楽し気に波打ち際(なみうちぎわ)をジャンプしているヤカン。


 ――おおっ。


 そのヤカンが何を思ったのか、いきなり海にダイブしたのだ……。


 あれっ、ダイブしたはずのヤカンは海面に立っている。――スゴイ!


 んん、いや違う。……そうかポンタか!


 おそらくポンタがクラゲのように水面に浮いているのだ。見えないが、多分そうだ。


 ポンタが海に入ると、目で見つけるのは不可能だな。ハハハッ謎は解けたな。






 朝食のあと軽くミーティングをおこない、コミュニティの概要(がいよう)なんかも聞いていく。


 エルフは基本群れをなさない種族であるという。そのため、エルフだけで町や村を作ることはない。


 だから便宜上(べんぎじょう)、各所にコミュニティ(寄合所)は作るのだが何か起こるとすぐ四散(しさん)してしまうらしいのだ。


 それで、この有様なのだな。


 そこには確かに何かあったのだろうが、今は皆 森にのみこまれつつあった。


 人間のように地面に家を建てるのではなく、ほとんどが木の上 ツリーハウスに住んでいたのだろう。


 だから、人が住まなくなれば森にかえっていく。住処(すみか)を転々とするエルフにはピッタリの住居といえるだろう。


 「……前は居た……」


 そう、コリノさんは言っているがエルフにとっての「前」が如何(いか)ほどのものなのかは、人間の僕では計り知ることは出来ないだろう。


 ただ、この()ち具合からして、5年やそこらではないような気がするのだ。






 さてさて、どうするか?


 まあ、このまま帰って、「何も無かった」でも通るとは思うが……。


 せっかく来たんだし、もう少し遊んでいっても良いかもしれない。


 「コリノさん、もう少し近辺を探ってみましょう。近くに他のコニュニティは無かったのですか?」


 「ん、……こっち……」


 そして、またコリノさんの案内で大森林の中を進んでいった。


 あれから2日が過ぎた。


 方角的には南に向かっているようだが、地図も無いので自分がどの辺にいるのか全く分からない状況(じょうきょう)だ。


 『はあ、あの時に帰っとけば良かったかな』


 そんな、言葉が頭を(よぎ)った時であった。


 急に目の前が開けたのだ。


 んん、大森林の外に出たのか? 目の前には青々とした草原が地平線まで広がっている。


 「ピーチャン、上空から様子見を頼む。何かあったら念話で知らせてくれ」


 「ピー、ピピー!」


 ピーチャンは右の翼を器用に曲げ、僕に敬礼(けいれい)をするとシロの頭の上からスクランブル発進していった。


 ……誰だよ! ピーチャンにあんなこと教えたのは?


 ピーチャンが飛び立って行くのを見送ったあと、僕はシロの方に目を戻した。


 明らかに目をそらし、遠くを見つめているシロ。――やれやれ。


 僕はため息をつきながら、久しぶりに空いているシロの頭を 優しく()でるのであった。






 そうして、ピーチャンと連絡を取りながら偵察(ていさつ)した結果。


 この草原地帯は直径10キロ程の円形である事が判明した。


 場所的にはガルーダ大森林の北端(ほくたん)で変わりはないが、リマの町からは少し南に下った東南東、時計でいえば4時の方向にあるようだ。


 さすがピーチャン。上空から見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)なのである。


 「……知らない……」


 「……草原なかった……」


 なるほど、ここは昔からこのような草原ではなかったということか。


 すると、前方の草原地帯を抜けて来る人影が……。


 あちらも、気づいた様子でこちらに向かって来ているようだ。


 だんだん大きくなる人影。


 グリーンのパンツにモスグリーンのポンチョ。首にしているスカーフも、そしてかぶっている三角帽子も全部グリーンだ。


 背中には大きなバックパック。横に刺さっていっるのは弓と釣り竿か?


 その風貌(ふうぼう)はまさにスナフ〇ン。――耳は長いが。


 ムー〇ン谷からやってきたようなカッコだな。よく似合っているのが何とも……。






 「やあ! 君たちこんにちは」


 「しかし、人族と獣人族の子とは珍しい。こんな『絶望の丘(ぜつぼうのおか)』でなにしているんだい?」


 「こんにちは~。僕達はここの先にあったコミュニティを(たず)ねてきたのですが誰も居なくて、仕方なく次のコミュニティを目指していたところです」


 「そうかい、それなら戻った方がいいな。この先しばらくは誰も見ていないからね」


 さすがはスナフ〇ン、飄々(ひょうひょう)と答えるものだ。


 この先にはムー〇ン谷も無ければ、コミュニティも存在していないようだ。




コリノさんもかなーりの甘党だよね。朝からデザートとは恐れいります。そして、今川焼は道すがら1人でもくもく食べているのです。この調子だと、今回の任務が終わったら即、ダンジョン・サラに来るだろうなぁ。コリノさんの強さがあれば、スイーツバイキングも夢じゃないよね。さて次回は、スナフキンのようなエルフさんから情報が……。



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 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] コリノさん甘党なのですね! 無口なのに可愛い( *´艸`) シロさんやピーチャン、ヤカンも満喫していてほのぼのしました♪ スナフ◯ン みたいなエルフ、すっごく気になります(*'▽'*)
2022/04/18 19:48 退会済み
管理
[良い点] 更新&返信ありがとうございます! ピーチャンが敬礼!?可愛い! ……あれ?小鳥の敬礼?なんか見たことがあるような……? …あ、ウチのコ(オカメインコ)が時々やってる、 体の前で風切…
[良い点] なんだか怪しい登場人物ですね(*^^*) 今までなかった草原とはいったい!? ガルーダ大森林で何がおきているんだ!?
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