表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/137

62. 遠征出発

 僕達は今、コリノさんが手続きを終えるまで 王都冒険者ギルドの前で待機している。


 学園の方は夏休みに入り、学友たちもそれぞれの故郷(こきょう)に散っていった。


 本来なら僕も、実家でのんびり温泉ざんまいしたかったよ。


 そうでなくとも、学園最後の夏休みなのだ。心置きなく遊び倒したかったよ。


 そんなことを心の中で叫びながら、晴れ渡った空を見上げていた。――暑くなりそうだな。


 「……おまた……」


 「いえ、手続き終わったようですね。他に買いたすものとかはありますか?」


 「……とくに……」


 出てきた、コリノさんの姿は長袖シャツにキャンパス生地で厚めのパンツ。膝下(ひざした)までのロングブーツに簡易(かんい)革鎧(かわよろい)を着ている。


 腰には大きなバックルベルトに吊るされたロングナイフ、背には大きめのバックパック。


 それに、布を巻き付け保護された短弓が取り付けてある。


 そうだよね、一大遠征(いちだいえんせい)なのだからこれでも足りないぐらいだよね。


 こんな装備で大森林に突入なんて、考えただけで気が滅入(めい)ってしまいそうだ。


 一方、こちらも怪しまれない程度の装備だ。シロとヤカンも専用のバックパックを背負っている。――可愛い。


 このバックパックはマジックバックになっており、中には水筒、黒パンや干し肉の他 タオルや毛布なども詰め込まれている。


 当然、自分たちの分ではなく、少ないが もしもの時の救助者(きゅうじょしゃ)用なのである。


 まあ それに、雰囲気というのも大切だからね。


 シロもヤカンも、そしてピーチャンも、心なしかウキウキしているように見えるのだ。






 「では、コリノさん。クロナ行くとしよう」


 声をかけ歩き出したのだが、先を行くシロが立ち止まってしまった。


 後ろを振り返って僕を見ている。そして盛大に振られる尻尾(しっぽ)……。


 「あー、1本だけだからな! まったく」


 「おじさん、12本ね! 半分は包んでよ」


 僕はコリノさんに(ことわ)りをいれ、串焼き屋のおじさんに数枚の銀貨を渡した。


 さっそく脱線したが、これは仕方がないだろう。


 ここ、王都の冒険者ギルド前には それは様々な店が立ち並んでいるのだ。


 こうした串焼き屋などの屋台も多く、あちらこちらから良い匂いがしてくるのだ。


 これで「待て!」とか言えるはずもない。


 そしてクロナも良い子だ。自分より先にシロの分、そしてヤカン(お稲荷様)の分と世話をしている。


 素早く串から肉を外し、シロは愛用フライパンに。ヤカンは何故(なぜ)白磁の皿(はくじのさら)に入れてもらっている。


 そうして、世話の終わった所でクロナに2本の串焼きを渡した。


 もう、待ちきれなくなったポンタが下から跳ねてアピールしている。――みんな可愛い。






 ここで、ピーチャンの事も話しておくと。


 ピーチャンは使い魔であり自然界の精霊(せいれい)昇華(しょうか)したものであるらしい。


 そのため、式神(しきがみ)と一緒で食事は必要としない。エネルギー源は宿主(やどぬし)の魔力なのだ。


 このため、通常は宿主とくっついた生活を送っているそうだが、うちのピーチャンはシロからでも魔力の補給が出来るようなのだ。


 というか、魔力を吸い過ぎて少しずつではあるが大きくなっているのだ。


 だから何、ということもないが鑑定するとMPの量が間違いなく増えている。


 喜んでいいのか分からないが、まあシロが何にも言って来ないし大丈夫なんだろう。



 ピーチャン Lv.13


 種族   チルチット

 状態   通常

【契約者】 カルロ・アストレア

 HP   49/49

 MP   48/48

 筋力    32

 防御    30

 魔防    34

 敏捷    36

 器用    21

 知力    33

 幸運    97


【スキル】   風魔法(3) 翼で打つ!  電光石火!


【進化 2】   不可チルチタス



 偵察要員(ていさつよういん)として、今は手放せない存在になった。


 シロにドッキングさせたまま偵察に出せば、条件や用途(ようと)に応じて ”フル充電” でスクランブル発進させることが出来るのだ。


 そしてレベルが上がった今、あのワイバーンですら相手にならないほどのスピードを(ほこ)る。


 ん、スキルが増えてるなぁ。


 翼で打つ! は超硬化(ちょうこうか)した翼で敵に1撃を入れるヤツだ。


 電光石火! は不意に敵と遭遇(そうぐう)して先手を取られたとしても、このスキルを使えば高確率で先制攻撃ができるヤツね。


 どちらも、素晴らしい攻撃スキルだといえるだろう。






 さて、ボチボチ行きますかね。僕はインベントリーから取り出した「変身サングラス」をコリノさんに渡しながら機能の説明をしていく。


 「よし、準備はいいな。クロナ、トイレは行かなくて大丈夫か?」


 「…………」


 「クロナ?」


 「…………」


 んん、なにか(にら)んでる? ……ああ、もう子供じゃありません! とかかぁ。


 まさか、反抗期(はんこうき)とかではないよね。大丈夫だよね、僕 親じゃないし。


 すると、ボソボソとクロナが何か言っている。


 「カルロさま、声が大きいです……」


 ああー、そうか。人前だったか。そうか、そういう事なのね。――反省。


 そうして、僕らは冒険者ギルド前の通りを避け裏路地(うらろじ)に入る。


 徐々に光学迷彩(こうがくめいさい)を掛けていき、全員隠れたところでダンジョンに転移を発動させる。


 これはダンジョンの管理者であるシロが居る為、ダンジョン間を結ぶ ”地脈(ちみゃく)範囲内(はんいない)” なら何処にでも転移できるというものだ。


 ということで、今回はモンソロの町から南に下ったところの マギ村近くの街道に転移してきた。


 ここからは、今度はシロにお願いして転移を行なう。


 そして僕らが転移してきたのは、モンソロの町から(とりで)が置かれているリマの町への街道沿い(かいどうぞい)


 この街道沿いのタグ村への分岐点(ぶんきてん)の近くである。昔、ウルフの団体と戦ったよなぁ。


 来たのは何百年も前のことで、景色は多少変わっているがここだったような気もする。




シロもヤカンも専用バックパックを背負ってご機嫌です。救助用の装備の他にそれぞれの”おやつ”も入れてあるからです。シロはジャーキー、ヤカンはなんとネズミの素揚げです。実はお稲荷様はネズミが大好物。もともとは畑を荒らすネズミを退治してくれる事から、五穀豊穣の御使いとして祀られるようになったとか。そして、初めにお供えされていたのがネズミの素揚げだったそうです。そして時代とともに、ネズミに代わり、色が似ていた油揚げが使われるようになったということです。


※明日は所用により更新ができません。 次の掲載は4月11日 18:00とさせていただきます。


ブックマーク、評価、感想、いいね! などいただきますと励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] ピーチャンがかなりの戦闘要因だった! クロナも成長してきましたね◎ 獣魔たちと楽しく冒険ですね(*^^*)
[良い点] 遂にピーチャンの謎が…! 地球のセキセイインコのサイズだったのが、じわじわ大きくなって、ジャンボセキセイを越えるオカメインコのサイズ(尾羽を入れて約30cm)でしょうか。 渡り鳥のツバ…
[良い点] シロさんとヤカン、専用のバックパック姿、絶対に可愛いですよね♡ ネズミの素揚げとは驚きでしたΣ(・□・;) 油揚げが色が似ているなんて……勉強になりました! クロナちゃんもすっかりお年頃で…
2022/04/09 22:38 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ