60. おてんば
昼食をとった後はご存知、温泉タイムだ。実家の方からエレノア母様やエマも遊びにやって来た。
みんなでのんびりと露天風呂を満喫する。――平和だぁ。
すると、 裸ん坊でシロに跨っているエマが何やら下の方を指差して喜んでいる。
そう、この ダンジョン・スパンク の周りにも迷宮都市が完成したのである。
モデルとして、オーレン山脈にある「ダンジョン・ディレク」の町をベースに考えられており、その規模は5000人に及ぶ。
町の規模自体は大きく造られてはいるが、今の人口はまだ1500人といったところだ。
これから、数年かけて徐々に増やしていく予定なのだという。
そして、この温泉施設は町の上方に造られているので、町全体の様子が手に取るように分かるのだ。
今は、門に並んだ15両の商業馬車が町に入ろうと、検問待ちをしているところだ。
聞くと、6日前にアストレアを発った荷馬車隊だという。
通常荷馬車のコンボイは、荷を満載しているため重たく馬に負担がかかる。その分休憩を多く取ることもあってか、2倍の時間を要する。
それが、これほど早く来れる理由は 確りと道の整備を行ったお陰だろう。
そして、もうひとつの理由がダンジョンを結ぶ地脈に沿って道を新しく通した為である。
アストレアとスパンクを結ぶ街道は、通常あり得ないが すべて石畳なのである。
この為、軽く馬車を引くことができ 馬に負担がかからないのだ。
前の状態なら片道10日以上、雨に降られようものなら15日はかかってしまうだろう。
それはそうと、エマはかなり ”お転婆娘” になってしまったようだ。
エレノア母様に、ときどき責められるのだ。――とほほ。
だって、毎回欠かさずに来るんだよ、ダンジョンに。
それは力も入るさ。可愛い妹にケガなんかして欲しくないしな。
その結果がこれだ! 未来の旦那さん……すまん。
おーおー、今度は ウォータースライダー に行ってしまったぞ。――やれやれ。
「なあ、カルロ。おれ騎士を目指してみるよ。このまま卒業して田舎帰っても、家を継げる訳でもねーし。それに……」
ジミーは横にピタリと付いているカミラの方を見る。
……あ~ぁ、完全に ”のぼせている目” だ。 お風呂にではない。
隣りのカミラにだ。――やめておけ!
僕は口から出そうになる言葉を必死に噛み殺す。
あと、どれだけ残っているのか分かっているのか?
この美乳はお前を置いて帰っちゃうぞ! 次の獲物を探しに……。
今は、消化試合であると何故気付かないんだ~。
「お、おう、がんばれよ! ケツには十分気を付けろ」
「大丈夫さ、後ろからの備えも万全だからな!」
「…………」 ――わかっちゃいない。
「カルロく~ん、見て! プルップルよプルップル、もう泥パック最高よねぇ」
と、ジャングルブースより帰って来たのは、艶々に肌を輝かせたロイド様と家のママンである。
いや、確かに見せびらかしたい気持ちはわかるよ。わかるけど、真っ裸はやめて。バスタオル積んであったでしょう?
そう、そうなると後ろに控えるお付きも、……バスタオルすら出来ませんよね~。
だから、アーヤも睨まないの。比べてないから大丈夫だからね。
家のメイド、狼人族のアーヤ18歳。いや、まだ分からないでしょう。これから育つ可能性も……たぶんある。はずだお。(苦)
一方で、妹のマーヤ16歳の方はメガ並の進化をとげている。――神様も罪作りである。
えっ、僕。んん……人並みにある とだけ。(なにが?)考えるな 考えるな である。
意外と苦労しているもん とだけ。(汗)
だからクロナさん、あんまりくっついて来るんじゃありません!
それからは、10日ごとに呼び出しを受けながら学園生活を続けていた。
そうして、夏休み間近のこの日。王宮に来るようにとの連絡が入って来たのだ。
僕はいつものように、レンタル馬車を借り王宮に参内する。
各門の通過には相変わらず時間はかかるが、顔を覚えられたのか 不必要に、長く留め置きされることは無くなった。
門を潜ってからは、王宮メイド達の導きによりすみやかに応接室に通された。
部屋の中に入ってみると、左側の上座には王太子のアースレット様と その向う側に宰相のモルガン様。
そして、右側の下座には白いローブを羽織りフードを目深くかぶった人物がひとり座っていた。
「では、私はこれにて」
宰相のモルガン様が席を立たれる。こちらに来られたので、僕は頭を下げつつすれ違った。
「おお、よく来たねカルロ卿。挨拶はいいから、そちらに座ってくれるかい」
「はい、わかりました。失礼します」
僕が挨拶を終え、座ったのを確認してからアースレット様は話を始めた。
「まず、紹介しておくよ。今回の調査を秘密裏に進めるために協力して頂いている、Aランク冒険者のコリノ氏だ」
「……よろしく」
やはりそうだ。なんとなく雰囲気が似ていると思ったら、本人だった。
「カルロ・アストレアです。こっ、こちらこそよろしくお願いしまふ」
僕はニヤけそうになる顔を必死にこらえ、何とか挨拶を交わすのだった。
嬉し恥ずかし温泉回です。まあ、軽めですけど無いより良いよね。(*^^)v しかし、エマちゃんお転婆娘になっちゃいましたー。ダンジョン大好きみたいで、お菓子ついて来るしカルロには会えるしで頑張った結果です。誰もわるくなーい! それから、街道は夜にダンジョンがセルフクリーニングしており、つねに真っ新。馬糞なんか落ちてません。
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