58. 問題です。
僕たちは王太子夫妻と共に東の庭園にあるガゼボで昼食をいただいていた。
ん、シロ?
もちろん横で出してもらった肉の塊を旨そうに食べている。
それから、クロナも一緒に並んで昼食を食べているよ。だって国王様の姪だからね。
アースレット様にとっても従妹になるから。ほとんど身内扱いのようだ。
そうして、マヨネーズに夢中のところ悪いと思ったのだが、お二人に話を振ってみることにした。
「お二人は、学園においての魔法教育についてはどう思われていますか?」
「うん、これは凄いよ。野菜にかけただけでこの美味しさ、これは肉とかハムにも合うとみた!」
「…………」
「あなた、一旦そのマヨネーズとやらをテーブルに置きましょう。そして、カルロさまが質問なさってますよ」
「え、ああ、そうだね。カルロ卿も失礼した。すまないが、もう一度質問をたのむよ」
「あなた、カルロさまは学園の魔法教育についてお尋ねでしてよ」
「学園というと、カルロ卿が今行っている貴族学園だよね。何か問題でもあったかい」
「ええ、問題です。なんといいますか、問題になってない所が問題だと言えるでしょうが」
僕は簡単にではあるが、おかしなところを掻い摘んでアースレット様とロイド様へ報告した。
しかし、お二人には僕の報告がうまく伝わっていないようだ。
そう2人共、今のようになっている貴族学園を卒業していたのだ。
「魔力操作のレベルは年と共に増えていき、個人差で頭打ちするんだよ」
「私も、そのように学んだわ。だから、魔力の差はどうにもならないって」
「そうそう、それにひとつの属性にひとつの魔法は当たり前じゃないか。第一、二つ使えても魔力が足りないよ」
「そうよね。魔力の枯渇は死に直結してるから、少しでも減った感覚があるなら使用は控えるのが一般的よ」
…………。
だ、そうである。
これから王国を納めていかなくてはならない2人がだ。
ということは、国王様も同じだと考えて進んだ方がいいよな。
あと、聞いておきたいことは……?
「レベルとかおっしゃっていますが、どうやって調べているのですか?」
「ああ、そんなの魔法省に連絡すれば、すぐにでも測定してくれるよ」
「これらに対応するため、魔法省では鑑定を持っている者を手厚く保護し、教育してくれているんだよ」
「下手に隠すと拘束されたりするのよ。だから、みんな素直に従っているわね」
なるほど、もともと鑑定を持っている者は非常に少ない。それにも増して、法で縛られている形になるのか。
鑑定も初めは、『こんなの使い物になるかー!!』の レベルだし。基本は接触回線だからな。
だから、遠隔鑑定ができる Lv.3 以上となるとおそらく人族では無理だ。
ん、距離? Lv.3 で半径50㎝、Lv.5 で半径3mというところ。
それでシロが持っている Lv.8 は20m以内が解るという まさに神レベルなのである。
そして昼食が終わり、名残惜しそうにしているアースレット様をよそに例の桜餅と緑茶を用意した。
「これ、さっき見たヤツよねー。なんていい香りなの、さっそく頂くわね」
…………!
「ん~~、なに。このつぶつぶモチモチの中にしっとり甘~いこれはなに」
「それは ”あんこ” ですよ。そのまま食べても美味しいですが、こうして中に入れることで真価を発揮します」
「そして、この ”あんこ” 自体も違いがあって、いろんな食べ方 いろんな菓子が存在するのです」
「このお茶も変わってて、赤い物にピッタリね。お口のなかがスッキリするわね」
「そうですね。でも茶葉自体はそう珍しい物ではないのですよ。ただ、処理が違うだけで」
「はじめは、あのケーキにも驚かされたけど、これはこれで違った趣があるわね。あなたと居ると、ほんと飽きないわね」
「喜んでいただけて光栄です。また、度々お持ちしますよ」
「嬉しいこと言ってくれるわねぇ」
「話の途中でわるいが、それじゃハニー行ってくるよ。あっ、見送りはいいよカルロ卿。説明が足りないのなら、ロイドに話しておいてくれないか」
「はい、お心遣い痛み入ります。行ってらっしゃいませ」
「うむ、それじゃ。ゆっくりしていくと良いよ」
席を立ってお辞儀をする僕に、アースレット様は後ろ向きのまま手をあげてガゼボを後にされた。
う~ん、さすが王子様。じつに様になっている。
それから、半刻(1時間)程しっかり説明させてもらい事の重大さを訴えた。
頭の良いロイド様は、僕の訴えを確り把握できたと思う。
「あらあら、にわかには信じ難いのだけど。それが本当だとすると、とんでもないことよねぇ」
「そうね確かに、魔法省の役人や魔法士団、それに宮廷魔法士のほとんどが とある公爵家の息が掛かった所ばかりなのよね」
そうなると、まず確認させてほしいと言われ、今度の休みの日に温泉施設にて落ち合うことに決まった。
そうこうしている内に、僕たちがここに居ることを知ったセーラがクロナをめがけて乱入してきた。
「ほらほら、フィアンセに気を配るのもカルロくんのお仕事なのよ」
と、言われてしまい今日の打ち合わせは終了した。
春先の清々しい風の中、セーラが元気に走り回っている。
その光景を眺めながら、僕はゆったりとアフタヌーンティーを楽しんだ。
マヨラー王子は置いておくとして、長年伝わってきた事をいきなり違うと言ったところで……。間違っている方が多数派。う~ん、これをなしたものは凄いですね。ここで出てきた「魔法省」、そしてどこぞの公爵家。さてさて、どうなる次回。 (∪^ω^)温泉お! そうだったー(汗
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