55. シトリン・ガルーラ
僕は今、冒険者ギルド・バース本部にて冒険者登録とシロの従魔登録を済ませた。
ところが、登録を済ませた直後。このギルドでチーフアドバイザーを務めるコジフさんに呼び止められ、個室でお話をすることになった。
それで話を聞いてみると従魔登録を行ったシロに対するものであったようだ。
そして従魔の種族名が違うとの指摘に対し、見解を訪ねてみると……。
まー、出てくる出てくる。シロちゃんの資料が山のように。
その山のような資料を目の前にして、
……そうか。僕が居なくなった後も、シロはみんなの為に1匹で頑張ってくれていたのだな。
シロを左手で撫でながらそんなことを考えていると、涙がボロボロと溢れだし 話どころではなくなってしまった。
後ろに居た、クロナもこれにはビックリして慌てている。
さらに目の前にいる冒険者ギルドのコジフさんも、
「急にどうしたの、大丈夫?」
と、ハンカチを差し出してくるのであった。
「ハハハッ、こちらのことですみません。お見苦しいところを……」
そして、僕はシロから冒険者ギルド証を受けとると机の上に提示した。
「こ、これは……。デザインは少し違うけど冒険者証のようね。こっちの記述とほぼ同じね」
「時間は大丈夫かしら、今からうちのギルド長と会ってもらうけど」
僕が頷くと、コジフさんはシロのギルド証と関係資料を持って すぐに部屋を出ていった。
そして、5分程待っただろうか。コジフさんが部屋に顔を出し、ついて来るように言われた。
冒険者ギルドの職員ホールを横切り、階段で2階に向かう。
廊下の突き当りの部屋。その部屋の扉をコジフさんが3回ノックした。
「はい、どうぞ。入ってください」
中からは澄んだ女性の声が聞えてくる。
「失礼します、ギルド長。連れてまいりました」
「はーい。よく、いらしてくださいました。カルロ男爵様」
おや、最近はめったに見ることがないエルフさんですよ。
そして、エルフさんは貴族礼を取りながら、
「私はここ冒険者ギルド・バース本部で総括ギルド長をしております シトリン・ガルーラ と申します。以後お見知りおきを」
「え、え、ええー。貴族様? ご子息とかでなく当主様なのですか?」
「そうですよコジフ。こちらの方は先のダンジョン発見に大きく尽力され」
「また、セーラ第4王女殿下のお命を救われた功績により、男爵位を叙された カルロ・アストレア様でいらっしゃいますよ。くれぐれも失礼のなきように」
「こういったことは、公の場を除いては今日限りでお願いしますよ。今から冒険者としてもやっていくのです。やり辛いのはご勘弁を」
「はい。かしこまりました。コジフもいいですね!」
「はい! 心得ました」
「それでは、これよりカルロさんと呼ばせていただきます」
シトリンさんがジッと僕の目を見てきたので、軽く頷いて了承した。
「さっそくですが、このギルド証は本物に間違いございません」
「ただ シロさんの場合、不在期間が長かったため冒険者の資格は失効しております。再取得については、しばらく時間をいただくことになります」
「ですが、カルロさんの従魔としては何も問題ございませんので、従魔証バッチをお付けください」
「そしてこちらが、カルロさんのギルド証になります。ご確認ください」
「え、Dランクですか?」
冒険者のランクは一番下の【F】からはじまり、最上は【S】まで 7段階 に分けられている。
通常の冒険者の場合。スタートは Fランクで、こなした【クエストポイント+ギルドへの貢献度】によりランクアップしていくのだ。
ちなみに、ダンジョン探索の許可も、商隊などの護衛依頼も Dランクより受けることが出来るようになる。
「はい、シロさんがお認めになられている方です。規定がなければ、Cランクからスタートでもいいぐらいです」
「では、これでダンジョンの出入りは問題ないわけですね。助かります」
「はい、トラブルが起こらないよう こちらからもダンジョンがある各支部には連絡を入れておきます」
すこぶる順調に話が進んでいるのは、おそらくシトリンさん自体がシロの実力を把握しているからだろう。
ギルドとしては、シロにバンバン指名依頼を出していきたいところだろうが、指名依頼が出せるのはBランク以上の冒険者からである。
そうして、冒険者ギルドで中途半端に時間を取られてしまい、これからダンジョンという時間でもない。
仕方がないので、少し買い物をして学園に戻ってきた。
最近は僕の部屋にみんなが集まる事も少なくなった。
理由のひとつはレベルの停滞があげられる。
僕やクロナ、そしてエマがぐんぐんレベルアップをして強くなっていくのに対し、祝福組のレベルが停滞しはじめたのだ。
Lv.10を超えるとレベルアップは途端に厳しくなるのだ。
そして、苦労してレベルを上げたとしても、さほどパラメータに変化が見られないとなると……。
そんな感じで1人抜け2人抜け、そして誰も寄り付かなくなった。
温泉施設やスイーツ狩りには来るのだがな……。何んというか寂しいものである。
もうひとつの理由は思春期に入ったからだろう。
これも、仕方のないことだろうな。子供から大人に変わっていくのだ。
しかし、ジミーまで来ないのはどういうことだ。
放課後になると何故か部屋から出てこないのである。
総括ギルド長のシトリン・ガルーラはエルフの女性です。シトリンが名前で、後ろのガルーラは地域や場所を表しています。エルフも妖精種になります。長い時を生きる彼らは現状維持などの魔法が得意です。また、内包する魔力を見ることもできるのです。シロが選んだ相手という理由だけではなかったのです。
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