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52. ジジ様

 先程 呼び出された2人は、僕とロイド様の前でメイド服のまま土下座(どげざ)をしている。


 僕とロイド様はソファーに腰掛けて向かい合っている状態なので、正確には横で土下座をしている形になる。


 ソファーの後ろでは、シロが首を(かし)げている姿が横目に映る。――可愛い。


 頭に乗ってるピーチャンは、シロがいくら頭を振っても微動(びどう)だにしないのだ。


 まるでシロの頭にボンドでくっつけているようで……。いけない、ツボに入りそうだwww


 一方で、ロイド様のお説教は続いている。


 神妙(しんみょう)な顔をして、正座している2人。


 まあ、今回の一件は身内ではなく外の者に見られているのだ。王宮側の面目(めんもく)は丸つぶれである。


 さらに、王妃様たちの温情で同行を許されているにも関わらず勝手なふるまい。


 これで、他の者が同行出来なくなるような事態になれば……。地獄より恐ろしいことが待っているだろう。


 このような、ロイド様の言葉に2人は顔面蒼白(がんめんそうはく)になりガタガタと震えだしていた。






 「どのような事になるのか、2人共これで理解したわよね?」


 ロイド様の問いに、2人は正座をしたまま首だけ カクカク 動かしている。よく見ると口も動いているようだが声が出ていない。


 「宜しい! では2人には今から特別任務(とくべつにんむ)()いてもらいます」


 「休日は除きますが、明日の夕刻よりこちらにいるアストレア男爵(だんしゃく)の元で、ある技術を習得(しゅうとく)してもらいます。場所はここ王宮殿に用意します」


 うんうん。――んんっ!


 「ロイド様、それは……」


 「あら、2人を助けたいという気持ちは(いつわ)りだったのかしら?」


 「いえ、そのようなことは……」


 「でしょう。練習台の人員はこちらで用意しておきますから、明日からお願いね アストレア男爵様」


 「は……い、明日からしっかり指導いたします」


 ということで、明日の夕刻よりマッサージ師養成(ようせい)の仕事が舞い込んできたのである。


 学園の方なら、クロナに全部任せておけばいいのだが、王宮殿となれば奴隷(どれい)であるクロナをひとりで行かせる訳にはいかない。


 僕は王城の庭園、西方(にしかた)にあるガゼボに転移拠点(てんいきょてん)を作る許可をいただき王宮殿を後にした。






 それから10日あまり、僕とクロナは学園と王城を往復する生活を送っていた。


 お仕事の間、シロとピーチャンは王城の庭で自由に遊び回っている。


 しかし数日前、庭に出ていたセーラに見つかってしまい、それからはセーラを乗せて遊んであげているようだった。


 ――まったく気楽なもんだな、おい!


 そして ある日のこと、2人の様子を見に来ていたロイド様がクロナに話しかけたのだ。


 「あなた、黒猫族よね。名前はクロナだったかしら」


 僕も何のことか分からず、横で聞いていたのだがロイド様の言わんとすることが分からない。


 「クロナ。あなたの父親の名はなにかしら?」


 「はい。わたしにはお父さんはいません。お母さんと2人で住んでいましたから」


 「そうなの。では、お母さんのお名前はなにかしら?」


 「はい、お母さんはジジだったと思います」


 「それで、お母様であるジジ様はどちらに?」


 ……どした、ジジ様?


 「はい、3年前に亡くなりました」


 「ちょっといらっしゃい!」


 そう言うと、ロイド様はクロナの手を取り、引っ張って連れて行こうとしていた。






 まぁ、一歩も動いていないわけだが。


 クロナの身体レベルは Lv.15 、パラメーターは冒険者のランクで表すならBランク相当。


 オーク・ジェネラルあたりを連れてくれば、動かすことは可能だろうが。


 見てても面白かったが、このまま放置もできないので、


 「あの、ロイド様? 落ち着いてください。先に訳を……」


 「……こほん、そうよね、ごめんなさい。慌ててしまったわね」


 「そうだわカルロくん。あなたもいらっしゃい」


 そして、連れて来られた部屋は誰かの執務室(しつむしつ)のようであった。


 広々とした空間には大きな執務机と総革張(そうかわば)りの高級ソファーがドドーンと置かれていた。


 僕達はロイド様に(みちび)かれるまま、部屋を横切り ギッシリ詰まった本棚の横に掛けてある絵画(かいが)の前へ連れて来られた。


 「ああ、お母さん? ……これポンタ?」


 それは幅が2mはある大きな絵画で、中央には椅子に座った初老の男性が描かれている。


 注目すべきは、向かって右隣(みぎどなり)の少女だ。


 肩まで伸びた黒髪、清楚(せいそ)に着こなした薄黄色のドレス。椅子に手をかけ寄り添うように立っている猫耳少女。


 楽し気に微笑(ほほえ)んでいるその瞳は奇麗な ”翠眼(すいがん)” であった。






 「ここは先代様が使われていた執務部屋です。ご覧の絵は中央が先代様、そして右隣りにいらっしゃる方が先代様の末娘にあたるジジ様です。今日、お声をお掛けしたのは、実は国王様の指示があったからなのです。温泉施設(おんせんしせつ)でのクロナ様を見られた国王様がもしやとおっしゃられて……。それでいろいろ調査していたのです」


 なるほどね、クロナのお母さんは国王様の妹だったわけだ。王領の西方の名もない村で暮らしていたと言っていたよな。


 いろいろ込み入った事情が有りそうだが、そんなものは知らんね。


 まあ、どんな理由があるにせよクロナの手は放さない。


 クロナは絶対に僕が守る!



土下座メイドはコネ15歳、チタ16歳2人共に客室などのハウスキーパーですね。クロナ、バレてるじゃないですか~。目の色変えてたのに……。黒猫族は珍しかったんだね。ということは、国王様の姪ですよね。王族になるのか? 降嫁してれば違うけど……。う~ん!



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― 新着の感想 ―
[良い点] クロナの過去が明らかに! これからどんな未来が待っているのだろうか(#^ー^#)
[良い点] 王宮メイドより、マッサージ専属要員のほうが のんびりできそうですし、良かった良かった。 [気になる点] ヴァルサン王の姪ということは、アースレット王太子の従姉妹で、庶子とはいえ王族のお姫様…
[良い点] まさかクロナちゃんが……びっくりですΣ(・□・;) 込み入った事情が気になりますが、また後日ですかね〜。 カルロくんの意思の強さにキュンとなりました( *´艸`) クロナちゃんの手をずっと…
2022/03/30 20:09 退会済み
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