47. 嘘だよ
ダンジョン・サラ 10階層のフロアボスであるゴブリンキングを見事討ち果たし、僕らはご褒美のスイーツを抱え温泉施設に帰ってきた。
昼食までには、少し時間があったため一汗流そうと内湯を利用していた。
その時である。セーラを連れた国王様と湯殿にて鉢合わせしてしまった。
「やあ、カルロくん。しばらくだったね」
と、アースレット様も一緒に来られている。
「はい、アースレット様。今日は皆さんでお越しになったのですか?」
「ああ、ロイド達かい? 後で合流すると思うよ。一緒に来ると……ねえ」
「はは、そうですね。あの状態ではなかなかに……ですね」
「だろう。わかってくれて嬉しいよ」
そう、いくらここが広かろうと、女性に50人から来られてはな。
あの中に突入しようとは、なかなかに思わないだろう。だって、なんだか品定めをされている気分にさせられるのだ。
とても伸び伸びにとはいかないだろうね。
「今日は、何処か行っておったのか?」
「は、はい。ダンジョン・サラ の方に探索に行っておりました」
「ほう、ダンジョン・サラ とな。あそこは、また変わったものが出てくるとか聞いておったが」
「そうです。スイーツ・ダンジョン と呼ばれていて、低階層でも菓子などが手にはいります」
すると、国王様の後がわを僕に手を合わせて去っていくジミーの姿が横目に移った。
まあ、カミラさんに聞いたのだろう。流石に王族を相手するには子供では無理があるしな。
「して、カルロ殿はどのあたりを攻略しておるのじゃ? 差し支えなければで良いのじゃが」
「今日はみんなで10階層を攻略してきました」
「おお、それは素晴らしい……ん、誰ぞ仲間がいるのか?」
「はぁ、仲間というかクラスメイトと言うか……」
「なんと! 10階層を望めるものがカルロ殿の年で他におられるのかっ」
「はい。今日はみんな居ますので、後にお会い頂けるなら紹介させて頂きますが」
「まことか? そのような者がおるのなら、いい機会じゃ会っておくか。のう、アースレットよ」
「はい、父上。私もぜひ会いとうございます」
ありゃりゃ、さっき逃げていったジミーに対する意趣返しのつもりが少々事が大きくなってしまったかな。
それで、僕達は昼食があるからと中座することにしたのだが、国王達は露天風呂をめざして表に出ていかれた。
僕達は休憩室に集まり昼食をとっていた。
「なーカルロ、マジなのか。マジで国王が来ているのか?」
「おう そうだよ、マジだ。そして家のエマと今日来ている第4王女のセーラ様はお友達だ」
「それで、今日はどうするんだ。学園に帰るんだろ。なっ、なっ」
「ジミー お前さっき、碌に挨拶もしないで出ていっただろう。国王様は気づいていたぞ、『あやつは誰じゃ』っていってたぞ」
「ええ、……マジか。それヤバヤバなんじゃ……」
「おう、だから確り言っといたから、あれはジミー・ヘンドリーセンですって」
「な、なんで。なんで言うんだよ~~~」
「嘘だよ、言ってないよ。大丈夫だから」
「ほんとか! はあ、助かった~~~」
「でも、あれはダメだぞ。分かってて逃げただろ。廊下に居なかったか騎士が?」
「おう、しばらく止められていくつか質問された後、一人の騎士が中に確認しに行ってたな」
「だろっ。後日バレるからな、それがイヤなら後でしっかり挨拶だぞ」
「だ――――! マジか。おれ貴族礼なんて出来ないぞ。どうすんだよ~」
そのあと、ガトーショコラを切り分けたが手を付けたのはアンだけであった。
あとの分は、後日渡してあげようとインベントリーへ収納した。
「カルロ兄さま、エマはセーラちゃんと遊びたいのです。まだ、行けないのですか」
「そうだな。じゃあ、一緒にいこうか」
「ほらっジミー、せっかく午後からオフになったんだから思いっきり遊ぼう」
「あ゛ああ、そうだな行くか! シロとスライダーで勝負だー」
「わたしたちは、お茶をもうひとつ頂いたらいくわ」
「そうか? うん、わかった。先に行ってる……」
「なるべく、早く来たほうが良いと思うぞ。じゃなっ」
「え゛、どういう意味よ。待ちなさいよー」
僕とジミーは被害にあう前に、そうそうに休憩室をあとにした。
おお、もう何名かうろつきだしたな。先遣隊のようだ。
さてさて、今日はどのくらい来られるのでしょうね~。
僕はエマに手を引かれて、カメさん滑り台のほうにやってきた。
そこにはすでに、先客がいてカメの甲羅から楽しそうに滑っている。
エマは僕の手を離すと、スタスタと速足でセーラの元に向かっていった。
そして、ジミーはピーチャンを頭に乗せたシロと共にウォータースライダーのほうへ消えていった。
国王様はカメの下にいて、滑ってくるセーラたちのアシストで忙しそうだ。
そう思いながら、少し離れたところから見守っていると、
「やあ、カルロくん。今大丈夫かい?」
アースレット様だ。白いバスローブを腰巻にまいて、上半身は裸である。
「はい、問題ありませんが何かございましたか?」
「うん、あることはあるんだけどねー。ちょっとそこに腰掛けて話はできるかい」
アースレット様が指差している所は、各ブースを仕切っている岩で、パーティション代わりに置いているものだ。
触れてもケガしないよう、表面を削っているため椅子としても使えるものである。
またまたヴァルサン国王の登場です。もはや、王室の保養所のようですね。しかし国王が何度もというのは……。どうなのでしょうか。そして、カルロを呼び止めたアースレット様の話とはなにか? 次号をお楽しみに!
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