3. 農家の朝は早い(オイ!
僕はアース(地球)のハマショーさんが歌う、お金の歌を鼻歌よろしく口ずさみながら、なだらかな下り坂を町に向かっておりていく。
この町ときたら、まさにそんな感じなのだ。
今日は用事があって、シロを連れて町までおりて来た。
最近は市場調査のため、ちょくちょく町へ出掛けることも多い。
今日の目的は冒険者ギルドの ……その出張所。
建物も、ごく普通の民家だな。
ドアだけが辛うじてウエスタン風になっているのだが、なかなかにちゃっちいのだ。
中に入っても、ガランとした空間にクエストボードと奥に商店のようなカウンターが有るだけだ。
もちろん誰も居ない。
僕はカウンターに置かれた木づちで、吊るされた木製板の鳴子を鳴らす。
すると、「はーい!」 の声と共にギルドのおばちゃんが、手ぬぐいで手を拭きながら奥から出てきてくれた。
「これはカルロ様。ご用向きは……、魔石の買い取りですか?」
「うん、そう。魔石と今日は薬草もお願い」 と、小魔石を7つ、ヒール草を60、マジック草を30 カウンターに提出した。
この国の通貨の単位は ”バース” で1バースで約10円の感覚だな。
・クルーガー王国貨幣制度 単位バース
白金貨 1,000,000 バース
クルーガー金貨 100,000 バース
金貨 10,000 バース
大銀貨 1,000 バース
銀貨 100 バース
大銅貨 10 バース
銅貨 1 バース (1バース:10円ぐらい)
小魔石が1個 5バース。
ただし、野に居る魔獣から魔石が出る確率は、およそ1/10ぐらいであり、ほとんどの魔石はダンジョン産という事になる。
次は薬草。
冒険者ギルドで買い取ってもらえる物はヒール草とマジック草だ。
正式名称は別にあるようだが、便宜上ギルドではこう呼ばれている。
ヒール草が1本3バース、マジック草が1本5バースとなっている。
ギルドに持ち込む際はどちらも10本が1単位となっている。
であるから、魔石が350、ヒール草が180、マジック草が150で、トータルが680バース(6,800円)。
銀貨6枚、大銅貨8枚という事になるのだ。
ちなみに、黒パン3バース、ライ麦パン5バースで、人の顔ぐらいの大きさだな。
串焼き20~30バースで肉(うさぎ、鹿、オーク他)によって値段が違う。
エール1杯10バース(100円) ワイン1杯30バースで、エールもワインもジョッキで出てくる。
エールのアルコール分はせいぜい3%ぐらい。ワインも赤ワインのみで渋皮混じり、おそらく水で薄めてあるな。
どのみち、量を飲まないと酔えないだろう。
あと、宿屋がこの辺り(田舎です)で一泊二食付きが300バース(3,000円)といったところか。
そして、僕の装備だが。
下が革パンに確りサイズを合わせたショートブーツ。
上は家でいつも着ている、バフッとしたチェニックシャツにワイバーン革のローブを羽織っている。
外はもう初夏にあたり暑いから嫌だと主張したのだが、シロがダメだと一歩も引いてくれないのだ。
やれやれ。
腰には、こちらの世界に来た時に、女神さまから頂いたミスリルのシースナイフを差している。
さて串焼きでも買って、食べながら屋敷に戻ろうかな。
シロを連れてメイン通りを歩いていた。すると、
「親分! 何してるんですか?」 と後ろの方から声を掛けられた。
僕が振り返ると、そこには町に住むワルガキのジョルジュが、弟のポールを連れて走ってきていた。
このあいだ、町はずれの小川にて、弟のポールが溺れかけている所に、僕が偶然出くわし助けてあげたのだ。
それは良かったのだが、
それ以来こんな調子で懐かれてしまっている。
「おう。さっきギルドに寄って、今から屋敷に帰るところだな」
「ええ~。もう帰っちゃうんですかー」
「帰っちゃうんですかー」
「少しだけ、遊びましょうよ~」
「遊びましょうよ~」
「ダメだ ダメだ。今から家に帰ってエマちゃんと遊ぶ約束があるんだよ」
「え~そんな~。じゃあ、親分の家について行くっす」
「行くっす」
……ん~、こいつらダメと言ってもついて来るんだろうな。
それなら、エマちゃんの子守りを手伝ってもらおうかな。
「おまえら、いつまで遊んでいられるんだ~?」
「えっと、夕食の前に水汲みがあるんで。それまでに帰れば問題ないっす」
「そうかー。でも、どこに行くのかしっかり伝えて来い。待っててやるから」
そう言うとワルガキ兄弟はガンダでスッ飛んで行った。
僕はその間、シロと串焼き屋に寄り串焼きを4本頼んで、ゆっくり待つ事にしたのだ。
ぺしぺし。『いく、さんぽ、おきる、うれしい、はやく、おそと』
うっ、ううん。朝か? このように、朝の散歩も復活していた。
僕はベッドから起き。身なりを整えて、まだ暗い階段を1階に下りていく。
すると、
「おう、おはようカルロ。今日も散歩か?」
「はい! おはようございます。お父様」
「気をつけて行くんだぞー。シロも頼むな」
そう、アルバートお父様はもう、起きて準備しているのだ。
農家の朝は早いのだ! これで貴族と呼べるのだろうか……。
まあ、ド田舎貴族は こんなものなんだろう。
散歩が終わると、庭でヒノキの棒を片手に剣の稽古と身体強化の訓練をする。
そして朝仕事を終えたお父様や兄様たちと朝食だ。
最近は肉に加えて胡椒を使うようになったので、また一段と食事が楽しくなった。
お金はあるから、出せば楽にはなるだろうけど。
なにか、違うような……。
少しづつ、少しづつ。(さきっぽの話ではありません)
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