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45. ゴブリン・キング

 さて、いよいよ10階層のフロアボスに挑戦となる。


 先発隊は真剣な面持(おももち)ちで、デカい鉄の扉(てつのとびら)の前に進んでいく。


 ――ゴゴゴゴゴッ!!


 鉄の扉が観音開(かんのんびら)きに奥へ開いていく。


 「エマ、がんばるんだぞ。シロ、クロナ頼むぞ」


 「はい、カルロ兄さま。エマがんばります!」


 と言って、後ろをふり向き手を振って答えてくれた。


 そうしてシロは、エマを乗せたまま軽やかに中へ進んでいく。


 挑戦者を迎え入れたあと、開いていた鉄の扉は またゆっくりと閉まっていった。


 ――戦闘開始である。






 あれから、どのくらい時間が経過しただろうか? 感覚的(かんかくてき)には5分かそんなものだろう。


 僕らがいる前にある鉄の扉が、音を立てて開いていくではないか。


 おいおい、マジかよ……。


 扉が開いたのであれば、攻略は完了したということだよな。


 でも、ボスを倒したのはシロではないはず。


 これは裏話(うらばなし)になるのだが、シロは以前(数百年前)にここのボスを倒しているのだ。


 では、なぜ入れるのか? 「管理者」だからである。


 管理者であれば、ダンジョンの何処(どこえ)へでも出入りが出来てしまうのだ。そう、”ダンジョン・リビング” へもだ。


 ダンジョン・リビングも気になるところであるだろうが、説明はまた次回にさせてもらう。


 つまり、シロなら戦闘中のボス部屋であっても自由に入れるわけだ。


 だが、自らモンスターを倒してはいけない。


 倒すことはもちろん可能であるが、そうなるとボス戦自体が無効となるのだ。


 そこで獲得(かくとく)した魔石も消えてしまい、奥の出口も開くことはない。


 一度外に出てから、仕切り直しとなってしまうのだ。


 以上の点からして、ここのボスを倒したのはシロ以外の誰かということになるのだ。






 まあ、合流したら どのように戦ったのか聞いてみるかな。


 と、いうことで次は僕らの番である。後発隊の僕、ジミー、メイドのカミラ、アン、ダイアナの5名は、横並びで開かれた入口から中に入っていく。


 後ろで大きな音を立てながら、入口の扉が閉ざされた。


 これより戦闘開始である。


 十字槍(じゅうじやり)を所持し仁王立(におうだ)ちをしている ゴブリン・キング 。その2m超す大きな体躯(やいく)はなかなかの迫力である。


 その ゴブリン・キング を守るように扇状(せんじょう)に展開しているゴブリンライダーが10騎。


 一斉(いっせい)に駆け出し、こちらに襲い掛(おそいか)かってくる。


 まず、僕とダイアナが前に出て魔法で迎撃(げいげき)していく。


 ダイアナの適性(てきせい)は風。


 ”かまいたち” のような風の(やいば)を飛ばす、「エアカッター」を連続で発動させて左方向からのゴブリンライダー2騎を切り刻ざむ。


 僕は雷魔法の「スタン」を使い、向かってくる敵をつぎつぎ麻痺(まひ)させていく。


 さらに、2騎のゴブリンライダーが攻撃魔法を掻い潜(かいくぐ)りこちらに切り込んできた。


 しかし、先頭のウルフに乗っていたゴブリンがズルりと力なく崩れ落(くずれお)ちた。






 仰向(あおむ)けに倒れたゴブリンの胸には1本の棒手裏剣(ぼうしゅりけん)が刺さっていた。


 ――カミラである。


 投擲(とうてき)を行なった右手には、すでにクナイが握られており接近戦に(そな)えている。


 そして、もう1騎のゴブリンライダーには、アンが対応しているようだ。


 刃渡(はわた)り60㎝と短めのバスターソードを両手に持ち、ススっと敵の正面へ躍り(おど)出た。


 迫りくるブラックウルフに対し、一旦右へフェイントを入れたのち、素早く左に切り返し後ろ脚を跳ね飛(はねと)ばした。


 ブラックウルフはゴブリンを放りだしながら転倒し、そこで短槍(たんそう)を構えたジミーがすかさず止め(とどめ)を刺していく。


 おお、なかなかに連携(れんけい)が取れているではないか。


 感心しながらも、こちらも此方(こちら)麻痺(まひ)した敵に止めを差してまわった。


 さて、最後に残ったのはフロアボスである ”ゴブリンキング” だけとなった。


 このフロアの奥に陣取(じんどり)り、馬鹿の一つ覚えのように 十字槍をぶんぶん頭上で回している。






 「おれが行く。危なくなったら援護(えんご)を頼むな」


 ――ジミーである。


 この1年で自信がついたのだろう。――言うようになった。


 僕を除けば、この中で一番レベルが高いし。さらに、実用的な攻撃魔法も使えるようになっているのだ。


 まったく止める理由がない。単独決戦(たんどくけっせん)は良い勉強になるだろう。


 なんて、思っていたのだが(ふた)を開けてみれば、 ほぼ圧勝(あっしょう)の状態で 少し拍子抜(ひょうしぬ)けしてしまった。


 まず、十字槍を正眼(せいがん)に構えているゴブリンキングに対して、ジミーも短槍を持った右手を前に半身の構(はんみのかま)えだ。


 相対距離(そうたいきょり)7m、じりじりと間合いを詰めてくるジミーに対し、業を煮(ごうをに)やしたのかゴブリンキングが飛び出し槍で突いてきた。


 しかし、ジミーのほうは(あわ)てることもなく一歩引きながら魔法を発動。


 槍が(くう)を突いたと同時にストーンバレットが炸裂(さくれつ)した。


 魔法をまともに受けたゴブリンキングは(ひる)んでしまい棒立ちとなった。


 この一瞬の(すき)をつき、ジミーは前へ大きく踏み込んで槍右手突(やりみぎてづ)きを(はな)った。


 左の送り足から、腰、肩、腕、それから短槍に(いた)るまでが真っ直ぐ(まっすぐ)一直線に伸び、ゴブリンキングの(のど)(つらぬ)いていたのだ。


 それは、綺麗(きれい)なフィニッシュスタイルであった。

 

 その場で崩れ落(くずれお)ちる ゴブリンキング。警戒(けいかい)しながら残身(ざんしん)をとっているジミー。


 次の瞬間(しゅんかん)(むくろ)は ――ボフッと音をたてて魔石へ変わった。






 「おおー、やったなジミー。かっこいいぞ!」


 みんなで、()しみない拍手(はくしゅ)を送った。


  ゴブリンキングに対し、見事な単独勝利であったと思う。


 ジミーのヤツ、本当に強くなったものだ。


 (きた)えた(がわ)からすれば、こんなに嬉しいことはない。




エマちゃんもクロナも頑張ったんだよ。でも、ジミー回になってしまった。これ誰得……。ああ、カミラさんのひとり勝ちですな~。今夜は忙しく……(コラ! まったく……。そうそう、クロナの絵をとても可愛く「ひだまりのねこ様」が描いてくれました。ご覧になりたい方は、「僕とシロ」10. わたしはクロナ(挿絵)にお回りください。


ひだまりのねこ様:クロナ掲載ページ

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1964264/blogkey/2959999/



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― 新着の感想 ―
[良い点] みんな頑張りましたね〜! ジミーくん、成長してて偉いっ。゜(゜´ω`゜)゜。 カミラさんは忙しいのですね( *´艸`)笑 ひだまりのねこさまのクロナちゃん、とっても可愛かったです♡ ポンタ…
2022/03/24 19:04 退会済み
管理
[良い点] フロアボスのゴブリンキングに勝てましたね◎ さて先発組は誰がどんなふうに戦ったのでしょうか(*^^*)
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