42. ダンジョン・サラ
そして、やって来ました最初の休日。最初に尋ねてきたのはやはりこの人、
「おはよう。みんなはまだなの、遅いわねーなにやってるのかしら?」
無類のスイーツ好き。赤目のアンである。
「おう、おはようさん。いやいやまだ朝食の時間だよね」
「そんなことは分かってるわよ。さあ早く出しなさい時間がないのよ!」
「…………」
僕はしぶしぶ、朝食になりそうなワッフルやチョコシリアルとミルクティーを出してあげた。
すると、朝食の片付けやダンジョン出発の準備を終わらせたクロナが寄って来たので、一緒にテーブルに座らせアンと同じものを出してあげた。
「今日、ダイアナはどうしたんだ? 腹でも痛いのか」
「違うわよ。あの子は今日ね、王都に親が来るから部屋で待機してるんだって」
「へー、そうなんだ。アンとダイアナは「ミークス領」だよな。王都ならすぐだよな」
「そうなのよ、近いものだからお茶会なんかも たまに来てるわね」
「ミークスといえば商人の町だから、情報収集も兼ねてじゃないのか」
「そーだと思う? 結構遊びほうけて、愛人いっぱい囲ってるに決まってるわ」
おいおい、決まってるのかよ。娘がこれ程いうからには普段からふらふらしてるんだろうな。
その時、ドアがノックされた。
クロナが口を拭って立とうとしてるところを、手をかざすことで制し 僕が対応した。
「よおカルロ、おはよう。準備してきたぞ」
「そうか、じゃあ中でお茶でも飲んで待っててくれ。すぐ準備するから」
「ほーい。て、ことだからカミラ入らせてもらおう」
「おはようございます、カルロ様。クロナさんはお食事でしたか、ではわたくしがお茶を入れて差し上げます」
「うん、そうかい。では頼むよカミラ」
「はい、お任せください」
そうして、しっかり準備を整えた僕たちは、久方ぶりにダンジョン・サラ へ転移していった。
(カルロとシロ以外は初めてです)
わあー、久しぶりだなー。と言ったところで、どこのダンジョンでも内部はほとんど変わらない。
だからダンジョンに直接 転移してくると、実際にここが何処なのか全く分からないのだ。
それでもシロには、難なく判別できるという。
ダンジョンの中において灯りは必要ないのだが、家ほど明るくはない。
見通せる距離は20mもないぐらいだ。
だから、ここでもシロなのだ。
シロなら視覚のみならず、聴覚や臭覚でモンスターを発見することができる。
それに、隠密行動がとれるようなモンスターに対しても気配を察知できるのだ。
今更ながら凄いよシロちゃん。みんな頼りにしてるんだからね。
本日の攻略はここ3階層からのスタートとなる。
初めて来たダンジョンであるのに、何故そこからと思うだろうが、1~2階層は初心者階層でめちゃくちゃ混んでるらしいのだ。
ん、どこからの情報か? もちろん、このダンジョンからである。
なぜか? シロがこのダンジョンの「管理者権限」を保有しているからである。
どうしてか? それはシロが持っている特殊スキルに理由があるからだ。
聖獣フェンリルであるシロは沢山のスキルを保有している。
その中に「時空間魔法(U)」というユニークスキルがある。
このスキルを持っていればダンジョンの管理者権限を取得することが可能になるのだ。
元々は僕が持っていたもので、自分が亡くなる前に女神さまにお願いしてシロに譲り渡したものだ。
このスキル自体が女神さまに授けていただくより他なく、通常では決して手にすることはできない。
ざっと説明してみたが、早い話 この王国にある4つのダンジョンは すべて、シロの管理下にあるということである。
「と、言うことで行こうか」
「はぁ? どういうことだよ。まだ、何も聞いてねーぞ」
「ダメだよ、ジミー。こういう時は空気を読まなきゃ」
「ん、待てよ。見えない空気をどーやって読むんだよ!」
「うんうん、そうだけど。そうじゃないんだなー」
「だから、なんなんだ。何処だよここ」
「ここか? ダンジョン・サラ の3階層だな」
「じゃあ、スパンク と強さは一緒ぐらいか?」
「ああ、大体一緒だ。出るモンスターも同じだな」
「そっか、じゃあカミラと行ってくる。どうせ今日は様子見だろ」
「おう、分った。無茶するなよ。人は避けろ。階段には近づくな。腹へったらこれ食え。トイレの時は…………」
「だぁ――――! わかったよ。お前はオカンか?」
と言って、ジミーはカミラとテンを連れて走り去っていった。
2人の実力からいって、遅れを取ることはまずないだろうが。
僕たちも ダンジョン・サラ 3階層の攻略を開始した。
……といっても、3階層。
出てくるモンスターも、スライム、コボルトのみである。片手間でポイポイ片付けていると、何か変わった物がドロップした。
ん、なんだ? 拾い上げてみると、細長いスティック状で中は透明なブルーの液体?
一瞬、ポーションかと思ったが容器が違う。
だが、どこかで見たような気もするのだ……。
ああっ! これってもしかして、アレかぁ?
僕はビニールでコーティングされたものを噛み破って、そのブルーの物を口に入れてみた。
……やはり、「蒟蒻ゼリー」である。ソーダ味のチューブ入りゼリー。
うんうん、懐かしい味だ。
スライムのレアドロップが蒟蒻ゼリーか。なかなか洒落が利いてて良い感じじゃないか。
再び、ピシピシとスライムをやっつけていると、またちょっと違う物がドロップしたのである。
おお、これも…………。
ダンジョンを統べるシロすげー。聖獣というか、神に近くね。シロ神だー。怒らせたらダンジョンにポイされるのか……。怖すぎる。そして、スライムで蒟蒻ゼリー。じゃあ次はアレだよね、あのプニプニのやつ。なんでダンジョンが知っているのか? 昔、こちらに渡っては商売してる婆さんいたな~。何と交換したかは知らないけど……。
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