37. スッポンポン
おおっ、アンリエッタも来たようだな。こちらに向け手を振っている。
手を振るのはいいが、真っ裸なので正直 目のやり場に困るのだ。
まあ、今始まったことではないのだが。
ここのダンジョンで鍛え始めてからこっち、この温泉に入浴して帰ることが習慣になっている。
いつもは明け方で暗いものだから、よくスッポンポンでうろちょろしているのだ。
それで慣れてしまったのだな。
それはいいのだが……。
ほら見ろ、メイド達までマネしてスッポンポンじゃないか!
僕も男の子だから興味はあるし、嬉しいのだが……。
下は…………セ―フ! まだ反応しないみたいだ。ふぅ――――。
しかし、いつから ”エネルギー充填” を開始するのか分からないのだ。
少年の身体を舐めちゃいけない。波動砲が炸裂する日はそう遠くないのかもしれない……。
エマちゃんたちが、露天風呂にも飽きてきたようなので、一番小さなすべり台へ遊びにきた。
メイドも2人ついて来てくれたが、まず手本として僕がすべり台の下で待機する。
最初はセーラのようだ。
クロナが後ろからセーラのお腹に手をまわし一緒にすべってくる。
着水と同時に手を貸すが特に問題ないようだ。
次はエマちゃんだ。
いつの間にかクロナが後ろにいて、やさしくサポートしている。
エマちゃんもキャッキャ言ってすべってくる。――とても楽しそうだ。
そして次は……。
おっ、クロナ単独かぁ。
両手をバンザイしながら笑顔ですべってきた。
着水と同時に手を貸そうと前に出たのだが、クロナは両手で僕にしがみついてきた。
おおう、こわかったのか? よしよし。
これを見ていた、セーラもエマちゃんもすべりおわると僕に抱きついてくるようになった。
なにこれ、みんな可愛いんですけど~。
みんな、撫で撫でされるのが気にいってしまったようだ。
するとシロまで、伏せ(スフィンクス)の状態ですべってきて、僕を押したおし顔をペロペロ。
ハハハッ なんですかー、このご褒美! 嬉し過ぎる――。
僕たちは今、施設の休憩スペースに来ている。
畳あがりにタオルケットを敷き、その上でセーラとエマちゃんはスヤスヤ気持ち良さそうに眠っている。
遊び疲れての ”お昼寝タイム” だ。
外は真夏日だが、室内はダンジョン・スパンクが適温に保ってくれており実に快適なのだ。
そして、この部屋にはもうひとりお客様がいる。
隅っこのほうで少し ”いじけ気味” のアースレット王子だ。
どうやら、ロイド様にこってり絞られたようである……乙。
……ああっそうだ、ここは元気が出るように甘いものでも出してあげよう。
特製の「シャビシャビミルクセーキ」だ!
一気に飲むと頭を抱えてうずくまることになる。
だから、小波を乗り越えながら、大波が来るまえに小休止だよ。
うんうん、アースレット王子の顔もだんだん明るくなってきたようだ。
僕の横にピッタリとくっついているクロナにも同じ物を渡し、3人で美味しくいただいた。
僕らだけでは申し訳ないので。
バニラアイスとストロベリーアイスの入ったクーラーボックスを僕とクロナで首からかけ、麦わら帽子をかぶって外に出た。
そして左手にはワッフル・コーン。
右手にはアイスクリームディッシャーを持ち、ポコン、ポコンとアイスを乗っけながら、露天風呂周辺を廻っていく。
「私たちがやります。おやめください」
途中で何度も声を掛けられたが、
「今日はやらせてよ。なにか、こういうの楽しいんだ!」
と、振り切ってまわった。
実際、みんなの喜ぶ顔が見られてとても嬉しかったし。目の保養にもなった。
セーラとエマちゃんはお付きメイドに任せてきたし。起きたら、また元気いっぱい遊ぶことだろう。
そうして夕刻、イヤイヤイヤと泣きじゃくっているエマちゃんを、
「また、すぐ会えるから。もうすぐ夏休みだから……」
と、なぐさめ送り出した後、僕らも王城へ引き上げてきた。
「カルロ、今日はご苦労様。楽しかったですよ。またお願いね」
エミリー様にもたいへん喜んでいただけたようだ。
笑顔で挨拶されたのち、セーラを連れて部屋をあとにされた。
「クロナもお疲れさん。いろいろやってくれて助かったよ」
「はい。カルロ様にお仕えしているのですから、当然のことです」
「うんうん、いつも凄く助かっているよ。ご褒美あげたいぐらいだ」
「あっ、そうだ。ご褒美をあげよう! 何かほしい物とかないの~。それか、やってほしい事でもいいよ」
「ええ、急に言われても~。……困ってしまいます~」
「そうだよね。ゆっくり考えてね、いつでもいいから」
「は、はい!」
それから、5日。
いろいろな注意事項やダンジョン・スパンクの周りに建設する迷宮都市のあり方など、アースレット王子と共に協議していった。
まだ打ち合わせが必要なことや、時期が来ないと協議できないものもある。
それはまた、”必要に応じ学園へ使いを出す” ということで、今回の初会合は幕を下ろした。
その間、ディレクの町に行く転移陣の修復をはじめ、ダンジョンスパンクにある温泉施設、アストレアの町を結ぶ転移陣の増設などもやらされてしまった。
そうして、学園に戻ろうとしたのだが、学園はすでに夏休みに突入しているらしい。
僕は、王城にて世話になった人達に ”いとまの挨拶” をおこなっていった。(セーラにはガン泣きされたが)
なお、この王宮殿内での転移魔法の行使は禁止されてしまった。
まあ、当然の措置だわな。
それゆえ、外庭にあるガゼボをお借りして転移を行なうことになった。
カルロ君まだセーフの年齢でございましたか。……ほっ。これはこれで需要がありそうな……。いえ、なんでもございません。いよいよアンリエッタ王女を送っていくようです。そこで予期せぬ言葉に……。懐かしのビックアイテムの登場です。「控えおろーう!」 これだけで分かって頂けるはず。次回をお楽しみに。
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