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31. 気まずい

 そして、出ました玉手箱♪……ではなく、「銀の宝箱」何が出ますことやら。


 まあ、大方は決まっているんだけどね。


 このワクドキのアンリエッタ王女に、わざわざ水を差すこともないだろう。


 「じゃあシロ、おねがい」


 なぜ、シロに? と思うだろうが、宝箱には結構トラップがあったりするのだ。


 まあ、そんなものはダンジョンに聞けば分るのだが、なんとなくシロの役目になっているのだ。


 すると、シロがトトトッと宝箱に寄っていき、右前足でパカッと開けてくれた。


 みんなで近付いていき中身を確認する。


 銀の宝箱の中には3点のアイテムが入っていた。


 鑑定しながら取り出していくと、中級ヒールポーションが1本、シルバー・ブレスレット(知力+5)が1個、20㎝角の麻袋(あさぶくろ)(マジックバッグ小小)とでた。


 タハー、何百年たっていても変わんないのね~。


 まあ、文化もさほど発展してる訳ではないから、これで良いのかもね。


 中身は鑑定結果を伝えながら、すべてアンリエッタに渡した。


 ええっ、いいの、いいの、と首を振って見回す姿がとても可愛かったが、これは彼女が一人で勝ち取ったものだからな。






 これは昨晩のこと。


 クルーガー王国での、最後の夜だからと……。


 アンリエッタ王女のたっての希望により、王太子殿下(おうたいしでんか)が出席される晩餐(ばんさん)に呼ばれることとなった。


 僕の席は左側の上座(かみざ)にアンリエッタ王女殿下、そして右側にセーラ第4王女が座っている。


 普通では有り得ない席次なのだ。


 しかし、(すみ)っこに座っていた僕を、このふたりが無理やり席を作って、


 「「ここよ!」」 と言われてしまえば逆らう事なんてできないのだ。


 ほーら見ろ、王太子殿下と王太子妃(おうたいしひ)様が不思議そうな顔をなさっているじゃないか。


 ところで、王太子殿下って名前なんだっけ?


 ええーと、たしか虫を寄せつけないような…………だめだ。


 いきなり連れて来られたとしても、めちゃ失礼なヤツだよな。最悪、シロに聞くか。シロなら遠隔からの鑑定もできるからな。


 そのシロだが、右側にお座りしており、僕とセーラに(はさ)まれるかたちになっている。


 さっきから、ニコニコ顔のセーラに背中を撫でられっぱなしだ。


 まあ、頭の上にはピーチャンが居るからな。






 晩餐も終わりに近づき、各自が立ち上がり飲み物をもっての懇談(こんだん)へ移った。


 僕らは隅のほうで、いつものようにセーラと遊んでやっている。


 しばらく、みんなで遊んでいると、


 「あら、ホントにセーラ様と仲良しなのね~」


 声を掛けてきたのは、え~と、ロイド様。ロイド太子妃殿下だ。


 僕が貴族礼(きぞくれい)を取ろうとすると、持っていた扇子を出してそれを止められた。


 「この場は身内しかいないの。礼は今度いただくわね」


 それでも、しっかりと腰を折り、


 「お初にお目にかかります、カルロ・ジ・アストレアともうします」


 と、短く挨拶はしておいた。


 「まぁ、あなた立派ね~。カルロですね、覚えました」


 「はい! 光栄に存じます」


 と、返したその時であった。






 ピーチャンたちと遊んでいたセーラが、急に胸を押さえて倒れこんだのだ。


 「「セーラ様!」」


 (あわ)てて駆け寄る、お付きのメイドたち。


 多数の人が寄りつき、この場はにわかに騒然(そうぜん)となった。


 おそらく、シロが掛けていたヒールぐらいでは間に合わなくなったのだろう。


 隣りの休憩スペースにある、簡易(かんい)ベッドにセーラは寝かされた。


 お付きのメイドが、医師を呼びに走る。


 苦しそうなセーラ。このままでは間に合わないかもしれない。


 現在、ここに居るのはロイド太子妃と僕、お付きのメイドが1名である。


 仕方がない。僕は外のホールに居るシロをこの部屋に召喚(しょうかん)した。






 「今から、僕がセーラ様の治療(ちりょう)をおこないます。大丈夫ですから、しばらくそのままで」


 「ちょ、ちょっと、お待ちなさい! あなたは何を…………」


 周りにいる者、皆が硬直(こうちょく)する。シロが威圧(いあつ)をはなったのだ。


 これで、しばらくは動くどころか声も出ないはずである。


 僕はシロを隣に呼んだ。


 左手をシロの背に置き、右手をセーラの胸に当てる。


 鑑定で病巣(びょうそう)や弱い所を探っていく……。


 ふんふん、なるほど。やはり心臓だな。あと、身体の弱い原因はおそらく(はい)だろう。


 左の肺が機能不全(きのうふぜん)ぎみだ。これでは(つら)かっただろうな……。


 よし、まずは肺だな。生まれつき弱いみたいだから、キュアやヒールではダメだよな。


 「いくぞシロ。―――リカバリー!」


 どうだ、鑑定! セーラの顔がいくぶん(やわ)らいだ……よし。


 「シロ、次は心臓だ。―――メガヒール!」


 「身体全体に―――キュア!」


 最後のキュアは感染症(かんせんしょう)に対して、用心のために(ほどこ)した。


 これで、万全のはずだ。あとは落ちた体力を取り戻すだけだな。


 しばらくしたら、元気いっぱい遊べるようになるだろう。






 そのあと僕は、すぐ部屋に戻った。何故(なぜ)かって、


 その……ロイド太子妃とお付きのメイドさん、(そろ)ってお粗相(そそう)を。……ねっ。


 もちろん、シロに浄化(じょうか)してもらったからキレイにはなったけど……。香りというか、匂いがねっ。


 ほら、治療を優先させたから……ごめんなさい!


 もちろん、ロイド様もメイドさんも、それについては触れないし触れてはいけないのだ。


 その夜は、なにかお(とが)めがあると思い、しばらく待機してたのだが、結局は何も音沙汰(おとさた)なかった。


 そして、なにくわぬ顔をして朝食を食べていたのだが。


 そんな僕の元へ、とある人物が近づいて来たのである……。




セーラちゃん助かって良かった~。えっ、鍛えろ! 何のため? 念のため!? でも、エマちゃんとキャッキャやってるところ見たいかも……。あ、そうそう。年齢ね、アンリエッタ16歳、セーラ3歳、ロイド27歳、ダン・プノドア75歳、コルベール60歳、ティルク不詳、アンのメイド・マニラ33歳。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 『自分の手が届く範囲で  自分の力で可能なことを』 物凄い能力(魔法も)があっても、カルロ君とシロちゃんだけで、世界中の困ってる人を同時に助けることは不可能ですもん。 今回、セーラちゃ…
[良い点] セーラちゃん助かって良かったです。゜(゜´ω`゜)゜。 エマちゃんとキャッキャしてる場面、ぜひ見たいです〜! 絶対に可愛すぎて萌えますわ( *´艸`) ティルク先生だけ年齢不詳なのがすごく…
2022/03/09 22:13 退会済み
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