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30. セーラ

 僕は息も荒くで苦しそうにしている、()け付けてきたメイドへセーラと呼ばれている幼女を引き渡した。


 隣りで、幼女の顔の汗を(ぬぐ)ったり、乱れた衣服を直したりとメイドが世話をしている。


 しかし、この苦しみ方は異常だ。


 そこで僕は、メイドにどういう事なのか聞いてみることにした。


 「お助けいただいた方に、不義理(ふぎり)はできませんので申しますが…………」


 と、セーラを介抱(かいほう)しながら、簡単にではあるが病気の事を語ってくれた。


 セーラはもともとが病弱であったが、昨年の秋口より心臓病をも(わずら)ってしまい、このような状態が長く続いているという。


 そうか~。心臓病では運動はおろか、遊ぶことすら制限されてしまうだろう。


 「まだ小さいのに、大変なものを背負(しょ)っているのだなぁ」


 幼女を抱えて去っていく、メイドの背中を見送りながら、僕は小さく(つぶや)いていた。






 この出来事をきっかけに、夕食後の(わず)かな時間であるがセーラとこうして遊んでやっているわけだ。


 セーラはここクルーガー王国の第4王女である。


 お人形のような金髪碧眼(きんぱつへきがん)である。


 ロイヤル・グリーンではなかったが、さほど気にならない。


 長い王国の治世(ちせい)においては、王族といえども色んな血が混じるだろうし、今更(いまさら)、王族に肩入れする気もない。


 世代が三つ違えば他人である。


 であるから、ここの王宮で血生臭い惨劇(さんげき)があろうと、部下の謀反(むほん)でクーデターが起きていようとも、今の僕にはなんら関係ないのだ。


 『あっしには関わりねぇことでござんす』


 まさに、これだ。紋次郎いいことを言う。そうでなければ、『人類みなきょうだい』になってしまうしな。


 だが、関わり合えば話は別だ。


 実際、このような笑顔をどうして無視できようか。無理だろっ。


 生かしてあげたいだろ、遊んであげたいだろ、見守ってあげたくなるだろう。






 食事のあとは、少し休憩をいれる。


 (うち)のシロの背にまたがってお馬さんごっこをしたり、ぷよんぷよんのポンタに腰掛けたり、ピーチャンと(たわむ)れたりしてあそぶ。


 僕とシロがついている以上、疲れもいやせるし発作(ほっさ)の心配もない。


 実に、楽しい時間であった。


 「ワンちゃんも鳥さんもまたね~。バイバーイ!」


 一生懸命(けんめい)に手をふるセーラ。その横で深々と腰を折っているメイド。


 明日、また会う約束をして笑顔で去っていった。






 「そこは右から切り上げて! うん、いいけど気を抜かない!」


 僕たちは今、難所と言われる8階層を攻略している。


 ただ、レベルを上げれば良いという問題でもないのだ。実戦においてはレベル差など、軽くひっくり返されるのだ。


 油断すれば、死ぬ。そうなってから後悔(こうかい)しても、どうにもならない。


 だから、剣技も磨く。基礎さえ(つか)んでいれば、そう遅れはとらないのだ。


 後はレベル押しと魔法で勝負だ! とはいえ、相手が決まっている訳ではないのだが。


 王城での滞在期間は明日まで。


 つまり、ダンジョンでのレベル上げも、剣の指南(しなん)も今夜が最後になるのだ。


 そんな中、僕がアンリエッタに課せた最終課題(さいしゅうかだい)は……。


 みなさま、よくご存じのウサコロ。そう、「ホーンラビット・コロシアム」である。






 意を決したアンリエッタは使い魔のモコモコをつれて、ひとりコロシアムに突入していく。


 コロシアム内のホーンラビットは50匹。それが前後左右、たまに頭上からも(おそ)い掛かってくるのだ。


 まさに、難所と呼ぶに相応(ふさわ)しいところである。ただ、どうしても通り抜けないと先に進めない訳ではない。


 しっかり脇道も存在するので、自信のない者は避けて通れるのだ。


 他のフロアボス同様、6人まで同時に(いど)むことができる。


 だが、人数が多すぎると、ホーンラビットは戦わず散ってしまうし、1人でもクリアしたものがいると同じく消えてしまう。


 そして、クリアすれば「銀の宝箱」がもれなく出現するのだ。


 と、こんな感じの「ホーンラビット・コロシアム」であるが、単独で挑む者はなかなかいない。


 下手したら、ハチの巣にされるのだ。


 ”魔法が使えれば” と考えてしまうが、そもそも魔法を使えるものが少ないのだ。


 このクルーガー王国では100人に1人の割合である。


 その中でも戦闘に際し実用的に使える者は極僅(ごくわず)かで、その(ほとん)どが貴族なのだから。


 そんな事情で単独挑戦者は少ないのであるが、これは最後の試練である。


 アンリエッタはモコモコと共にウサコロに臨むのであった。






 まあ、長々と説明したのだが、戦い自体は至って単調におわった。


 やっぱり魔法は、ス ゴ イ デ ス ネ~。(所さん風にどうぞ)


 アンリエッタも属性は風であり、コロシアムに突入した直後に広範囲のエア・ハンマーが炸裂する。


 モコモコと組んでのツープラトン攻撃により、8割がたのホーンラビットは戦わずして、魔石へと変わった。


 そうなれば、残りは10匹。


 アンリエッタの剣技と頭の上にいるモコちゃんの魔法で、あっという間にケリがついてしまった。


 まあ、こんなものだろう。僕はパチパチ手を叩きながら、アンリエッタの方に進んでいく。


 「流石です、アンリエッタ様。魔法も剣技も素晴らしいものでした」


 「いえいえ、カルロ師匠(ししょう)とシロ様に比べれば、私の魔法や剣技など稚子(ちご)もいいところ。お恥ずかしいかぎりです」


 「あとは帰られて、しっかり研鑽(けんさん)(かさ)ねていけばよろしいでしょう」


 そして、僕らは最後の仕事として、みんなで魔石を拾っていくのだった。




アンリエッタやりました! 見事、ウサコロ制覇です。えっ、レベル? ……知らない、わからない、覚えてない。それよりも、気になる宝箱(銀)の中味は? ああ、セーラちゃんが! 気になる次回、どうぞお楽しみに~!

(∪^ω^)めんどくさいお!    違わい!(大汗! 



誤字報告ありがとうございました。(^O^)/

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アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] ♪ど~こかで~シロちゃんが~(略)山の中で待っていた~♪ …ううっ……紋次郎さんの替え歌を思いついたのに、シロちゃんが1匹だった年数を想像してしまうとは不覚…!(涙) セーラちゃんも第4…
[良い点] セーラちゃん、そうだったのですね(/ _ ; ) まだ小さいのに……でもシロさんやピーチャン、ポンタと楽しく遊べて良かったです(*´꒳`*) アンリエッタちゃんとモコちゃんも頑張りましたね…
2022/03/08 21:18 退会済み
管理
[良い点] 心臓の病とは、なかなか厄介ですね(*_*) 金髪碧眼美少女は助かるのか!? アンリエッタの成長がめきめきで、モコモコちゃんとのコンビがいいですね☆彡
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