24. プチプチ
僕たちは ダンジョン・スパンク から学園の宿舎(寮)に帰って来た。
「それじゃ、またな!」
と、言ってジミーと別れた。
女子たちはそのまま、それぞれの部屋まで転送されていく。
例え5日に1度といえども、僕の部屋から女子がぞろぞろ出ていくさまは、邪推される可能性も出てくるだろう。
なので帰りの際は、ダンジョンより直帰させるようにしたのだ。
そして、夕食後。
僕はスライムのポンタをテーブルに呼んだ。
すると、ポンタはクロナの頭から飛び下り、ポンポン跳ねながらテーブルの上へ飛び乗った。
「なあ、ポンタ。最近、ダンジョンの中でよくアンといるよなー。何かやってんのか?」
するとポンタはブルブル振動している。特に何もしていないようだ。
「では、アンに何かされてるのか?」
すると、こんどはチカチカ発光している。アンがポンタに何かしているみたいだ。
「じゃあ、何されているか念話で教えてくれるか?」
ポンタはチカチカと2回発光したあと、
『いれる、なめる、てのひら、わらう、のむ、すする』
ほうほう。ちょっと卑猥に思える単語が並んでいるが、それとは違うようだ。
「えっと、ようするに食べられているのか?」
ポンタはチカチカと2回発光した。
うーん、食べてるのか~。
まあ、害はないらしい。それに、ほとんど水分であるため、特にどうと言うことはないようだ。
ただ、吸収したものによって、多少味に変化が出るということらしい。
そう言われると、なんとなく味を確かめたくもなる。
「すこし、もらっても良いか?」
と聞いて、2回発光したのを確認してから、手刀をポンタに減り込ませた。
腕を引き抜いてみると、ブルーのゼリーが手にくっ付いてきたので、思いきって舐めてみた。
…………!?
あれ! ――いける。
甘いラムネゼリーのようだ。
それに口の中でプチプチ弾けて……。
なにこれ! 癖になるんですけど~。
何度もポンタに手刀を入れ、ブルーゼリーをぺろぺろ。
「カルロ様。カルロ様! 大丈夫ですか?」
――ハッ!? 僕はなにを…………。
これはあきまへん! いつの間にか夢中でぺろぺろしていたようだ。
あぶない! あやうくクロナにジト目をされるところだった。
しかし、なんとも恐ろしやブルースライム。
ラムネのプチプチとは反則もいいところだ。
このあと、ためしにクロナに教えたら。
それはもう、ぺろぺろ、ぺろぺろが止まらない。――可愛い。
ハハハハッ、同じ状態だな……僕と。
これ販売したら、飛ぶように売れるだろうなー。
まあ、よくよく考えてみたが。
害はないし、ポンタ曰く、水分補給も土や空気、魔法でまかなえるらしい。
よって、活動には何ら問題ないという。そういうことなので、……このまま放置。
ただし、アンには隠れてコソコソしないようにだけ注意しておいた。そちらの方が危ないからな。
そしていく日か過ぎ、その日は訪れた。
今日は朝から学園中が騒がしい。
というのも、今日は学園でも年に一回の「使い魔召喚の日」なのだ。
”使い魔” というのは、シロやポンタのような従魔とは別物である。
日本でいうところの式神みたいなもので、魔法使いにとってはペットのような存在だろう。
だいたいが小動物を模した物(精霊)が召喚され、使い慣らすと手紙を届けてくれたり、ちょっとした偵察なんかもやってくれるようになるのだ。
召喚の儀式は、学園の中庭に画かれた召喚陣の周りでおこなわれる。
今日の午後からが僕たちに割り当てられた時間だ。
昼食を済ませた僕は、ジミーと一緒に中庭の方へ向かった。
「なあ、カルロ。どんなヤツがいいのかなぁ」
「さあな、人それぞれじゃないか? コボルトやゴブリンだと困るよな」
「いや、気にいらなかったり、手に負えないようなヤツは、契約の儀式をキャンセルできるらしいぞ」
「まあ、そうだよな。虫が嫌いなのに蜘蛛なんかきたら大騒ぎになるよ」
「飛ぶヤツなんか良くないか? ハトとかイーグルなんかさ。ハニービーは煩そうでイヤだけどな」
精霊ということで、大きさ的には犬ぐらいまでらしいのだが、まかり間違って平民とか来ないよな~。ヒラガサイト的な……。(ゼ○の使い魔参照)
火を司る精霊、サラマンンダーなんかもねらい目じゃないか?
それからも、楽しく話をしながら、僕たちは召喚陣が設置してある中庭へ到着した。
そこには、すでに八割がたの生徒が集まっており、その中にはアンとダイアナの姿も見うけられた。
それからしばらくして、生徒も集まった頃、僕らの担任のティルク先生が中庭に姿を現した。
ティルク先生は色黒で背が高く、プロレスラーのようなガタイだ。
それに、禿頭で額には梵字のような文様が浮き出ている。めちゃ強面で女子生徒が何人も泣くところを見たことがある。
特に何かをして、泣かせている訳ではない。もう、すでに存在自体が怖いのだ。
確かに、正面に立つと、得も言われぬプレッシャーを感じてしまうのは事実である。
本当に人間なのだろうか? いつも2.5m程の金属棍を所持している。本人曰く、魔法の発動体であるらしい。(はた目に見て古代戦士)
そのティルク先生から呼ばれた者が、召喚陣の脇に立ち、”サモン・サーヴァント” の呪文を唱えていく。
そうすると、召喚陣の真ん中にゲートが開かれ、呼び出された使い魔が姿を現すのだ。
ポンタは自身の水分調整をすることで、大きさを変えることが出来るのです。しかも美味しい♪ そして、どうなる使い魔召喚! カルロが呼び出したものとは……。平民は来ませんよ。念のため。
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