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20. お茶会

 僕は真新しいテーブルの上に、アフタヌーンティー用のティーポット、スイーツスタンド、紅茶カップ、取り皿などを配置していく。


 カトラリーを折り(たた)んだナプキン上にのせたところで、ドアがノックされた。


 すると、すばやくクロナが応対している。いつのまにか、シロも僕の隣りにお座りしていた。


 「やあ、いらっしゃい! さあ、こちらへどうぞ」


 僕はシロの頭を一撫(ひとな)でして、お客様の対応に移っていった。


 先頭でアンが入って来て、続いてダイアナ、そして……、


 おおっ、洗練された古風なメイド服をピシッと着こなした、壮年(そうねん)のメイドさんが静々と付き従っている。


 この人、なかなか出来る。


 いかにも、「ザ・メイド」 って感じだよな~。


 そして、一拍遅(いっぱくおく)れて入って来たのは、


 「へへっ、ちょっと遅れたかー?」


 頭をポリポリかきながら登場したジミーであった。






 「えぇー、何よここ。私達の部屋と全然ちがうじゃない! なにこれ、ずるい。ずるいわよ!」


 赤毛ツインテ…… いや、アンは仁王立(におうだ)ちしたまま、左手を腰にあて、右人さし指を僕に突きつけてくる。


 ずるいと言われても、そんなん知りまへんがなー。


 僕はそう思いつつも、


 「まあ、いいから座れ。 見ろよ、スイーツいっぱい用意したから」


 アンは、テーブルを見回して表情をやわらげる。だがそこに、


 「お嬢様。お座りになられる前に、何かお忘れではございませんか?」


 お付きのメイドから(たしな)められている。


 するとアンは、取り(つくろ)うように姿勢を正し。膝をチョンとまげて、


 「この度は、お招きいただきまして、ありがとうございました」


 と、カーテシーをとってくる。


 それに続くように、ダイアナも同じように挨拶をしてくれた。


 「これはご丁寧(ていねい)に、ありがとうございます。本日はごゆるりと……ってもういいか? 堅っ苦(かたっくる)しいのは」

 「いらっしゃい。適当に座ってくれ。クロナ、お茶をたのむ」


 「はい。かしこまりました」


 僕らの初めてのお茶会は、そうして始まったのだった。






 それにしても、アンのやつ会話もしないで、プリン、ゼリー、マフィン、ショートケーキと、一心不乱に口に入れている。


 お腹が減っていたのかぁ? そんなんで夕食は入るのかよ。


 後ろに立つ、お付きメイドのマニラさん。渋い顔で下を向いてるぞ。


 まあ、このまま食わせて、とっとと帰らせてもいいのだが。


 せっかくだから、昼に言っていた ”気になる事” とは何なのか、聞いておくことにしよう。


 「なあ、アン。時間はまだあるから、ゆっくり食べなよ。レディがはしたないぞ」


 「うるさいわねー、大きなお世話よ。なによ、何かあるの?」


 「何かあるのって、ホントにスイーツ目当てかよ。昼に言ってた、僕らがコソコソってなんだよ」


 「ああ、あれね。あなた達の身体から出ている魔力が日を追うごとに大きくなっているって、ダイアナが言うのよねー」

 「だから、何かやってるんじゃないかって思ったのよ。どうなの?」


 ほほーう、ダイアナは人の魔力を見ることが出来るようだ。この年では ”魔力操作” のレベルもそんなに上げてないだろうに。


 とすると、ダイアナは意外と優秀なのかもな。


 しかし、この学校ではその才能すらも、ろくに伸ばせないだろうなぁ。






 それからは……、あの教師はいけ好かないだとか、隣のクラスの誰それはこーまんちきだとか。


 いわゆる、学校あるあるの話でなかなか盛り上がりを見せた。


 そして、夕食の時間が迫って来たところで、今日の茶会はお開きとなった。


 席を立ち、お見送りに廊下まで出てきた。その際に、


 「学校の休みの日は、何をしているんだ? もし、良かったら、僕たちと剣や魔法の稽古(けいこ)でもしないか?」


 「え~。休みの日はお昼まで寝るに決まってるでしょ! なんでわざわざ、キツイ思いしなくちゃいけないのよ」


 「冗談じゃないわよ。他あたりなさいよねー」


 「ふーん、そうか。まだ出してないスイーツなんかもあるんだよな~。いや、残念だ。あーぁ残念だ!」


 「ちょ、ちょっとまちなさいよー。別にイヤだとは言ってないわよ。う~ん、そうね。身体を動かすのもいいかもだわー」


 「なんだよ。さっき、冗談じゃな……」 くい気味に、


 「ちが~う。そう、冗談ではなさそうな良い考えねーって、思ったのよ。そうよねぇダイアナ」


 「う…ん。わたしやってみたいかも。強くなってみたい。魔法も」


 「ほーれ、見なさい。休みの日は朝から行くから、スイーツよ、スイーツを用意しとくのよ。わかったわねっ!」


 「ああ、わかったよ。ちゃんと用意しとくよ」


 僕がそう答えると、アンは小さくガッツポーズをして、ダイアナとおしゃべりしながら笑顔で帰っていった。






 今回、興味はあったが鑑定は使っていない。魔力に敏感なダイアナが居たからな。


 まあ、鑑定はスキルだから大丈夫だとも思ったが念のためだ。


 今度、シロにでも頼めばいいだろう。


 さーて、これでダンジョン攻略(こうりゃく)用のパーティーメンバーは(そろ)ったな。


 これといって、目的や目標がある訳ではないが、つきあう友達は強い方が何かといいだろう。


 ダンジョンでキッチリ(きた)えてあげましょうかね。






 すると、テーブルの後かたづけを終えたクロナがこちらを(にら)んでる?


 「クロナ、どうした。気分でも悪いのか?」


 「いいえ、なんでもございません! おかまいなく!」


 どうしたんだろう。なにか、(けん)があるような?


 「クロナ、何かあるんだろう。おかしいぞ」


 「何でもありません! もう、いいです!」


 おいおい、僕が何かしたのか? 地雷(じらい)踏んだか?


 あ~あ、パーテーションの向こうに行っちゃったよ……。




準備を整えての、初めてのお茶会。はじめは少し硬さのあった雰囲気もあるあるネタで盛り上がりました。アンはホントにスイーツには目がないようですし、一見おとなし目に見えるダイアナはどんな子なのでしょうか? そして、何で怒ってるの? クロナちゃん((^_^;)

(∪^ω^)どんかんお!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人ともきちんとカーテシーをしてすごいですね(*⁰▿⁰*) さすがはお嬢様♡ 子どもたちだけのお茶会、可愛いですね( *´艸`) え、でもクロナちゃんご機嫌ななめ……? どうしましょう⊂(…
2022/02/27 10:44 退会済み
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