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19. 赤髪ツインテ

 冬休みが明け。(りょう)の部屋を片付けていると、隣部屋のジミーがお土産のリンガ(すもも)を持って、あいさつに来てくれた。


 「それでさー、ひとつ聞いてもいいか」


 「なんだよ、あらたまって」


 「ああ、その。……なんで俺を誘ったんだ?」


 「ん、そうだなぁ~。面白そうだったから?」 


 「なんだよ、それ! しかも、なぜ疑問形なんだよ」


 「まあ、面白そうだとも思ったが、環境(かんきょう)が似てんだろ。俺たち」


 「結局、面白いのかよ。……環境? ダンジョン関係か?」


 「そうそう。家がダンジョンの側なんだから、知っていて損はない」

 「それに、はじめての友達だろ。しかも南部のな」


 「ははっ、言われてみればそうだな。同じ南部の友達だかんな。これからもよろしくたのむぜ!」


 「じゃあなっ!」 


 と右手を上げ、ジミーはニコニコ顔で隣の部屋へ帰っていった。






 そして、本格的に授業が始まった。


 といっても、もともと受ける必要がないので気楽なものだが。


 マナーの授業においても、作法はおおむね変わらないようだ。


 面白いのは魔法の授業だな。さすがは貴族学校、(ほとん)どの者が魔法が使える。


 ただ、魔法に(かたよ)りが見られるのだ。


 どういった事かというと、攻撃魔法も防御魔法も単体単発なのだ。


 分かりやすくいうと、”バカのひとつ覚え” なのだ。


 なんだろうな、何か胡散臭(うさんくさ)い感じがするのだ。


 そして、一番大事なはずの魔力操作の訓練も指導も行わない。


 おかしい。何かがおかしいのだ。いつからなのだろう……。


 まあ、まだ2年以上あるのだ。ゆっくり調べていくさ。


 それには、あまり目立たないほうがいいだろう。


 これは、ジミーにも言っておかないと何かやらかしそうだ。


 僕の言い付けを守って、しっかり寝る前に魔力操作(まりょくそうさ)の訓練はやっているようだしな。


 昨日見たら、魔力操作のレベルが1上がっていたからな。女神さまの祝福があるとはいえ、しっかり頑張っていたのだろう。






 魔法の授業の方は、ジミーに不用意な事をしないようにと忠告し、しばらくは様子を見ることにした。


 学校の意図がどうであれ、実被害(じつひがい)が出ている訳ではないのだ。ぼちぼち、調べていけばいいだろう。


 それから、何日かたった後の昼休み。


 昼食を()りにジミーと食堂に行ったときのこと。


 「ねぇ、あなた達。冬休み前、なにかコソコソやってたでしょう?」


 僕とジミーが食事プレートを置いているテーブルに両手をつき、前のめりになりながら、ひとりの女の子が話しかけてきた。


 くすんだピンク色の髪(赤髪)をツインテールにした。いかにも勝気そうな女の子が大きな赤い瞳を向けてくる。


 「なんの事だ。よくわからないよー」


 両掌(りょうてのひら)を左右に開いて、とりあえず子供みたいな反応をしてみた。


 「なんの事じゃないわよ! 白状しなさい。ネタはあがっているのよ」


 「ネタってな~。特にやましい事はやってないぞ。しいて言うなら、夜中にスイーツをこっそり食べているぐらいだな」


 「えっ、スイーツ? どんなスイーツよ。それが(あや)しいわね~、出しなさいよ!」


 威圧(いあつ)も、害意も感じられない。ただの好奇心のようである。






 「なんか、話が置き換わってないか~?」


 「そんな事ないわよ。とにかくスイーツよ。いいわね、そのスイーツを食べさせなさい。じゃないと(ひど)いんだからね!」


 この小うるさい赤髪ツインテの後ろには、握った右手を口にあて、オロオロとしている女の子がひとり。


 こちらは、モカブラウンの髪を後ろ三つ編みにして、左肩から出している感じだ。


 瞳もブラウンで、少しおとなしめな印象をうける。図書室なんかに居て、メガネが似合いそうだ。


 「そんなに食べたいのか、いいぞ。じゃあ放課後、部屋に来るか?」 


 「ふぇっ、部屋。い……行ってやってもいいんだからね! でも、この子と一緒よ。分かったわね」


 「ああ、いいぞ。で、名前は何て言うんだ? 同じクラスだよな。こっちは僕がカルロ、隣がジミーだ。よろしく」


 「あっ、そうだったわね。私ったら名乗りもしないで……ごめんなさい。私はアン・シャーシー。そして……」


 「わ、わたし、ダイアナ。ダイアナ・ババリーです。よろしくお願いします」


 なんとも、妙な感じになったなぁ。適当なスイーツ食わせて、とっとと追い払うか。





 

 授業が終わると、アンはさっそく僕のところに来て、


 「部屋に荷物置いたら(うかが)うわ。ちゃんと待ってなさいよ」


 と、言い残しダイアナと教室を出ていった。


 うわぁ、来る気まんまんだな~。


 「ジミーも来るよな。スイーツ何が良いと思う?」


 「当然行くさ。そうだな~、やっぱプリンじゃねっ」


 「おまえなぁ、それ自分が食べたいだけだろう。プリン食べ過ぎだ!」


 そう。このジミーは、以前に僕の部屋でプリンを出したら大ハマリ。事あるごとにプリン プリンうるさいのだ。


 いっぺん、バケツで食わしたろーか……。


 いや、いっそのこと”タライ” でいくか? ……おもしろいかも。(笑)





 彼女らが来る前に、まず部屋の模様替(もようが)えでもしますかね。


 侍女さん達も見えるなら、少々手狭(てぜま)だ。僕は2台のベッドを収納。


 代わりに、奥にしっかりした二段ベッドを設置する。


 もちろん、目に入らないように、アコーディオン式のパーテーションで目隠しをする。


 そして、壁は北欧風(ほくおうふう)のシンプルな壁紙に、床は濃い色のウッドデッキ風に仕上げた。


 照明は和紙を使った、丸いぼんぼんタイプをチョイス。


 そこに、木目の丸テーブルと椅子が4脚。――うん。完璧!


 それを見ていたクロナが小さく呟く、


 「ふぁ~、素敵!」


 クロナの驚く顔が見れて、僕もうんうんと満足した。


 シロは二段ベッドの上から顔だけ出して、見守ってくれている。


 後ろで尻尾が振られているので、どうやら気に入ってくれたようだ。


 さて、お客さまをお迎えいたしますかね。




冬休みが明け、新学期のスタートです。

赤目ツインテちゃん。好奇心が違うところに暴走中です。この先どうなりますやら……。

ウッドデッキ風とは、通常のフローリングよりやや粗目なイメージにしました。


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 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[気になる点] アン、「e」のつくアンか。 アンとダイアナが来たってことは、次はトムとハックかハイジとクララか。(笑)
[良い点] 更新ありがとうございます! 個人的ですが、主人公に絡んでくるピンク髪の強引な女子って『ざまぁ』される自称ヒロインやん!と思ってるので、「シロちゃん!魅了スキル対策頼む!(汗)」と、要らぬ…
[良い点] この模様替えの速さ! 模様替え好きとしては羨ましい能力だ◎ 新キャラの今後の絡みも楽しみです☆彡☆彡☆彡
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