18. 休み明け
ふたたび、露天風呂につかり身体を温めたあとは。待望の「風呂あがりの一杯」である。
みんなが室内の休憩室に集合していた。
ガンツは一番前でスタンバっている。まるでゴリラのようである。
そして、どこから持ってきたのか、右手にはすでに樽型のジョッキを装備していた。
……まさかマイジョッキを持参したのか?
うん。待たせても酷なので、僕は冷蔵スペースで冷やしておいたエール樽を ――どすん! とテーブルの上にのせた。
前にいるガンツから、エールを手早くトクトクとついでいく。
するとガンツは、エールの泡に目線を固定させたまま、並んでいるみんなの横を通り後へ下がっていく。
そして、ひと呷り。
――――グビグビグビグビ!
「…………」
ドドドドドッ!! ガンツが僕に向かって猛ダッシュ!
――ヒチッ。
ガンツのハグである。ぜんぜん嬉しくない。
思いっきり抱きつかれているので、正直いって苦しいし、樽ジョッキが背中に食い込んで痛い。
風呂あがりなので臭くはないが、非常にムサい。
そして、身長が変わらないため、髭が顔にあたってチクチクするのだ。
こんな光景は誰得にもならないので、すぐに抜け出した。
まったく、勘弁してほしいよ。
「どうだ、旨かったか? 最高だろっ!」
ガンツはコクコク頷きながらジョッキを差し出す。
「はいはーい。もひとつ、どーぞー♪」
グビグビと一気に、3杯続けて空けてしまった。よほど気に入ったのだろう。
相変わらずの大酒呑みである。
この、冷えたエールなのだが、普段はさほど飲まないエレノア母様が ”おかわり” をする程であった。
それだけ、お風呂と冷えたエールの相性が良かったのだろう。
まあ それでも、これが本領を発揮するのは夏場だろうがな。
▽
そして年が明け。冬休みも残すところ、あと3日となった。
この間に、ダンジョン周りの基礎工事や、アストレア邸に居る、家人達のレベルアップはそこそこ進んでいった。
次は、半年後の夏休み期間に再びパワレベを予定している。
そうはいっても、邸の家人達はほとんどが ”女神さまの祝福” を授かっており、メキメキと強くなっているのだ。
おかげで、邸内の仕事もすこぶる捗っているようだ。
そして、居候のガンツなのだが。
今は裏庭の納屋のとなりに鍛冶場小屋を建てて、屋敷で使う包丁やナイフ、それに農作業用のクワやカマを作っている。
それから、アルバートお父様の依頼で、ここアストレアの町で使う衛兵用の剣や槍(数打ち品)を手掛けていくそうだ。
転移陣も温泉施設だけではなく、屋敷から ダンジョン・スパンク 、屋敷から王都の学園(僕の部屋)などにも移動できるようにした。
そして、裏庭の納屋と、ガンツの息子がいる、ディレクの町にある鍛冶工房ともつなげておいた。
もちろん、使用できる人間は限定してのことだ。
お陰で、学校が休みの時は迷宮都市の整備をちょこちょこ手伝って欲しいと、兄様たちに言われてしまった。
まあ、休みの日はダンジョンに潜ってレベル上げをする予定だから、その折に少しづつ手伝うようにしよう。
僕とシロ、クロナは王都の学園へ戻ってきた。
授業開始を明日にひかえ、使ってなかった部屋の掃除や、足りない学用品などを揃えていく。
明日からは魔法の実習などもあり、本格的に授業が始まるのだ。
そして、冬休みが明けて僕とクロナの身体レベル他、鑑定結果がこちら。
カルロ・アストレア Lv.22
年齢 10
状態 通常
【従魔】 シロ(フェンリル)
HP 56/56
MP 55/55
筋力 47
防御 42
魔防 46
敏捷 44
器用 26
知力 53
【特殊スキル】 インベントリー(U)
【スキル】 鑑定(5) 魔法適性(全) 魔力操作(6)
剣術(2) 槍術(2)
【魔法】 風魔法(5) 結界魔法(4) 氷魔法(3)
雷魔法(3) 聖魔法(2) 回復魔法(4)
身体強化(3)
【称号】 転生者、シロの契約者、
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
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クロナ Lv.11
年齢 8
状態 通常
【従魔】 ポンタ(スライム)
HP 32/32
MP 30/30
筋力 23
防御 19
魔防 20
敏捷 24+5
器用 10
知力 19
【スキル】 魔法適性(光、風) 魔力操作(4) 槍術(1)
【魔法】 風魔法(3) 光魔法(1) 身体強化(1)
【称号】 王族の末裔、ポンタの主人
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
僕は身体レベルが2つ上がりLv.22になった。スキルのほうは槍術、魔法のほうは氷魔法が上がったな。
クロナも身体レベルが2つ上がりLv.11になっているが、同じ2レベルアップでも、僕とクロナはパワレベの内容がまったく違うからね。
まあ、それは置いといて。
スキルのほうは魔力操作が上がり、槍術が生えてきた。
魔法のほうでも、風魔法が上がり、身体強化が生えた。
クロナはもう、その辺の下級冒険者ではまったく相手にならないだろう。
ゆくゆくは買い上げて、アストレア家に迎え入れたい。
そして、寮の部屋で明日からの授業に備えて準備をやっていると、
――コンコンコン!
入口の扉がノックされた。
「はーい! どうぞー」
クロナは花瓶の水を換えにいっている。シロはいるけどドアは開けられない。犬なので。
僕も手が塞がっていたため、扉に向かって入室するように伝えた。
「よーうカルロ、ひさしぶり! 帰ってきてたか」
「やあ、ジミー。元気そうだな」
隣の部屋のジミーが元気な声で挨拶してきた。
ジミーはひとりで来ている。
いつも一緒に居るメイドのカミラさんは、おそらく部屋の掃除や、明日からの準備などで忙しいのだろう。
「なんだ、邪魔だから追い出されたのか?」
「ちがわい! お土産を持って来てやったんだよ」
そして、手ずからホイっと渡されたパピルスの包みを開けてみると、それは旨そうなリンガ(すもも)が出てきた。
「これ、リンガか? 旨そうだな。ありがとう」
「おう、家から持ってきたヤツだぞ。ありがたく食え」
「ああ、でも俺。お土産なんか何もないぞ。すまん!」
「いやいや、バカ。違うんだ! これは何と言うか……お礼だ。ダンジョンでレベル上げを手伝ってくれた」
「いやー、家に帰ってからビックリしてさ。……自分の力に無自覚でさ、兄貴でも敵わないんだぜ。マジ焦ったよ」
「そうか、良かったな。でも、気をつけろよ。これからもっと、鍛えていくからな。手加減は大事だぞ」
まあ、ジミーは10歳の子供だ。手加減も難しいだろうが、学園の子供相手だとマジで大変なことになる。
難しくとも、やってもらわなくては困る。
あ~あ、楽しい事って、どうしてこう早く過ぎ去っていくのでしょう……。ですがそこの方、気を落としめさるな。もう土台があるのです。これからは事あるごと、新しくキャラが増えるたび、こじつけて ”温泉パラダイス”を展開すればいいのです。どうです? ステキでしょ♪
(ノ*ФωФ)ノ温泉パラダイスにゃー!
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