17. 家族でゆっくり
いよいよ温泉施設への移動となる。
初めはみんなで一緒に転移しようと考えていたのだが、それだといろいろ都合が悪いようだ。
用事がある度に、僕やシロが呼ばれるのも大変だし、家人たちはどうしても頼み辛くなるだろう。
そこで、転移陣を設けることにした。
おあつらえ向きに当館では、かさむ薪の費用とお湯運びが重労働なため、長く使ってこなかった大きめの浴室がある。
その浴室内の小さな物置部屋をサクッと改造し、温泉施設の玄関脇に飛べるよう転移陣を設置した。
ここなら、アストレア邸のリビングや食堂にも近いので、なにかと便利だろう。
さらに転移陣は、家族や家人以外では作動しないようにしているので、至って安全安心なのである。
男女に別れた脱衣場を過ぎると、洗い場とそれなりに広い内湯がある。
奥に進むと、打たせ湯やジャグジーバスなどもあり、内湯でも十分に楽しむことができる。
僕はシロと一緒についてきたエマちゃんを連れ、洗い場で身体を洗った後は、エマちゃんをシロに乗せて表の露天風呂に向かっていった。
そこで、エマちゃんと脇で待機しているクロナに湯舟につかる時のマナーなどを教え、ゆっくりと露天風呂につかった。
――――ふぁ~~。
いい湯である。冬空の下、固まった身体を大きく伸ばして入ることのできる露天風呂は格別なのだ。
僕たちが入っている露天風呂の一角は、子供の入浴や、半身浴ができるように浅くなっている。
だから、僕やエマちゃんでも まったく問題はない。
それに、シロがエマちゃんに寄り添い、面倒をみてくれているしな。
「なんじゃ~、ここは。凄いものを造ったのー」
ガンツが前も隠さず、のしのしとやってきた。
かかり湯も、頭からかぶって豪快だ。
そして笑いながら、ざぶんと僕の隣りに入ってきた。
そう、彼はドワーフ。
身長も今の僕とそんなに変わらない。なので、こちら浅湯がちょうどいいのだ。
そうして、のんびり湯につかり。
二人で手真似をしながらの武器談義。
館の裏に鍛冶場を設ける計画なども話し合っていた。
一方、エマちゃんは、流れる温泉プールの中をシロにまたがり、クロナと共に楽しく周回中だ。
「あら~、いい眺めね~。それに、お外にお風呂だなんてとっても贅沢だわー」
ウキウキしながら、エレノア母様がメイドを引き連れて、こちらにやってきた。
露天風呂サイドで、着ていたバスローブをひとりのメイドに渡すと、そそくさとかかり湯をして入浴してきた。
白っぽい輝きを放つ、プラチナブロンドの髪を結い上げ、豊満な胸を惜しげもなくさらしながら、ゆっくりお湯につかってくる。
そして、新人メイドのアーヤとマーヤが後ろに付く。護衛のような感じだな。
二人は狼人族で、髪はシルバー、瞳の色はパープルである。
姉の方は肩にかかるぐらいのストレート。妹はショートボブで、頭には狼の耳がピンと立っている。
胸のほうは、姉のアーヤが少し残念ちっぱいで、妹のマーヤはなかなかの美乳である。
あんまり胸ばかり見ていたので、アーヤに睨まれてしまった。(汗)
しかし、そこは許してほしい。10歳といっても、男の子なのである。
アーヤとマーヤの姉妹は、この山あいに集落を持つ狼人族である。
その付近にも50人前後の小さい集落が点々としている。
しかし、その暮らしぶりは貧しく。
小さな畑と山菜とり、あとは山で猟師をしながら細々と生活をしてきたという。
まあ、町へ出稼ぎに行くといったところで、これまでのアストレアの町ではな……。
だから、今回のダンジョン発見と迷宮都市の建設には、大いに期待を寄せているらしい。
町ができれば、仕事もそれなりに有るだろうし。冒険者として登録すれば、簡単にはいかないがダンジョンでひと稼ぎも可能になる。
そうすれば長雨が続いたときでも、冬に獲物がとれなくとも、ひもじい思いをすることは少なくなるだろう。
そのうち、ここの管理なんかも任せてしまおう。
ダンジョンに入るなら、僕とシロが鍛えてあげられるしな。
アーヤとマーヤが、縁あってアストレア邸で働いているのだ。家族ぐるみのお付き合いも、吝かではないのだ。
「おお、皆揃っとるな~。外の湯もよさそうだな」
「はい、父上。ここの温泉の造りは、真に凄いものですねー」
やって来たのは、アルバートお父様と長男のアンソニー兄様である。
これで、次男のテリュース兄様を除いて、アストレア家の家族が全員、この露天風呂に集合したことになる。
「おうおう、こうして家族みんなで風呂につかるのも、なかなか良いではないか」
「ちょうど良い機会だ。これから先の家のこと。そして、迷宮都市の開発についても皆に話しておこう」
それからしばらくは、温泉にゆったりとつかりながら家族会議をすることになった。
もちろん、合間に休憩を挟みながら、軽食や飲み物などを適当にふるまった。
中でもアイスクリームは好評で、狼姉妹の他メイド達は飛び上がって喜んでくれていた。
そして、家族会議も終わりに近づいた頃、僕たちは休憩所に集まった。
メイド達を一旦下がらせると、アルバートお父様は真剣な面持ちで質問してきた。
僕とシロについてだが、何がどこまで出来るのかを聞いてきたのだ。
この質問に対し僕は無理に隠すことはせず、ある程度は能力を開示することにした。
隠すことによって、後でやり辛くなっても面倒なだけだ。
…………。
まだ、半分も説明していないのだが、
「まあ、なんだ……、後のことはその都度聞かせてもらおうかのう」
と、全員が青い顔をのぞかせ、震えながら露天風呂に突入していった。
床暖房してあるのに、そんなに寒かったのだろうか……?
家族そろって温泉。いいものですね~。まあ、メイドさんも一緒ですが、それがまた良い。この温泉施設は ダンジョン・スパンク によって、防御結界が張られております。これにより、各攻撃はもちろん、雪、雨、風なども防いでくれているのです。地熱で温度調節も行っておりますし、基本は”源泉かけ流し”ですが、お湯の汚れ、館内のクリーンアップなども常時行われており、気持ちよくご使用いただけます。(∪^ω^)温泉いっぱいお!
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