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16. み~んなで

 相変わらずであるが。ダンジョンに建物などのイメージを渡すと、電脳世界マトリックスのように、粒子が集まり下から上へと構築されていく。


 ――――ふぅ。まぁ、こんなものかな。


 再び、結界を浮かべて、僕は上空より出来上がった温泉施設(おんせんしせつ)(なが)めていた。 


 あちゃ~。少しやり過ぎたかも。(汗)


 もはや、温泉と呼べる規模(きぼ)ではないような……。


 ――てへっ♪






 するとダンジョン前広場の方で、クロナと手をつないでいるエマちゃんが、こちらに向けて手を振っているのが見えた。


 僕はシロを連れて、急いで広場の方に下りていく。


 「どうしたの~?」


 「カルロ兄様、おしっこ!」


 と、手を股の間にはさんで、足をふみふみしている。――可愛い。


 僕は大急ぎで、ガゼボから3m程離れたところにトイレをこさえると、エマちゃんを連れていってあげた。


 そういえば忘れていたな。


 エレノア母様やエマちゃんはレディなのだから、もう少し配慮してあげないとな。


 反省しながら、お手てを洗ったエマちゃんを連れてガゼボにもどった。


 「あら~、カルロ。しばらく居なかったけど、何か作っていたのかしら?」


 「はい、お母様。ここから上の景色の良い所に、温泉施設を造っておりました」


 「まあ、温泉! いいわね~。この時期になると手足が冷えちゃって辛いのよ~。効能(こうのう)なんかは分かるのかしら?」


 「はい、温泉は青みがかった乳白色のにごり湯で、鑑定すると ”単純硫黄泉(たんじゅんいおうせん)” ですね」


 「効能は疲労回復(ひろうかいふく)、皮膚病や冷え性に加え、飲むことで胃腸病などにも良いようです。また、湯上りしてからの保湿(ほしつ)もよく、”美肌効果(びはだこうか)” が高いということです」


 ――シュッピーン!


 おおっ、な、なんだー?


 僕は首をすくめながら周りを見てみると、エレノア母様の目がキラッキラに輝いていた。


 「さあ行きましょう! すぐ行きましょう! 今行きましょう」


 「お、お母様、落ち着いてください。もうまもなく夕食の時刻です。そろそろ戻らないと……」


 「カルロ。わかってませんね~。いいですか、女性にとって美とは食よりも勝るものなのです」


 「…………」


 エレノア母様の美へ対する ”うんちく” を聞きながら、ガゼボ内のテーブルを見やる。


 『ああ、あれだけスイーツ食べてれば、腹は減らないですよね~』


 それからも、しばらく ”うんちく” は続いていたが、その間もクロナはテキパキと後片付けをおこなっていた。


 「……まあ、いいでしょう。夕食後にもう一度ここへ連れて来なさいな」


 「…………」


 「わかりましたね!!」


 「イエス、マム!」






 それからは、すみやかに屋敷に戻ってきた。


 夕食を済ませている間に、入浴するのに必要になる物品を、大至急(だいしきゅう)取り揃えていく。


 明かりは松明(たいまつ)による篝火(かがりび)でいいだろう。


 ダンジョン・スパンク に石の篝火台と(まき)をたのんだ。


 お風呂椅子に洗面桶、脱衣場のマットに衣類入れの(かご)


 バスタオルとフェイスタオル、石鹸、シャンプー、ボディーブラシ等。


 休憩室には、長テーブルと椅子。


 お隣に畳み(たたみ)上がり台を設置、い草まくらとタオルケットを用意した。(畳とい草は代替品です)


 さらに、冷蔵スペースを作ってもらい。エールやミルク、ジュースなどを冷やせるようにした。


 冷凍ストッカーも用意し、氷も自由に取り出せるようにした。


 ――――ふぅ。こんなところかな?


 するとリビングにて、シロとのやり取りを見ていたガンツが、ニコニコしながら質問してきた。


 「なんじゃ、温泉があるのか? 何処(どこ)にあるんじゃ! それに、冷たくしたエールじゃと!」


 おお、なんかガンツが喰いついてきたな。確かに、ディレクの町にも温泉浴場はいくつか造っていたからな~。


 「そうだよ。なんだ知らないのか? 風呂あがりに飲むエールを」


 「たまんないぞ。かっかとした身体に、キュンキュンに冷えたエールの旨さと言ったら。それはもう……」


 ――ゴキュッ


 ガンツが、(のど)を鳴らすのがわかった。


 「た、たのむ。わしも連れていってくれ~」


 リビングテーブルに額をつけるような勢いだ。まあ最初は、家族限定にしようと思っていたが。


 考えてみれば、ガンツとは家族以上の付き合いだ。特に断る理由もないので、


 「もちろん、いいさ。着替えはそっちで用意しろよ」


 僕からの答えを聞くやいなや、ガンツは自分の部屋へとすっ飛んでいった。






 そして、家族みんなで温泉施設に行くことになった。


 一応、メンバーを挙げると、僕、シロ、アルバートお父様、エレノア母様、アンソニー兄様、エマちゃん、ガンツ。


 お世話役として、メイド長のアンナ、新人メイドで新しく入った、狼人族のアーヤとマーヤ姉妹。


 そして、僕専属のクロナと従魔でスライムのポンタである。


 なお、次男であるテリュースは、現在ダンジョン近くの村に出向(しゅっこう)しており、現場にて「迷宮都市(めいきゅうとし)計画」の指揮(しき)をとっている。


 夕食後の片付けを終えたメイドたちは、今度はせっせと着替えなどの準備をおこなっている。


 しかし、付いていくメイドたちは、にわかにはしゃいでいるようにも見えるのだ。


 『今宵(こよい)は温泉でゆっくりするから、貴方たちも着替えを持って、ついていらっしゃい』 と、エレノア母様がメイドたちに通達したそうだ。


 不思議そうにしていた僕に、メイド長のアンナがそう答えてくれた。


 流石はエレノア母様。余計な仕事が増えたメイドもこれなら、喜んで準備するというものだ。


 ダンジョンのお膝下(ひざもと)で危険もないし。


 温泉施設は広々と造ったので、多少人が増えたところで、まったく問題ない。


 うちは王族でもないのだし。


 そこはアットホームに、み~んなで温泉施設を利用するのも良いだろう。




皆さん、どーもお待ッとさんでした。いよいよ次回です。ドドーンと桃源郷が広がっておりやす。えっ、冬だから外に出ないんじゃないの? だ、大丈夫だし~。た、たぶん……。メイビー。そうそう、風邪ひきますので、明日になって下ろしましょう。(∪^ω^)ワクテカ!



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 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] ママン最強伝説、再び…! 王妃様より、実母には逆らえないのが主人公の宿命ですね。 温泉かぁ…… ひゃっほ~い♪ 天然温泉かけ流しで露天の岩風呂だぁ~♪   テッテケテーー!  『温…
[良い点] みんなで温泉とはにぎやかですね◎ 私も温まりたい(#^ー^#) 着実にダンジョンが建設されていて、しかも豪華になっていますね☆彡 ガンツも楽しそう(*'ω'*)
[良い点] エマちゃん可愛いですね( *´艸`) そしてエレノアお母様の暴走が始まる……! のは冗談ですが、温泉は気持ちいいですからね♪ 久しく行っていないので、また行きたくなりました(*´꒳`*) …
2022/02/22 18:45 退会済み
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