15. おてつだい
よく朝、学園の冬休みで帰省してきた僕は、毎朝恒例になっている散歩を終える。
朝食前にもかかわらず、早起きしてきたガンツと、リビングにて今後についての打ち合わせをしていた。
はじめは工房をどのあたりにもっていくか? や、炉の大きさはどうするか? まじめに話し合っていたのだが。
やはりというか。
いつのまにか、激しく楽しい武器談義へと変わっていった。
ハルバートを出しては、長さはどうだ、重さはどうだ、槍部は、斧の大きさは、位置は……。
協議するところは山のようにある。
朝食までの時間。実に有意義? に過ごすことができた。よし、明日は偃月刀について語り合おう。
朝食を食べてからの午前中は、エマちゃんあいてに文字の練習のおてつだい。
クロナの膝の上で、楽しそうに文字の書き取りをしているエマちゃんに、おおいに癒された。
午後からは、町を見たいというガンツの要望に応え、シロとガンツを連れ久しぶりに町へ繰り出した。
「おおっ、割としっかりと整った町じゃわい。けっこう賑わっておるのー」
「うん、そうだね。だけど、こんな風になったのはここ半年ぐらいだから」
「やはり、ダンジョンの影響は大きいということじゃな」
「まっ、そういうことだね。前はひどかったよ……。いろいろとね」
すると、そこに町のワルガキ兄弟のジョルジュとポールが、
「親ぶ――ん! 親分、久しぶりっす。 いつシャバに?」
「シャバに?」
「おう、ジョルジュか。シャバってお前らなー。……まあ、いっか。それよりも、元気そうだな。 ポールもな」
「はい! でも親分が居ないんでさみしかったっす」
「さみしかったたたっす!」
…………。
「それで、親分。そちらの髭のおっちゃんは誰です?」
「おう。こちらはなー、聞いて驚け! ”王国の至宝” と名高い、鍛冶師のガンツさんだ。しっかり、挨拶しとけー」
「か、鍛冶師様ですか! オレ鍛冶に興味あるっす。何かこう引っ張られるような感じというか、なんというか」
そういって、深々と頭を下げるジョルジュに、
「鍛冶屋は体力もいるし、厳しい道じゃぞ。それでも良ければワシを訪ねるといい」
ポカンとしているジョルジュに僕は、
「良かったな。真剣にやるなら、鍛えてくれるってさ。だけど、途中で投げ出して僕の顔に泥を塗るなよー」
「ま、マジっすか! やったー。これで父ちゃんのクワも、母ちゃんの包丁も作ってあげられるっす。オレ、がんばるっす!」
その後は、くっついて回られるのも面倒なので、シロおすすめの串焼き屋で2人に串を渡して適当に追い払った。
そして、ガンツは屋敷に戻ると、朝から集めてもらっていた屋敷中の刃物という刃物をみんな持って、裏にある納屋の方に入っていった。
なんでも、ぷらぷらするのは性に合わないんだとっ。
だから、火を使わなくともできる刃物の修正。
また、剣や包丁などを研いでくれるということだ。
一方、僕の方はクロナを誘って、ダンジョン・スパンク に行くことにした。
町をつくる予定があるので、ダンジョン周りの樹木の伐採や大きな岩などの移動。
それから、土地を均しての造成や小川の引き込みなどをやっていく予定だ。
……その予定だったのだが。
なぜ、こうなった?
クロナを連れて行こうとすると、お昼寝より目を覚ましたエマちゃんが、クロナにへばり付いてしまった。
仕方がないので、一緒に連れて行く旨をエレノア母様へ話したところ、
「あら、私もダンジョン見たいし行くわよ。いいわよねぇ?」
と言いだしてしまった……。
それで今、僕たち4人と2匹は ”ダンジョン前広場” に立っていた。
まあ、今日はぽかぽか陽気で気持ちがいい。(冬です)
ここに居れば地熱暖房もあるし、危険な事もほとんどない。
シロ経由で ダンジョン・スパンク にイメージを流して、小さなガゼボを広場の一角に建てる。
中にはガーデンテーブルやチェアーを設置していく。
そこに、 ダンジョン・サラ が提供してくれたスコーンやショートケーキ、プリンなどをスイーツスタンドに入れて、お茶といっしょに出してあげた。
ここでいう、「ダンジョン・サラ」 であるが。
この王国における3番目のダンジョンである。(発見は500年程まえ)
サミラス伯爵領内、モンソロの町から東に行った、国境付近に存在している。
以前に、スイーツの素晴らしさに目覚めてしまい。
新鮮なミルクを調達するため、ダンジョン内で乳牛などの牧畜もおこなっている。
農作物においては、上質な小麦をはじめバニラやカカオ、サトウキビなども積極的に生産を続けているらしい。
さらに、異世界である日本の ”スイーツレシピ” を吸収しているため、今では スイーツ・ダンジョン として定着しているようだ。
たまに、ご褒美として ”絶品スイーツ” がドロップするためか、女性冒険者からは根強い人気を博している。名物ダンジョンのひとつである。
エマちゃんとエレノア母様が ”絶品スイーツ” を堪能している間に、僕とシロはサクサクと作業を進めていく。
まずは結界で足場を築き、ダンジョン周辺が一望できる高さまで上がる。(結界師を参照)
そこからは、ダンジョン・スパンク と協議しながら、伐採や整地などの各種作業をこなしていった。
そして最後は、やはり温泉の掘削工事と保養施設の建設だよな。
内湯、露天風呂はもとより。
打たせ湯、足湯、ジャグジー、さらには露店風呂を囲うように ”流れる温泉プール” を作っていった。
そして今回も、大小すべり台のほか、”ウォータースライダー” の設置も行っている。
ううっ、ついにエレノア母様が始動してしまった。僕がもたもたしてたせいだ~。ってシロ? なにポンタをあたまの上に乗せて遊んでんの~。行くよ! ああしてるけど、母様のチチビンタは怖いんだからねー!! (オイ!
(∪^ω^)ごほうびでし!
ブックマーク、評価、感想、いいね!、などいただきますと励みになります。




