表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/137

14. ガンツ

 「ああー、誰だ。ワシはお前のような、白犬を連れたガキなんぞ知らん。それにガンツはワシの親父だ」


 「えっ、そうなのか? それじゃあガンツは亡くなっているのか~?」


 「こらこら、ワシの親父を勝手に殺すな! ちゃんと生きとるとるわい。お~い、親父~」


 へー、そうなんだ。ガンツの息子ね。ホントそっくりだわ。


 「なんじゃー、ゲンガ。なんぞ有ったか?」


 「おう、親父に客だ!」


 「なに、ワシにか? 誰じゃ」


 そして、ガンツはこちらを見て…………。


 「おう! お前さん、シロじゃないか! 久ぶりじゃわい」


 これに、シロもお座りをしたまま尻尾をブンブン振って答えている。


 そして僕は、インベントリーから短槍(たんそう)を取り出すと、


 「久しぶりだな、ガンツ。手入れを頼む」


 と言って、持っていた短槍をガンツに渡した。


 ……その槍を見ると、ガンツの目の色が変わった。


 「こ、この短槍は……。そうか、お前さんか……。ゲン、今は何と呼べばいいんだ?」


 「ようやく分ったか。今はカルロだよ。生まれはガルバド伯爵領(はくしゃくりょう)のアストレアだな。最近ダンジョンが見つかったよ」


 「ワハハハハッ、そうか そうか。もう、200年程経つかの~。よく、帰ってきた!」

 「ささっ、座ってくれ。ゆっくり話そうじゃないか。しかし、その身体では酒はまだ無理かの~」


 ガンツの顔はもう、ニッコニコである。横に居る息子も驚く程に……。






 そのあとは、息子のゲンガを巻き込んで、呑めや歌えの大宴会(だいえんかい)


 酒の飲めない僕は、果実水をチビチビやりながらも、盛り上がってしまい、結局朝まで付き合わされてしまった。


 僕はインベントリーから、ウイスキー角をカウンターに静かに置くと、ごうごう眠るガンツ親子を見やり、


 「またな」 


 と言って、鍛冶工房(かじこうぼう)を後にした。


 宿に戻ると、もう出入口は開けてあり。僕は表を()いていた女将に、


 「おはようございます!」


 と挨拶をして2階の部屋に戻った。


 ――ひしっ! 


 部屋に入った途端(とたん)、腕にすがりつかれた。


 クロナである。


 部屋着である貫頭衣(かんとうい)を着ている。


 「うっ、うう。よ、よかった。わたし不安で……」


 そうかー。僕もここまで遅くなるとは思わなくて、


 『少し、出てくるから……』 


 と、言っただけで出てきたからなぁ。そりゃあ、心配するわな……。






 そのあと、メソメソ泣いている、クロナの頭を優しく()でてやり落ち着かせると。


 クロナを着替えさせて、朝食をとりに1階に下りていった。


 階段を下り食堂に顔を出すと、一組のテーブルに腰掛けているジミーが、こちらに向け手を振っていた。


 「おう! おはよう。早いな! クロナも同じテーブルを使っていいか?」


 「おはよう、カルロ。いいに決まってるだろー。同じパーティー・メンバーなんだし」

 「それに、旅の途中でもあるしな」 


 「そうか、ありがとう。さあ、クロナも座りな」


 そうして、シロ用のフライパンとポンタ用の深皿に、それぞれ朝食メニューをよそってもらい、みんなで楽しく朝食を頂いていた。


 すると、宿の女将(おかみ)が僕たちのテーブルまで来て、


 「お連れさんが店の前でお待ちですよ!」


 と、伝えてきた。


 ……連れ?


 そんな者はいない。いったい誰のことだろう?


 そう思いながら宿の玄関へ出て外を見てみると、これまた大きなバックパックを(かつ)いだ、ひとりのドワーフがこちらを向いてニヤニヤしている。


 ガンツであった。


 さながら、地下坑道(ちかこうどう)で会った ”ポムじいさん” のようである。(天○の城ラピ○タ)


 それで、どうかしたのか? と話を聞いてみると。


 なんと、僕が帰るアストレアまで付いて来ると言う。


 「いろんな町を渡りゆくのがドワーフの宿命。最果(さいは)ての町アストレア、なんとも楽しみじゃわい!」


 ……なんだと。 


 以前も、同じような事があったような気もするが……。そこまで言うなら連れていってやろうじゃないか。


 このあとジミーたちが、迎えの馬車に乗り込むのを見届け。 


 僕たちもアストレアの町に転移した。


 ちなみに、あのバカでかいバックパックは、シロに預かってもらっている。






 さてさて、ようやく帰って来ましたアストレアの町。


 そして久しぶりの我が家。


 ガンツを案内しながら家の門を潜った。


 ――ひしっ!


 腰にしがみつかれた。


 エマちゃんである。


 僕はエマの頭を一撫(ひとな)ですると、そのまま腕抱きに(かか)えあげた。


 そんな自然なおこないに、しばらく驚いていたエマちゃんだったが、すぐに持ちなおして、ベッタリへばり付いてきた。


 玄関では、エレノア母様やメイドのアンナが僕たちを出迎えてくれた。






 ああ、たった40日程であったが、やっぱり自分の家は落ち着くものだな。


 そうしてリビングに入り、僕の家族にクロナやガンツを紹介していった。


 だんだんと、()れてきたエマちゃんはクロナのことを、


 「クロにゃんにゃん」


 と呼びはじめ、今度はクロナにへばり付いてしまった。


 おねーさんが出来て嬉しいのだろうか。


 僕としては、少し(さび)しくもある。


 だが、やりたい事もいろいろあるのだ。かえって良かったのかもしれない。


 そして、ガンツは工房を立ち上げるまでは、この家でゆっくりできるようにと、お父様が計らってくれた。


 「それにしても、ガンツといえば ”王国の至宝(しほう)” とまでうたわれた稀代(きだい)の天才鍛冶師だったはずです」


 「そんな者が、なぜこのような田舎町に来てくれたのか? まったく理解が追いつかん」


 と、ブツブツ言いあっているアンソニーお兄様とアルバートお父様。


 『まあ、僕とガンツの仲だから』 とは、さすがに言える(はず)もなかった。




カルロくん、お家に帰ってきました~。はい! そこ、まだ早いです。パンツから手を放してー。ちゃんと建物たてないと、ゆっくりできないっしょ。んっ、結界がある? あ~分かってないな~。大きく建てて、ごろごろ呼びたいっしょう。……分かったなら、もう少しだけ待ってね♪


誤字報告、助かっておりまーす。 うっかり八兵衛なもので。(*ᴗˬᴗ)⁾

ブックマーク、評価、感想、いいね!、などいただきますと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] ゲンガの名前、もしやゲンから? 腕にすがりつくむパターンと腰にしがみつくパターンでの距離感、ふたりとも可愛さがさく裂していますね!(*^▽^*)
[良い点] 200年ぶりの再会! すごく感動的ですね〜(๑>◡<๑) クロナちゃんも健気に待っていて可愛いです( *´艸`) 私も頭を撫で撫でしてあげたい♪ エマちゃんも天使のような可愛さ(*´Д`*…
2022/02/20 23:09 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ