13. ディレクの町
教会を出た僕たちは再び転移する。
やって来たのは、僕たちの地元 ダンジョン・スパンク である。
1階層は飛ばして、2階層から攻略する事にした。なぜなら、1階層はスライムのみで数も少ないのだ。
どのみち、僕たちには攻撃しないようにと。シロにお願いして、ダンジョン・スパンク に指示を出しているので、無抵抗のモンスターを狩りたい放題なのだ。
ダンジョンにとっては、人さえ来てくれれば目的達成なので、このようなお願いをしても、さほど影響はないとの事である。
今日はみんなで一丸となって移動し、代わるがわるモンスターを葬っていく。
途中で、ほとんど動かないスライムやコボルトを見て、
「なあ、なんでモンスターが襲ってこないんだ? おかしいだろ」
「ああ、まあ、そんな時もあるんじゃないか」
「んなものあるかー! 絶対おかしい。何かしてんだろ」
両手を頭のうしろに組んで、口笛を吹くふりで、ピーピピ~と、口で言ってみる。
「なんだそれ、口笛吹けてねーし。ごまかす気ねーだろう」
「ハハハッ、バレたか。ここのダンジョンに頼んでいるんだよ」
「マジか! すげーなー。って出来るかー!」
「僕じゃないよ。シロがだよ。だから秘密な!」
「マジか、マジなのか? いや、転移陣も無いのに転移しているしな。それに、こんなこと言ったところで誰も信じねーだろう」
▽
そして、冬休みを迎えるまでの30日間。
クロナ、ジミー、カミラの3人を それなりに鍛えあげた。
なかでも、目覚ましい成長をみせているのがクロナである。
クロナ Lv.9
年齢 8
状態 通常
【従魔】 ポンタ(スライム)
HP 28/28
MP 24/24
筋力 20
防御 17
魔防 18
敏捷 21+5
器用 8
知力 16
【スキル】 魔法適性(光、風) 魔力操作(3)
【魔法】 風魔法(2) 光魔法(1)
【称号】 王族の末裔、ポンタの主人
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
やはり、従魔であるポンタの存在と、女神さまから授かった加護の力が大きいようだ。
最年少の8歳であるのにも関わらず、身体レベルも Lv.9 まで上がり、同時期にスタートしたカミラが Lv.6 、ジミーに至ってはまだ Lv.5 である。
身体パラメーターの伸びも良く、すでにDランクの冒険者に匹敵する。
お陰で、部屋の掃除や食事の上げ下げなどの雑用にも、余裕をもって対応できるようになった。
そして、明日から冬休み。期間は40日である。
今日は午後から、クロナを連れて奴隷商館ルマンドを訪れていた。
長期間、レンタル奴隷を王都より連れ出すには、所定の手続きと、保証金を納める必要があるのだ。
そうして手続きを終え、商館を出た僕たちは家族にお土産を買うため、王都の繁華街を経由して学園に戻ってきていた。
「おう、ようやく帰ってきたか。こっちはいつでも発てるぞ」
「うん、おまたせ! じゃあ、行こうか。まず校門を出て、転移陣の施設がある方に歩いて行こう」
「おう、わかった。カミラ行くぞ」
僕たち4人は校門を出て、しばらく歩き裏路地に入ったところで周囲を確認。
全員に認識阻害の結界を施し、ディレクの町へと転移した。
「うひゃー、ホント便利なもんだな。シロを俺にくれ」
「アホか! あげないよ。それよりも、ペラペラ喋るなよな」
「ああ、それは誓って大丈夫だ。例の件も含めて、めちゃくちゃ世話になってるからな」
「それよりも宿をとろうぜ。急がないと、日が暮れてしまう」
僕たちは、すぐにアストレアの町に帰ってもよかったのだが、
ジミーから、
「どうしても、お礼をさせてくれ」
と、引き止められたのだった。
まあ、宿代も食事代も持つということなので、ここは素直に招待を受けることにした。
宿屋に荷物を預け身軽になった僕たちは、カミラさんの案内でディレクの町を巡っていく。
200年ぶりのディレクの町は、立ち並ぶ店こそ変わっているものの、町の雰囲気はそんなに変わらない。
僕はシロの背をポンポンと軽く叩きながら、なんとも懐かしい街並みを眺めていた。
案内されたのは、この世界ではめずらしく、牛肉を出すステーキ屋だった。
ジュージュー焼けた鉄板の上には、分厚い牛ステーキとつけ合わせのにんじん ブロッコリーと、ジャガイモのポテトフライ。
そして、平皿にこんもり盛った、大盛りライスだ。
食って、食って、食いまくった。
フ――! 旨かったー。
感動した! ジミーにはホント感謝だな。”白ご飯”
絶対、また来よう。
パンパンになった腹を抱えながら、店を出て宿に帰っている時であった。
ふとした瞬間に、横道の路地奥にその店を見つけたとき、僕の顔はニヤリとほころんだ。
いったん宿に戻りジミーと別れ、クロナに寝ておくようにと伝えた。
僕はシロを連れ、その店へと急いだ。
扉を開くと、少し薄暗い店内のカウンターには、ひとりのドワーフがいた。
ロング・ソードの刃をロウソクの火にかざし、片眼をあけて検品している。
そして、そのドワーフはこちらをチラリともしないで、
「ここは子供の来るところじゃねーぞ。今日はもう閉店だ」
…………。
僕はニヤニヤ笑っていた。
「なんだよガンツ、つれないなー。せっかく昔の友がこうして、会いに来てやったというのに」
その言葉に、ガンツと呼ばれたドワーフは見ていた長剣から目を離し、こちらを向いて怪訝な表情を浮かべるのであった。
クロナ、強くなったな。それだけ加護とシロ、ポンタの影響が大きいんだな。そろそろ上の階層(10階層以上)に行かないと、上がり辛くなるなー。フロアボスに挑戦だな! しかし、みんなと足並みを揃えていくから、もう少し先になるかな。そして次回、懐かしのガンツの登場だ。ドワーフの寿命は800年前後、子供もできにくいのだ。性欲あんのかー? な感じらしい。
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