12. ダンジョンへ行こう
クロナは僕の夕食を運んで来たり、僕とシロが食事をしている間は自分の荷物を片付けていたのだが。
気がつくと、畳んでいた下着を握ったまま、ベッドの上でスースー眠りこけていた。
あ~ぁ、寝ちゃったか。
まあ、小さいのに良く頑張った方だろう。
このまま放っておく訳にもいかないので、服をぬがせてやり、ルームウェア用の貫頭衣を着せ、布団をかけてあげた。
着ていたメイド服も起きたらすぐ気付けるようにと、ハンガーを通し衣紋掛けにかけておいた。
ぺしぺし。『さんぽ、おきる、はやく、うれしい、いく、おそと』 ううん、うー、朝か~。
「おはよう、シロ。顔を洗ってくるから、クロナも起こしてあげて」
そして僕がトイレと顔洗いを済ませ戻ってくると、クロナはすでにメイド服に着替えており、僕に頭を下げてきた。
「昨日はカルロ様より先に寝てしまって申し訳ございません」
すでに涙目になっている。おまけに、グ~~~とお腹がないている。
「す、すいません。すいません。はしたないところを」
と、顔を赤くして頭をさげているが、再び、グ~~~~。
「お腹すいてるよね。昨日の晩は食べずに寝ちゃったから、これをお食べ。朝食までもたないよね」
シロに頼んで、インベントリーから牛丼弁当をテーブルに出してあげた。
そして、今日の散歩は学園内を回り。朝食をとったあと、グリーンブレザーを羽織って指定の教室へと向かった。
教室は、大学の講義室のように後ろにいくにつれ、段が上がるような机の配置になっている。
特に席は決まっていないようなので、適当に真ん中ほどに腰掛けた。
シロはクロナと一緒に部屋に残してきた。
従魔といえども、さすがに教室に入れるのは気が引けたからだ。
すると、ツンツン短髪の男子が前の入口より入ってきて、キョロキョロ周りを見回している。
そうして、僕の存在に気が付くと、
「おお~い! カルロ~」
あいつはまた……、バカでかい声で僕の名前を叫び、右手をブンブン振っている。
おまえは、犬か! まったく……。
僕が軽く手をあげると、ニカッと笑顔で近づいてきて隣りに腰掛けた。
「おはよー、ジミー」
「おうっす、カルロ。ひとりで行くとか、ひどいじゃないか」
しかし、一緒に行くとは約束していないのだ。言いがかりだぞ!
「そうか? 早く起こすのも申し訳なくてな。おまえ寝ぼすけだろう」
「ううっ……。なぜそれを?」
「昨日、カミラさんに聞いたんだよ」
そして、授業が始まった。
まだ10歳の子供に詰め込むようなこともなく、ゆるい感じで進んでいくようだ。
授業の方は、冬休みまでの30日は午前中までで、午後からはフリーになるのだ。
そこで僕は、昼食を一緒に食べようとジミーを部屋にお誘いした。
せっかくの午前中授業。
午後からの時間を有意義に使うべく、ダンジョン探索を提案したのだ。
「ええっ、ダンジョン! 入れるのか? 冒険者にならないとダメなんだろ」
「うん、そうだけど。ひみつの裏技があるんだ。ジミーさえよければ、一緒に潜ってみないか?」
「でも、オレたちだけで危険なんじゃないのか? 行ってはみたいけどさ」
「大丈夫だ。こっちにはシロもいるし、カミラさんやクロナも一緒でどうだ」
すると、今まで後ろで静かにしていたカミラさんが、
「坊ちゃま、ダンジョンなどいけません! とても危険な所なんですよ。ケガもそうですが、万一の事が起こっては取り返しがつきません」
「いくら、シロさんが一緒でも許可できません! ダメですよ!」
――ものすごい剣幕だ。
この世界では、ダンジョンがどのような存在で、どのように危険であるのか。
特に ダンジョン・ディレク の近くに住むヘンドリーセン家にとっては、どこよりも正しく認識できているのだろう。
まあ、当然なんだけどね。
そこで僕は、シロのインベントリーより、武器であるダガー、ショートソード、短槍、ナイフ、クナイなどをベッドの上に広げた。
また、子供用の革鎧、ローブ、ヘルム、ブーツ、各種ポーションが入ったポーチなどを披露していく。
「せめて様子見で、1階層の見学ぐらいならいいんじゃないか」
「スっ、スゲー。これ貸してくれるのか?」
「もちろん! そして秘密を守れるなら、一揃い渡せるよ。初めての友達にプレゼントだな」
「もちろん、カミラさんにも……ねっ」
そこで、頻りにダガーやクナイを見ていたカミラさんの肩がビクッと跳ねた。
これでどうやら、ご承知いただけたようだな。チョロリーン♪
さっそく僕たちは準備を整え、部屋に集まると。女神さまが祀られてある、ディレクの町の教会へ転移した。
もちろん、目立たないように路地裏にだ。
すると、その教会を見たカミラさんが少し動揺している。
ここが何処であるか、察しがついたのだろう。
それに構わず、僕たちは教会に入りみんなで祈りを捧げた。
ここで何をしているのか? というと、創世神である ”女神のユカリーナ様” にお願いして、祝福や加護を授けてもらっているのだ。
これには、いくつか条件があって誰しもが頂けるものではない。
・聖域であること、
・創世神であるユカリーナ様が祀られていること、
・聖獣フェンリルであるシロが一緒であること、
祝福か、加護かにおいては、女神さまとシロにおいての ”想いの強さ” で変わっているようだ。
ただ、勇者や聖女のように、生まれついての加護持ちも稀に存在している。
祈りを捧げた時。クロナをはじめ、ジミーもカミラさんも、身体がうっすら輝いていたので、何かしら授かる事ができたようである。
チョロリーン♪ って確かに護衛メイドとしては性能の良い武器や自分の得物には興味を示すでしょう。でも、やはりシロの存在が大きいのです。シロが居てくれるだけで、周りの者は不安というものが和らいでいくのです。絶対的な存在感がそこにあるのです。(∪^ω^)きょうはまじめ♪
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