表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/137

128.会場

 何処(どこ)かの町中(まちなか)で会ったのだろうか? 


 皆目(かいもく)見当がつかず、僕が眉間(みけん)にしわを寄せていると、


 「おお、すまんすまん初めてだったよな。俺は『バランの町』とあの一帯を納めている領主で アドロック・バランタインだ」


 簡単な自己紹介を終えたアドロックは、ニカッと人懐(ひとなつ)っこい笑顔を僕に向け右手を差し出してきた。


 その紹介を受けた僕はソファーからすぐに立ち上がり、


 「自己紹介をありがとうございます。僕はこのたび伯爵(はくしゃく)となりましたカルロ・アーガルムと申します。どうぞ よろしくお願い致します」


 と、こちらも笑顔でアドロックと握手を交わすのであった。


 それからアドロックは隣りのソファーに腰を落ち着けると、どうして僕を知っていたのかなどを気軽に話してくれたのである。


 それで、じっくり話を聞いてみると、


 昨年のスラミガ帝国によるザルツ島侵攻(しんこう)の際、アンリエッタ率いる増援部隊(ぞうえんぶたい)がバランの町に駐留(ちゅうりゅう)していたのだが、その時分に話を聞いていたそうなのだ。


 もちろん、アンリエッタ本人からである。


 なんでも、現国王のルシード様とアドロックの父であるジョージ様は旧知の間柄(きゅうちのあいだがら)だったそうだ。


 そんな家族ぐるみの付き合いをしていた関係で、アドロックとアンリエッタはお互いのことをよく知っていたということだな。


 ふむ……、思い返してみれば確かに変ではあったよな。


 いくら同じバランの町に居たとはいえ、王女であるアンリエッタが気軽にホイホイ出て回れるものなのか?


 たとえ 出て回れたとしても、うら若き王女様が ”もっさい倉庫” に度々(たびたび)出入りしているのだ。


 こんなことをしていれば(あや)しまれて当然ではないか? ――普通に考えて。


 なるほどなぁ、幼馴染み(おさななじみ)のように親しい間柄(あいだがら)であれば あの行動も可能だったわけだ。






 「そんなわけで、カルロのことはアンリエッタから聞いていたのさ」


 「なるほど、そういうことだったのですね。どうりで、アンリエッタ様が気軽に出歩けたのですね。本当に大丈夫なのかと、内心ひやひやものでしたよ」


 「…………」


 「ん、えっと、何か?」


 「いやな、もう少し(くだ)けて話さないか? 俺は17歳だ、カルロもそんなに変わらないだろう。親父が亡くなって まだ1年。俺も後を()いだばかりなんだよなぁ」


 「……うん、わかったよ。それじゃ僕もアドロックと呼ばしてもらうよ。年齢は一つ下の16歳だ。改めてよろしく」


 「おうおう、それでいい。賢っ苦(かたっくる)しいのは苦手なんだよ。こういう所に来るのも……なっ」


 「お、奇遇(きぐう)だな。僕もこういうのは苦手だな」


 それから2人は意気投合。アンリエッタのことをはじめ、様々な話をしていくのであった。






 その頃、ホテルに残されたリンたちは『鬼の居ぬ間に洗濯』とばかりに 思う存分(くつろ)ぎまくっていた。


 「にゃ~~~、お留守番は最高ニャ~~~。ヤカン様もユキにゃんもそう思うニャン」


 「フフフッ! 主様(ぬしさま)もセバスさんも居ないからって盛大にだらけていますね。まあ、部屋の片付けや洗濯などはお昼までに終わらせていますから良いとは思いますがね」


 「ウォンウォン!」


 「にゃにゃ、ヤカン様もユキにゃんも分かってるのニャ。たまにはのんびりするのも良いのニャン」


 この3匹(・・)が何処に居るのかというと……。


 カルロが使っている寝室のベッドの上である。


  尻尾をゆらゆらさせながら、仲良く並んで寝ているのだ。


 「ご主人様の匂いは良い匂いニャ、こうしているとウトウト眠くなるのニャン」


 「そうですね、たしかに主様の匂いには(いや)されますねぇ」


 「ウォンウォン!」


 そのように、カルロのベッドに3匹で寝転がりマッタリしていたその時である、


 ――カリッ! カリカリカリッ。


 天井から聞こえてくる奇怪(きっかい)な音! 


 ――カリカリッ! カリカリカリカリカリッ。


 すると、同じような音が違う所からも聞こえてくるではないか。


 「にゃにゃ、ねずみ (刺客) が出たニャ。結構な数いるのニャン」


 「これはいけませんねぇ。主様の安眠(あんみん)(さまた)げになるやもしれません」


 「ウォン、ウゥ――!」


 「ユキにゃん落ち着くニャ、あちきは宿の女将(おかみ)交渉し(おしえ)てくるニャン」






 いよいよ晩餐会(ばんさんかい)が始まるようだ。王宮付きの執事(しつじ)や案内係のメイドが奇麗(きれい)に並んでサロンの中へ入ってきた。


 そうして、部屋の外で待っていたクロナにシロとピーチャンを(たく)し、晩餐会が行われる会場へと入っていった。


 うっ、(まぶ)しい! 一瞬だが目を閉じてしまった。


 そして、ゆっくり(まぶた)を開いていくとドドーンと広い空間の天井には巨大なシャンデリアが中央に1基。


 さらに、それを取り巻くよう大きなシャンデリアが十字方向に4基設置されている。


 それは、色とりどりにキラキラと(かがや)きを放ち、とても奇麗なのである。――眩しいけど。


 その一方で下に目を向けても、これまた見事な文様(もんよう)(ほどこ)した毛足の長いふかふかな絨毯(じゅうたん)


 ――(すご)い! これは素直(すなお)にそう思わせる室内演出だよな。


 というか、いくら掛かったんだよ! と、野暮(やぼ)なことを聞きたくなるほど豪華絢爛(ごうかけんらん)で凄いのだ。


 並べられた丸テーブルには椅子(いす)が5脚づつ(そろ)えられ、真っ白なクロスの上には 中央にキャンドル、それを囲むように各種グラスと銀製のカトラリーが規則(きそく)正しく並んでいた。


 僕は入口付近でクロナたちと別れたのち、案内されるがままに上座のテーブルへ着席するのだった。




アドロックといえば、『ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん』ですよねぇ。懐かしい! バランの町においてティファニアはともかく、アンリエッタまで自由に動けていたのは領主をよく知っていたからですね。しかし あまり喋ってるとアンリエッタの件でいじられそうですが。 アドロックのバランタイン領はカルロのシンゲン領(仮)とは隣り同士ですからこれからは長いつき合いになることでしょう。



ブックマーク、評価、感想、いいね! などいただきますと励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! カルロ君、フレンドリーな青年領主と仲良くなるの巻♪ もふもふ好きだと良いですね~ ……ダンジョンでレベルアップ&温泉ツアー、決定ですね!(ニヤリ) [気になる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ