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11. 友達

 商業ギルドに行っていたアルバートお父様が宿に帰ってきた。


 そうして、再びレンタル奴隷の説明を、お父様にしていくことになった。


 しかし、そこはエレノア母様がうまく取りなしてくれたおかげでスムーズに話が進み。


 クロナは無事、僕のメイドとして(むか)えることができた。






 そして、忙しい王都での日々は瞬く間(またたくま)にすぎ、いよいよ学園に入学する運びとなった。


 僕は学園の敷地内にある寮にシロ、クロナと共に入った。


 部屋の広さはシティホテルのツインルームに机を置くスペースがあるくらいだろうか。

 

 思ったより(せま)い。


 まあ、男爵や子爵あたりだと妥当(だとう)なところなのだろう。


 シャワーブースが付いてるだけありがたい。(おけ)やタライではな……。


 なんにせよ、この寮に入るのは下級貴族のみになるから、良く有りがちな上級貴族とのトラブルもおこらないので気楽でいい。


 上級貴族の子息は王都内にそれぞれ邸宅があるので、そちらから毎日馬車に乗って通ったり、程近い所は従者と共に歩いて通う者もいるようだ。






 食事の方は朝晩2食付きだが、これに従者の分は含まれていない。


 従者は学園の食堂を利用できないので、学内の売店で購入するか、定期宅配を頼むような流れのようだ。


 学年は3学年。1学年は4クラスに別れており、1クラス30名で構成されている。


 授業は4日行って1日休みのサイクルで、冬と夏に大きな休みがある。


 そして、従者だが。


 仕事としては、主人の身の回りの世話をおこなう。


 具体的にいうと、主人の食膳(しょくぜん)の上げ下げ。


 服の洗濯 部屋の掃除 教材の買い付け、各連絡事項の通達などがあげられる。


 待機場所としては自室で待つか、授業を受ける教室の廊下で待つことになる。


 そして、朝は主人より早く起きて、衣服を整え。


 晩は主人が眠りについてから自身の事を終え休む。そんな感じになるだろうか。






 「クロナ。持ってきた荷物の整理はすんだかー?」


 「はい、カルロ様の分はおわりました。あとは自分の衣服が少し残っておりますが」


 「それじゃあ、残りは夕食後にするとして。明日からは授業もあるし、明るいうちに学園内を一緒に見て回ろう」


 「はい! かしこまりました。お供いたします」


 メイド服を着たクロナは(たた)んでいた衣服をベッドに広げたまま、黒い尻尾をクネクネしながら、嬉しそうに近づいてきた。


 そして、その横ではシロも尻尾をブンブン振っていて、行く気マンマンのようだ。


 僕も学園指定のグリーンブレザーを急いで羽織(はお)り、カギをもって廊下に出た。


 そしてカギを掛けようとガチャガチャしているところに、


 「よう! お隣さん。これから学園探検かい? よかったら一緒に回ろうぜぇ」


 ドアのカギを掛けてから、僕が顔をあげる。


 ブラウンでツンツン短髪の、いかにも活発そうな男子が、興味深かそうにこちらを見ていた。


 言葉どおり、隣部屋の住人なのだろう。


 後ろでは、僕らより幾分年上なメイドさんがしっかり腰を折り挨拶していた。


 「おう! それは心強いな。僕はカルロ、カルロ・アストレアだ。そして隣に居るのが、相棒のシロ。後ろがメイドのクロナだ。これからよろしく!」


 「おっ、おおう。丁寧にゃあいさついたみいる。ぼくはジミー、ジミー・ヘンドリーセンだ。後ろに居るのはカミラ。怒らせると怖いのだ」


 ジミーはカミカミながら、なんとか自己紹介を終わらせた。


 まあ、そこは10歳児なのでしかたがない。


 それよりも余計なことを言ったおかげで、後ろでカミラさんが髪を(ふく)らませて、(にら)んでいるわけだが……。






 握手を交わして、学園初の友達になった僕らは連れだって学園内を巡っていく。


 まず初めに明日から使う教室を確認し、体育館や職員棟などを見学していった。


 そして、一通りまわり終えた僕らは食堂脇にある喫茶(きっさ)コーナーで、お茶をしながら談笑(だんしょう)していた。


 ここの喫茶コーナーは意外と広く作ってあり、手前側にスタンドテーブルが並んでいる。


 奥側は、一段の段差がありサロンのようになっている。


 これはおそらく、うっかりサロンの方に座わろうものなら……。 


 オオ――ホォホォホォ! とかが出てくるパターンなのだろう。


 なんとなく、そう感じて僕たちは手前のスタンドテーブルに立って、紅茶を飲みながら楽しく話をしていた。


 「それでカルロはどの辺から来たんだ?」


 「うん、僕は山向(やまむこ)うのガルバドの南だよ。めちゃくちゃ辺境(へんきょう)だよ」


 「えっ、ガルバド! うちも山向う、隣のソレモンだぞ。お互い南部なんて、奇遇(きぐう)だな。いやー、驚いたよ」


 と、握手を求めてくる。僕もそれに応じながら、


 「へー、ホントだな。部屋も隣だし、ソレモンはどのへんだ?」


 「おう、俺んちはモレスビーだ。知ってるか?」


 「モレスビーか。ダンジョン・ディレク の近くじゃなかったか」


 「おう、そうだそうだ。よく知ってるなー、来た事があるのか?」


 行った事はある。ただし、200年以上も前であるが……。


 「いや、聞いたことがある程度だな。すると、ディレクを通って王都まで?」


 「おうよ、初めて来たが、あっという間だった。転移陣は便利だよなー」


 そんな感じで、夕食の時間までダベってしまっていた。


 まあ、はじめて王都の学園で友達ができたのだ。


 この日ばかりは仕方がないだろう。


 ただ、8歳のクロナにおいては立ちながらにして、眠りこける寸前だったようであるが……。




 カルロはじめての友達はツンツン頭のジミ・ヘン。次回より、授業が始まりますがゆる~い感じです。その余った時間を利用して、何かを企んでいるようです。



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挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[気になる点] ジ、ジミヘンがチリチリパーマの黒人じゃないだと……!?
[良い点] ツンツン頭のジミ・ヘン。 紫の煙を吐きながらギターを弾きそうな名前ですね! 学園編も楽しみですヾ(≧∀≦*)ノ〃
[良い点] ジミヘンだけどクルクル頭じゃないのですね(*'ω'*) ご近所さんのお友達ができてよかった◎
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