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114.アーガルム(挿絵)

 季節はもう秋の気配。僕はこのたび伯爵(はくしゃく)へと陞爵(しょうしゃく)した。上級貴族になったと同時に領地(りょうち)(たまわ)ることとなった。


 その領地とは、もうお分かりだろうが ダンジョン・スパンク を中心としたエリアが今回僕の領地として王国より移譲(いじょう)されることになった。


 この ダンジョン・スパンク は大陸を分断しているオリゴン大山脈の(ふもと)に位置しており、もともとはクルーガー王国の国外であった場所なのだ。


 とはいえ、他の国が支配する場所でもないため、ダンジョンが発見された5年前より開発が進められており領土拡大を(はか)っているところである。


 あのド辺境(へんきょう)の町アストレアから さらに馬車で4日行った超が付くド辺境にある為か、いくらダンジョンが発見されているとはいえ、誰も引き受け手がいなかったのである。


 実際のところ、このあいだの陞爵を祝う晩餐会(ばんさんかい)においても、領地の話をするだけで他の貴族からは同情するかのような視線が向けられてくるのだ。


 「そうか、(しっか)りな」と、何回(かた)(たた)かれたことか。


 新参者(しんざんもの)であるため多少のやっかみはあるものの、大きな軋轢(あつれき)は避けられそうである。


 そして、家名なのだが、あれこれ考えた末に『アーガルム』とした。


 名前をくっつけると、カルロ・ジ・アーガルム 。


 まず、「アー」の部分はアストレアそしてアースから来ており、ガルムの方は北欧神話(ほくおうしんわ)に登場する番犬の意味を持つ。


 紋章(もんしょう)の方もカイトシールドをベースにデザインを上げて王国へ提出済みである。


挿絵(By みてみん)







 それで、カルロ伯爵邸についてになるのだが、場所は迷宮都市(めいきゅうとし)スパンクを見下ろす形で温泉施設(おんせんしせつ)のある西側斜面(にしがわしゃめん)の一角に建設していた。


 「カルロ様、こっ、これは? あなたはいったい……」


 犬人族(いぬびとぞく)のセバスタンである。


 久々の登場で、忘れているかもしれないがカルロ邸の家宰(かさい)である。今回、こちらの本邸(ほんてい)(きょ)(うつ)すべくカルロと共にこちらに来ていたのだ。


 そして、今から入るべく建物を見て驚愕(きょうがく)していたのである。


 「セバス、どうかしたのか?」


 「どうかしたも何も、目の前のこれはディレクの実家と同じ建物のように見えるのですが……」


 「うん、まあ、一緒だな。中の作りもだいたい同じだと思うぞぉ」


 「シロ様が()られる時点で不思議に思っておりましたが、やはり……」


 「まあ、その辺の話は今度ゆっくりな。だから、今は騒がず引っ越し作業の方を進めてくれ」


 「は、はい、かしこまりました」


 今、セバスが言うようにこの建物はディレクにあるツーハイム邸と同じ物になる。


 何故(なぜ)そんな事を? 断然(だんぜん)楽だからである。一度作り出したものであれば二度目はほぼ一瞬で作ることができるのである。


 (さら)に理由をつけるとするなら、住み()れているからである。


 王都のカルロ邸の方も今回伯爵へ陞爵するにあたり(やしき)を大きくする必要がある。


 なので、中の家具などを片付けたあとはこのように作り変えたいと思っているのだ。






 スパンクへの引っ越し及び王都別邸(おうとべってい)の建て替え作業などは、冬を(むか)える前にどうにか終わらせる事ができた。


 これでようやく、自分の町をじっくり観察できるな。


 シロと散歩がてらに町を見ていく。王国が派遣(はけん)していた代官からの引き継ぎを受けながら見る。


 冒険者の装備を身に着け、冒険者ギルドやダンジョン広場 そこに(いた)るまでの沿道(えんどう)の様子なんかも見る。


 今度は一般町人の格好(かっこ)でクロナを連れて商人ギルドや実際に商店を回り、商品価格の確認や食品を売っていればその食品の鮮度(せんど)なんかも見ていく。


 夜はガンツを連れ、酒場に顔を出しては店の雰囲気や酒の味と価格などもチェックしていく。


 そして最後に、テリュース兄を連れ『真実』の検証にも余念(よねん)がない。これは重要案件と認識(にんしき)、3日続けて隅々(すみずみ)まで見て回った。


 さらに、4日目もと思ったところで(おこ)られた。テリュース兄もこってり(しぼ)られている。いつの間にエレノア母様がいらしていたのだろう。謎だ!


 とりあえず、ほとぼりが冷めるまで『真実』の検証は棚上(たなあ)げされることとなった。






 次の日からは城壁(じょうへき)の外側に作られている農業区画(のうぎょうくかく)を見て回った。


 ダンジョンが地熱を調整してくれるので、いろいろな作物が植えられ育てられている。


 さらに、衛生面(えいせいめん)においても考慮(こうりょ)されており温泉による共同浴場(きょうどうよくじょう)随所(ずいしょ)(もう)けられているため、みんなが清潔(せいけつ)に暮らしていけるようだ。


 しかも、中は『混浴(こんよく)』になっているそうだ。これは是非(ぜひ)とも検証をと思ったのだが止められた。――クロナに!


 「検証しなくとも、皆さん仲良く入っています!」


 とのことだが、見ないと分からないのでは? ……と、言える雰囲気ではなかった。


 「それが何か!?」


 はい! そ、そうだよねぇ~。見なくても聞けば良いんだもんねぇ、検証の必要なんかありましぇ~ん。


 頼むから、片目だけ赤く光らせないで……寿命(じゅみょう)(ちぢ)みそうだからねっ。(大汗!)


 このようにして、迷宮都市スパンクの視察(しさつ)余計(よけい)な検証作業はしばらく続いていくのであった。




カルロついに上級貴族の伯爵になりました――! °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°他貴族の皆さんからは同情というか、おそらく鼻で笑われていますね。家名は『アーガルム』です。決して、アーガマではありません。『ヘンケン艦長が死んだの……』 おお、なんだ!? 亡霊か? カルロはもう少し『真実』の検証がしたかったようです。 それにしても、誰よママン呼んだの?



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アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
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