113.浜焼き
「また後でな」と、リンと別れ 僕は浅瀬と干潟コーナーにやってきた。
おお、これまたスケールのでっかいことで……。どのくらいあるんだ?
海岸線の幅は優に1kmはありそうだな。本格的というか、もう普通に干潟なんですけどね。
奥行きは浅瀬の先に地平線が見えているから4km以上はあるのだろう。
ここで、ガタリンピックを開いても盛り上がりそうだよな。今度、アンリエッタに話しておこう。
それはそうと、あいつら何処にいるんだ~? こう広いと探すのも一苦労だな。
んん~、どこだ~。いたっ!!
あんな所まで……。しかたない、行ってみるか。
僕は靴と靴下を脱ぎインベントリーに入れると、パンツを膝まで捲り上げて干潟の中を進んでいった。
すると、まずシロが気づいたようで尻尾を振りながら此方に向かってワンワン吠えている。
しかし、みんな見事にドロんこだなぁ。これでは距離が離れたら何処にいるのか分からないよな。
すると、シロの周りに居たみんなも僕に気づいたのか一斉に駆け出してきた。
お、おい! まてまて、落ち着け! あっ、ああ――――――!
あーあ、嬉しいのは分かるけど みんなで突っ込んでくるのは止めようね。
お陰で、服も顔もドロだらけ。鼻の中にも入ったじゃんよー。
…………ハハッ、ハハハハハッ。吹っ切れたぞー。
お前たち覚悟しろ――――!
まあ、ドロんこ遊びなんか、ドロを掴んで投げ合うか抱きついてゴロゴロやるぐらいしかないのであるが。それでも、童心に帰って楽しいひと時でございましたぁ。
浜辺にあがってくると、髪はバッサバサ。口の中はジャッリジャリ。
ダイゴと一緒に服を脱いだ後は、水魔法が使えるヤカンに頼んでシャワーのように水をかけてもらった。――うぅ、サッパリ!
そして、ようやく戻ってきたポンタがスコップとザルを運んで来てくれていた。
おお、どれどれ~。
ザルの中を覗いてみると、ほほう結構採れるものだよなぁ。
あさり、はまぐり、二枚貝? 巻貝? 小蟹、磯ニナ、とまあ様々な貝がたくさん入っている。
よしっ、昼は浜焼きにすんべー。
醤油も練りワサビもまだ残っていたはず。うまい刺身を食わせたるわー!
その後はみんなを集めて貝は網の上で浜焼きにし、魚はさばいて刺身にと たくさんの海の幸を満喫することができた。
しかし、これはあれだ! そう、冷えたエールがあれば最高だったよな。
あとは、イセエビやアワビ、サザエなどが獲れる素潜り『アマちゃんコース』も是非、考えていただきたい。浜辺で海老マヨとか最高すぎる。
次回はアンリエッタにしっかりと進言することにしよう。
そして休み明けの翌日、僕は王宮から呼び出しを受けた。
さっそく要請を受けるかたちで直ちに王宮へ参内してみると、アースレット様とロイド様に並んで迎えられた。
まあ、アースレット様とロイド様はご夫婦なので一緒に居られても何も不思議ではないのだが、呼び出しを受けての対応としては珍しいことなのだ。
んん、何かあったのかな?
それにしては、二人からは緊迫感などは感じられないのだ。
いったい、何であろうか? あれこれ考えを巡らせているとアースレット様が口を開いた。
「今日は急に呼び出して済まないね。今回来てもらったのは、君の陞爵が決まった事を知らせるためなんだよ」
「カルロくん……あっ、もう成人したのだから呼び方は変えないといけないわね。カルロ様おめでとうございます」
「あ、はい、どうもありがとうございます。今回、急がれているのはやはり……」
「まあ、それもあるけどね。先頃ようやくザルツ島やローザン王国の情報が届いてね、君の出している報告書の裏付けが取れたからでもあるんだ。しかし、『何もない上空から謎の火の玉と謎の雷が降り注ぎ……』って、こんなこと君しか出来ないよね? 『神の怒り』とか書かれているんだけど」
「…………」
「それからローザン王国でダンジョンが発見されたと報告が来ているね。2ヶ所も。一つは山に囲まれた所、もう一つは海の底。普通では到底見つけることは不可能だとあるね。そして、山に囲まれた方のダンジョンには いつの間にか立派な街道が備わっていたのだとか。さらには、その道の形状が我が国のアストレアからダンジョンに伸びる街道に酷似しているとあるね」
「…………」
「それでねカルロ様。この事実を鑑みて、ローザン王国の王室が今後どの様に動いてくるのか? 予測を立てて後手に回らないよう対処しているのよ。今回、クルーガー王国の諸侯にはかなりぶっちゃけて話を通しているから断るのは無しでお願いね」
「はい……、心得ました。お二人に従います」
その後は、陞爵式典の日程や晩餐会進行の説明。
そして、今回は伯爵への陞爵ということで新しい家名と紋章 (エンブレム) を決定し王宮へ提出するようにとのお達しだ。
打ち合わせ後は宰相様のところへ寄り、我が国の家名と紋章が載った分厚い名鑑をお借りしてカルロ邸に戻った。
砂浜から地平線が見えていますよね。あれって意外と近くて、4~5km程なのです。ガタリンピックが行われているのは佐賀県鹿島に面する有明海です。ムツゴロウでも有名ですね。素潜りは普通の人で5m程が限界でしょうか。息継ぎや魚を追う事も考えれば2~3mてところでしょう。
ブックマーク、評価、感想、いいね! などいただきますと励みになります!!




