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100.釣り

 そして翌日。こちらに来てから4日目の朝を(むか)えた。


 僕たちは朝食を済ますと、今日は戻らない(むね)女将(おかみ)に伝えて宿屋を出た。


 北門を抜けて外に出た僕たちは、人気のない森に入るとシロに(またが)り北へと向かった。


 ザルツ島へ向かう訳でもなし何をやっているのかというと、ダンジョンから伸びている地脈(ちみゃく)を探しているのだ。


 すると、5分も経たない内にシロは速度を(ゆる)めた。どうやらこの(あたり)が地脈のラインにあたるようだ。


 「シロ、地脈に入ったのなら海岸線ギリギリの所に出すように言ってくれ。転移の前に光学迷彩(こうがくめいさい)も一緒に頼む」


 そう命令すると、すぐに僕たちは砂浜の波打ち際(なみうちぎわ)に立っていた。


 周りをクルリと見渡すと南側には軍港が見えており、たくさんの船が停泊(ていはく)しているようだ。


 ああ~、あと2キロ程だったよ。――おしい!


 しかし、町からそれ程離れていないし、温泉なんか掘ったら何かしらやっていけそうではあるよな。地下に秘密基地(ひみつきち)を作っても面白そうだ。






 それで、ここから先の海に ダンジョン・ムラカミ があるんだよな。


 「よし、行ってみるか! ピーチャンは巨大化、背に乗ってから ダンジョン・ムラカミ の上空1000mに出してもらおう」


 ん、どした? ああー、1000mを説明しているのね。


 しかし、何気にスゴクね。シロは理解しているんだよな。まあ、言葉が解る時点で今さらではあるか。


 それから程なくして僕たちは海の上に転移した。


 おお~、一面すべて海ですなぁ。おや? 陸が薄っすら見えているぞ。


 ええっと、太陽の位置がこっちだから、……北側かな。


 ということは、あれが『ザルツ島』になるわけだ。


 まあ、ザルツ島には後で行くとして、せっかく ダンジョン・ムラカミ の上に来ているのだ。


 「ちょっと寄ってく!」






 仕事帰りに飲み屋に寄るような感覚で言っていると、


 ――ゴゴゴゴゴッ!!


 な、なんだなんだ。どうしたんだ?


 グルグル旋回(せんかい)を続けているピーチャンから下の海面を(のぞ)いてみると。


 …………!!!


 ナニコレ!? マジで怖いんですけど~。


 い、いや、これは(すご)いですよ。モーゼの海割(うみわ)りもかくやあらむ。


 簡単に言うと、ホール。「穴」だよね。


 海に穴が()いているのだ。どの位だろ? 直径30mぐらいかな。


 何のためにこうなったかは分かるのだが。ただ『入りたいか?』と聞かれれば、絶対にNO! 無理です。


 だって底なしのように真っ暗なんだよ。……やだよ、お家に帰りたい。


 しかし、無常(むじょう)にもピーチャンは穴に突撃していった。






 ……そうだったー。この2匹はこういうものが大好物だった。


 これも温泉施設(おんせんしせつ)のウォータースライダー感覚なのだろう。


 だから、気をつかってゆっくり行くなんて事もない。


 僕たちは、ダンジョン・ムラカミ の階段前広場(かいだんまえひろば)絶叫(ぜっきょう)と共に降り立った。


 そして、ダンジョンリビングへと転送してもらった。


 まだ何も設定されていないため 一面真っ白な空間が広がっているだけだ。


 これでは、どうにも落ち着かないので草原に変えてもらうことにした。


 その草原に僕は転がるように寝ころんだ。


 すると、シロも伏せ(ふせ)の状態で寄り添(よりそ)っている。


 それからは、ダンジョン・シンゲン の時と同じように基本的なことを決めていきながら打ち合わせをしていった。


 先ず、ダンジョンの中には海水が入ることはないようである。


 ただ、階段前の広場が使えないため、外からの来訪者(らいほうしゃ)各階層(かくかいそう)に直接転移することになるだろう。


 そして、このダンジョンは海の中に存在しているのだ。


 ということは外気が遮断(しゃだん)されているわけで、もうひとつの疑問は空気の供給(きょうきゅう)であった。


 これがないと それこそ話にならないからだ。


 しかし、こちらの方も特に問題はないらしい。


 というのも、ダンジョンは元々空気を作り出す機能を備えているからである。






 それでも、ダンジョン・ムラカミ は海中にあるので他のダンジョンと違いかなり不利になっている。


 そこで僕は、逆にこの海を利用するような施設の企画(きかく)をあげてみることにした。


 えっ、水族館? ああ、それも良いかもしれないが、この世界において魚は食べ物以外の何ものでもない。


 僕が考えているのは、ズバリ『釣り堀(つりぼり)』である。


 まあ、釣り堀といえば(こい)を連想してしまいがちだが、海の魚を対象にした海洋釣り堀なんてのもあるのだ。


 たまの休みに、家族で釣り堀。――最高かよ!


 この世界における魚釣り事情はどういうものかというと、魚や海洋生物の中にも魔獣(まじゅう)が生息しており油断すれば襲われたりもする。


 そもそも町から一歩外に出ただけで魔獣や(けもの)に襲われる危険があるので、人々は滅多(めった)に外へ出たりはしないのだ。


 そんなリスクが存在している中で釣りをするのも命懸(いのちが)けなのである。


 しかし、『釣り堀』ならどうだろう。魔獣の出ない空間で安全に釣りを楽しむことができるのだ。


 これは、やるしかないでしょ!


 とは言うものの、上でドンパチやっているのに釣りもへったくれもないだろう。


 スラミガ帝国には早々に撤退してもらい、ゆったりと釣りや温泉を楽しみたいものだ。


 お(うち)で待っているクロナやリンのためにも、お魚いっぱい持って帰らないとね。




今回はザルツ島に行く前に、ダンジョンの地脈リンクが確り機能しているかの確認だったようです。しかし、ダンジョンで「釣り堀」ですか。まあ、ダンジョン・ムラカミの周りは海ですから魚は取り放題ですよね。しっかり選別してやれるのであれば、上手くいきそうですけど。さて、いよいよザルツ島ですが……。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  ☆◇☆祝100話☆◇☆ 釣り堀の魚が100種類か、常連客が100人できるかな♪ セキセイインコって、無鉄砲というか、無駄に度胸がありますよね… カーテンレールから、床に置いてたティ…
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