97. シンゲン
※第1部 資料1.★ローザン王国・ザルツ島★を新たに追加! 今回のダンジョンの配置等がまるっと分かります。U•ɷ•)ฅ
ぺしっぺしっ、『いっぱい、おきる、あそぶ、とぶ、たべる、おにく』
ううん、もう朝かぁ? 昨夜は野営にもかかわらず爆睡してしまった。
というのも、このベッドが暖かく快適すぎた。ひとたび横になれば1分で眠りにつける自信があるわw。
それほど、ピーチャンベッドは素晴らしい一品なのである。この上質な羽毛が全身をやさしく包み込むのだ。こりゃたまらん! おやすみ~。
ぺしっぺしっ、『おきる、うれしい、あそぶ、ねるな、おにく、たべる』
はぁ~い、起きま~す。やっぱ無理! おやすみ~。
というような やり取りを3度ほど繰り返して、ようやく僕はピーチャンベッドから身体を引き離すことができた。
朝食をとり後かたづけを終えると、朝焼けに染まる東の空に向かい僕たちは飛び立った。
そうして、何事もなくゆったりと空の旅を満喫していると突然シロが吠えだした。
朝から東へと進み2刻 (4時間)ほど過ぎた辺りである。
僕は、ピーチャンから少し身を乗り出して下を覗き込んだ。
んん、……ピーチャンから覗いた地上には、高さはわからないが山々が続いている。
いわゆる山脈と呼ばれるものである。
「シロ、山しか見えないけど何かあったのか?」
『いく、あそぶ、おりる、もぐる、たのしい、ひろば』
「ええ、そうなのか? よくわかったなぁ、偉いぞ」
シロをモフリながら、ピーチャンに高度を下げゆっくり旋回するように頼んだ。
「ええっと、あの尾根の近くだったよな……お、おお、あったよマジで!」
それは、周りを山々に囲まれて ひっそりと存在していた。
あれは地上から見つけることは不可能に近いだろう。
つまり、このダンジョンは僕らが見つけない限り詰んでいたわけだ。
ピーチャンはどんどん高度を下げていき、やがてダンジョン前広場へ静かに降り立った。
通常サイズに戻ったピーチャンは、いつものようにシロの頭にドッキングしている。
そんなシロたちと一緒に1階層へ続いている階段を下りていく。
下のフロアに足をつけた瞬間、シロは僕の方を振り向きコクっと頷いた。
このダンジョンの管理者権限を無事に取得できたのであろう。
これにより、このローザン王国での活動がかなりやり易くなったな。
ひとつ押さえることが出来れば、リンクの範囲内にあるダンジョンはすべて制御可能になる。
そうして、シロを介しダンジョンとコミュニケーションをとっていく。
するとシロが、ダンジョンの名前はどうするのか聞いてきた。
う~ん、名前か……。
ここは山に囲まれているし、そうだな~、よし! 『シンゲン』にしよう。
ダンジョン・シンゲン。なかなか強そうではないか。
ちょっと間違えると焼き鳥屋チェーンの店名ように聞こえるが、それはノブナガでもイエヤスでも一緒だろう。
ああ、焼き鳥が食べたくなったなぁ。冷たい生をキュキューっと! いかん! キャベツまで食いたくなってきた……。
まあ、焼き鳥はさておき、ここのダンジョンは『シンゲン』と命名された。
ダンジョン・シンゲンと協議していく中で、リンクが組めそうなダンジョンが他に2ヶ所存在することが判明した。
ひとつは南にあり、そこはおそらく ”ローザン王国で唯一のダンジョン” と呼ばれている所ではないかと思う。
以前、アンリエッタ王女に聞いた話では、この国の王都に程近く利便性が良い所にあるらしい。
そして、もうひとつは東にあるようだ。しかも、ダンジョンがある場所は地下30mの地点だという。
まあ、これはダンジョン同士のリンクを組めば問題はなくなるはずだ。
そして、位置の特定など情報を整理するべく 詳しく話を聞いていくと……。
とんでもない勘違いをしていることに気がついた。
『地下30m』などという そんな表現ではなかった。ダンジョンの説明は海抜によるものだった。
海抜とは海の水面を0として測定したものをいう。
よって、ダンジョンが示している地点は陸上とは限らないのである。
というか、離れている距離からいっても、おそらくそこは……『海』ですよね。
すると、人魚やマーマンあたりでないとダンジョンに入ることは不可能だよな。
仮にそういう亜人種が居ればという話ではある。そうでなければ誰も立ち入るどころか、近づくことすら出来ないだろう。
とりあえず、その二つのダンジョンに地脈を通しリンクを張ってもらった。
そのうえで管理者権限を取得する。
ダンジョンへの命名に関しては、ノブナガ、イエヤス、ケンシン、マサムネなど候補はいくつか頭に浮かんできていた。
その結果、王都に近い方を『イエヤス』、海にある方を『ムラカミ』とした。
なぜ、この名前になったのか?
――何となくである。
ただ『ムラカミ』の名は、かの有名な村上水軍から取ったものである。念のため。
ダンジョン・ムラカミ についてだが、周りで暮らす海洋生物だけでも生命維持はできる状態である。
そして、稀に海上を行く船から生物だけをダンジョンへ引き入れていたという。
そう、このダンジョンはアースでいう所の ”バミューダ海域” のようなことをやっていたわけだ。
……これは今一度、ダンジョンのあり方について協議する必要があるだろう。
ピーチャンの価値がまた上がりました。サイズチェンジができるので、また良い感じになるのでしょう。実際に寝てみたいですね~。ていうか、インコが大きくなったところを想像すると……抱きつくでしょうね。くそー、カルロがうらやましいぞー。 カルロくん、他所のダンジョンまで開発しておりまーす。「海底ダンジョン」何か良い響きですね。
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