表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/137

95. ウイスキー

 今日の僕たちは ダンジョン・スパンク の上方に建っている蒸留所(じょうりゅうしょ)に来ている。


 昨日、(やしき)にガンツから連絡が入ってからというものソワソワして仕方なかったのだ。


 何をソワソワって? 決まっている。いよいよ3年物を解禁(かいきん)する時が来たのだ。


 僕が従魔(じゅうま)たちを連れ、蒸留所…………ああ、もう、言いづらい! 


 何か呼びやすい名称はないものか? 


 蒸留所が英語で「distillery」。読み方としては「ディスティラリィ」なんだよな。


 カルロ・ディスティラリィ……ますます言いづらい。


 うう~ん、もう、ウイスキー蒸留所だから『カルロウイスキー』でいいか!


 これから、『カルロウイスキー』にしよう。


 僕たちが入口に転移してくると、待ってましたとばかりにガンツが飛び出してきた。


 「おお、ようやく来たか。待ちかねておったぞ」


 いやいや、ガンツはここの工場長かよ! ……まあ、当たらずも遠からずなのか?


 昨年、あまりにしつこく言うもので、ガンツの鍛冶工房(かじこうぼう)とここを転移陣で(つな)げてやったのだ。


 そうしたら、ご覧のとおりに入り(びた)っている状態なのだ。


 まあ、用がある時はジョルジュが呼びに来ているみたいだが。本当にそれでいいのか……。






 ガンツと共に僕たちは地下にあるウイスキー貯蔵庫(ちょぞうこ)へ向かった。


 地下蒸留所に併設(へいせつ)されたウイスキー貯蔵庫。


 天井は高く10m程あり、足元はコンクリートで固められている。


 そこには、木製の枠組(わくぐ)みを利用し上下2段になったウイスキー(たる)が、通路の左右に規則正(きそくただ)しく並んでいた。


 そして、ウイスキー樽の一つ一つにはカルロの文字と樽詰(たるづ)めされた日時、蒸留器ナンバーなどの詳細(しょうさい)が書き記してあった。


 「こっちじゃ」


 ガンツに案内されるまま付いていくと、貯蔵庫の奥の方に3m程の長テーブルが置かれていた。


 貯蔵用の大樽の前に置かれたテーブルの上には、(いく)つかのグラスと水差しそして小さな小樽が置かれていた。


 「まずはこっちじゃな」


 ガンツは()れた手つきでグラスを持つと、大樽のコックをひねり琥珀色(こはくいろ)の液体を(そそ)いでいく。


 すると(あた)りにはウイスキー特有のアルコールの匂いが一瞬立ち込めた。


 そうしてガンツは、2個のグラスにウイスキーを注ぎ終わると、


 「ほれ、お前さんが最初じゃ」


 と、片方のグラスを僕に差し向けてくる。


 「うん、ありがとう」


 …………


 …………


 「どうじゃ?」


 「悪くない! 色も香りも。間違いなくウイスキーだな」


 「じゃな、ワシも初めは半信半疑(はんしんはんぎ)だったが変わるものじゃな」


 「だろ! これが5年、9年、12年と経つうちにまろやかになり そして深みが出てくるんだ」


 「ほほう、それはまた楽しみじゃわい。クククククッ、ハァーハハハハッ」


 あまりの嬉しさに僕とガンツはふたりで大笑いするのであった。






 そして僕は、テーブルに置かれている小さな樽が気になっていた。


 「なぁガンツ、これは何だ?」


 「おお、それもあったわい。だが、ちーと待ってくれるかのう」


 ガンツはそう言うとテーブルの下に置いてあった木の(うつわ)を手にした。


 そして、目の前の大樽からウイスキーを注ぎ始めた。


 「ほれっ、おめーさんも ”いける口” じゃろ」


 そう言って、シロの前に器を置いていた。そして、もうひとつはヤカンの前。


 「おお、1匹増えたのじゃな。しかし器が足りんのう……」


 そこへ すかさずシロが前に出ると、インベントリーから自分のフライパンを出してガンツに渡していた。


 そして、みんなの目の前に3つ器が(そろ)ってから一斉(いっせい)に酒を()めはじめた。


 おー、みんな尻尾をブンブン振りながら スゴイ勢いで舐めているなぁ。――可愛い。


 そうして、シロたちを(なが)めているところへ、


 「ほれ、コイツをやってみるといい」


 僕は、ガンツから1(きゃく)のグラスを受けとった。






 んん、この香りは……やはりブランデーだよな。


 「ガンツ、これ!」


 「そうじゃ、以前お主(おぬし)が言っておったじゃろう。その白ワインが手に入ったんじゃ」


 「しかし量が無くての、これだけしか出きなんだわ」


 「でもスゴイよ! 手探(てさぐ)りでだろう」


 「まあ、そうじゃが。やる事はほとんど変わらんのでな」


 ほほう、さすがガンツ。酒造りに対する情熱が違うよな。






 そうして、酒瓶(さかびん)2本にウイスキーを()めてもらった後 隣の温泉へ寄っていくことにした。


 温泉施設(しせつ)の玄関に出てくると、そこには馴染(なじ)みの護衛騎士(ごえいきし)が2名立っていた。


 「これは、カルロ様。お久しぶりです」


 「うん、こんにちは。……ああ、今日はお見えなのですね。セーラ様はご一緒ですか?」


 「はい、今日はお二方のみです。よろしくお願いします」


 「うん、了解。また後でね」


 そして、身体を洗い露天風呂(ろてんぶろ)に行こうと表に出ると。


 ――ひしっ!


 もう、お分かりセーラである。


 僕が来たと連絡があったのだろう。表で出待ちしていたようだ。


 僕はセーラを抱き上げシロに乗せてあげると、横にならんで露天風呂を目指した。


 「おお、カルロ(きょう) 久しいのう。元気であったか」


 「はい、おかげさまで。国王様こそご健勝(けんしょう)のこととお(よろこび)び申し上げます」


 「うむ、そのぐらいで良い。さあ、入られよ」


 「おーおー、セーラはシロ殿に乗せてもらったのか。良かったのう」


 「はい! セーラはとても楽しいです」


 「そうかそうか、……おや、一匹増えておるようだが?」


 「こっちはユキだそうです。お父様」


 「それでは、ユキ殿もよろしくな」


 こうして、ユキもみんなに受け入れられていくのであった。




醸造所⇒蒸留所に変えております。そして、まんまカルロウイスキーって、もう少し捻りなさいな! ウイスキー貯蔵庫は雑誌やテレビに出てくるような感じです。ブランデーの原料は白葡萄です。発酵させて白ワインにしてから蒸留する形になります。後は樽に入れて寝かせるようです。 次回からいよいよ動き出すのか……な?



ブックマーク、評価、感想、いいね! などいただきますと励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
アーガルム伯爵家 紋章
挿絵(By みてみん)
 作:マネキネコ
挿絵(By みてみん)
 作:みこと。さま FA頂きました‼ (リンク有)
挿絵(By みてみん)
 作:七海 糸 さま FA頂きました‼ (リンク有)
― 新着の感想 ―
[良い点] 蒸留所だろうが、蒸留場だろうが、言い難いのは同じッス!(笑) 昔、日本の有名な酒造会社・某 三鳥さんのウイスキー蒸留所の見学に行ったんですが、所員の方たちは、ウイスキーの保管倉庫を略して…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ