8. レンタル奴隷
匂いをたどり、行きついた先はメイン通りを2つ入った裏手の小さな奴隷商館であった。
「ここかー、奴隷商館ルマンド」
僕はシロの頭を撫でつつ呟いていた。
ルマンドかー。
食べるとやたら散らかる細いクレープクッキー(ブ○ボン)を思い浮かべてしまった。
う~ん、チョコリエールも好きだったなー。
なんとも懐かしい……。
表にでているスタンド看板に目をやると、
【簡単! お手軽にレンタル奴隷】 の文字と。
その下には、料金表などがつらつらと書かれていた。
すると僕の存在を把握したのか、初老の店員が表に出てきて頭をさげて挨拶をしてくる。
せっかくここまで来たのだし、このレンタル奴隷というのもちょっとは気になる。
僕は店で話を聞いてみることにした。
初老の店員はここルマンドの店長さんであった。
シロと共に客室に通され、レンタル奴隷についての説明をうける。
――なるほどね。
レンタル奴隷とは文字のごとく、奴隷を貸し出すサービスのようだ。
期間は1日から、1シーズン(80日)、そして年間契約と自由に組むことができるのだ。
用途は買い物の荷物持ち、ベビーシッターの補助、お店の臨時店員などさまざまで。
中でも多いのが、従者の代わりとして学園に連れていく事だとか。
表に出ないなら、奴隷でも問題ないということか。
ここ最近では、各貴族も現地からわざわざ連れて来るよりもお手軽で、
卒業すれば不要になることからも、レンタル奴隷を利用する者が増えているという。
それらのレンタル奴隷は学園用として、ある程度の教育もされているみたいだ。
まあ、王都ならではの商売ではあるのかな。
でも、「レンタル奴隷」 おもしろい試みだよな。
僕はこの秋から貴族の学校に通うことを伝え、さっそく奴隷を見せてもらうように頼んだ。
従者の代行ということで、ルマンドの店長さんは成人した大人の奴隷をすすめてくる。
しかし本来、僕にはシロがいるし従者は必要としない。
そこで条件を指定し、貴族の子息ばりのわがままを通すことにした。
年齢は10歳未満、女の子、そして亜人族だ。
亜人族の奴隷は教育が行き届いていないという店長さんを、
部屋だけで使う使用人だからと、なんとか説き伏せ、候補の奴隷を出してもらうようにした。
そうして、待つことしばし。
ドアがノックされたあと、8人の小さな奴隷たちが僕の座るソファーの前に立ち並んだ。
大体が犬人族、猫人族、そして狼人族だ。
年齢を指定してしまったせいで、エルフやドワーフ、鬼人族などはいない。
一通り見ていくなかで……。
――おおっ、居たな。
例の黒髪ショートで翠眼の猫耳少女だ!
彼女もしきりにこちらを見ている。
エメラルドを思わせる大きな瞳は、少し潤んでいるように見える……。
そして、それなりに吟味をしているフリをしながら鑑定をかけてみる。
クロナ Lv.2
年齢 8
状態 気落ち
【従魔】 ポンタ(スライム)
HP 14/14
MP 8/8
筋力 6
防御 4
魔防 4
敏捷 6
器用 3
知力 4
【スキル】 魔法適性(光、風)
ほうほう、やはり有ったか光属性。
何らかの経緯で王族の流れを汲んでいるのだろう。
それから、ポンタという従魔をつれているなぁ。
しかし、その従魔がいることは秘密なのだろう。
その辺りも何か有りそうではあるのだが、おいおい分かってくるだろう。
僕は彼女を借り受けることにした。
レンタル料は1年で30,000バース。
そして、保証金として15,000バースが別途必要だった。
うーん。まあ、一般奴隷が平均で400,000~500,000バースといったところだろうか。
そう考えれば、割とリーズナブルな料金といえるのかな。
どのみち、貴族相手のビジネスということだな。
シロに金貨4枚、大銀貨5枚を出してもらう。
――おおっ、なんだ?
金貨のデザインが変わっている。
隣にいるシロに念話で聞いてみると。
100年程まえに贋金貨が出回ったとかで、新しい金貨に切り替えられたようだ。
ふ~ん、僕が亡くなった後もいろいろあったんだなぁ……。
支払いと奴隷のレンタル契約を結ぶ。
僕が子供だからだろうか、途中解約はできても払い込んだ料金は返還されない等。
注意事項を長々と聞かされ、諸々の登録手続きはすべて終了した。
奴隷商を出た僕たちは、そのまま裏手を通りぬけ賑やかな声が上がっている市場に突入していった。
まずは腹ごしらえだな。
けっこう長い時間 奴隷商館に居たおかげで、とっくに昼をまわっている。
シロの鼻を頼りに、旨そうな串焼き屋を探していく。
さっそく見つけた串焼き屋で、6本の串焼きを買い。
店の隣りに置いてある木箱に座らせてもらって、みんなで串焼きを頂くことにする。
シロは ちゃっかり自分のフライパンを出し、クロナに串をはずしてもらっている。
あのフライパン……。まだ持っていたんだなぁ……。
――ズズっ、ちくしょう。鼻の奥がツンとする。
物持ちのいいヤツめ。
などと思いながらも、隣に目を向けてみると、
幸せそうな顔で、串肉にかじりついているシロとクロナ。
そんな姿を見ているだけで、自然と心が和んでいくのであった。
お腹がふくれたあとは、クロナの服や靴、下着、その他日用品を購入してからホテルに戻っていった。
ホテルに帰ってきたが、お父様とお母様は揃って出かけているようだ。
僕はシロとクロナを連れ、自分の部屋に入ってベッドに腰掛けた。
シロは僕の正面にお座りをしている。
所作なさげにオロオロしているクロナに、
そちらにある椅子をシロの隣りに持ってきて、座るように促した。
「さて、クロナ。まずはこれなんだが……」
と、麻布でできた小さな巾着をクロナに渡してあげた。
カルロくん、猫耳クロナをゲットです。んん、従者=メイドじゃん! カルロよくやった! なかなか強引でしな~。まだ、子供よ。親の許可いるでしょう? なに! シロが保護者? あ~、そんな考えも……。とにかく、パパ、ママに説明だよ!
ブックマーク、評価、感想、いいね!、などいただきますと励みになります。




