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クマさんみたい

バスを降りると11時を回っていた。


3月だけど暖かい一日になりそうだった。


「森さん、お腹すいてる?先にお昼にしようか」


遊園地のマップを見ながらどこがいいのか考えていると


「じゃあ、こっちです!」


とオレの手を引いて芝生のある広場に案内した。


「では!準備開始です!!」


森さんはキャリーバックから次々に荷物を出し始める。

レジャーシート、クッション、ひざ掛け、紙皿、割りばし、お手拭き、紙コップ、水筒・・・。


「なにこれ、四次元ポケット?」


驚きながら聞くと森さんはふふっと笑った。



弁当は本当に豪華で、量も5人分はあった。この弁当を食べてもらうだけでも太田を投入できないか本気で悩んだ。


森さんが


「こうなる気配があったので、太田さんにやっぱり一緒に行きましょうと誘ったんですが、『デートなんだから駄目だよ!!!』と断られました・・・」


と肩を落とす。


「この暖かさだし、夕方までもたないだろうなあ」


もったいないなあ、と思いながらから揚げを口に入れる。うまいだけにより残念さが増す。


・・・と、ちょっと先をバスで一緒だった中学生カップルが歩いていた。


オレと森さんは目をあわせ・・・


「いやあ、助かった」


こんな目つきの悪い男がダッシュで近づいてきたからよっぽど怖かったと思うが、無事弁当を食べてもらうことになった。


森さんがキャリーバックから使い捨ての蓋つき容器を取り出し、きれいに盛り付けた弁当と割りばし、お手拭きのセットをちゃんとビニール袋に入れて二人に渡す。


「ありがとう、食べてくれてうれしい」


森さんが満面の笑みで笑うと中学生カップルもホッとした様子で、何度もお辞儀しながら去っていた。



「食った~」


オレがレジャーシートに大の字に横になると森さんも同じように横になった。


「気持ちいいですね~」


ふたりで空を見ながらたわいのない話をする。そういえば、前も気がついたら2時間近く話したことあったっけ、と思い出す。


「森さんとはなんか自然にいろいろ話せるなあ」


というと森さんの「私もです~」と嬉しそうな声が遠くから聞こえた。


・・・。


髪を優しくなでられている感覚で目が覚める。


寝ぼけ眼で見上げれば森さんが優しい笑顔でオレの頭をなでていた。


!?


「あれ!?オレ、寝てた???」


森さんの顔を頭突きしないように起き上がると森さんが「クマさんみたいで、かわいかったですよ」と笑っている。


現状の理解が追い付かず、「ちょっと・・・トイレ、行ってくるわ」と逃げるようにその場を離れた。


心臓がバクバクいう。


頭をなでられていた優しい手の感覚の余韻がまだ残っていて、動揺が隠せない。


それに・・・


「森さん、笑顔がかわいすぎんだけど・・・」


妹のように思っていた森さんが一人の女の子として急に意識されて、オレは大きく息を吐いた。

読んでくださってありがとうございます

むやみに手作りのものを渡すのはいまの世の中なしだと思いますが、物語なのでご理解を。。。

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