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1-49

 生きる為に犯罪行為にまで手を染め、一致団結していた姿は、もはや見る影もない。


 そんな彼らを前に、地世の導師は半笑いを口元に浮かべ、

「地世のチカラを強制的に流し込み過ぎた反動で、闘争本能だけになってしまった様ですよねぇ~実験ついでに「城攻め」に活用しようと思っていましたがぁ、こんなガラクタでは使えませんですよねぇ~♪」

 自らの失態を自嘲している風に嘆いていると、目の端に光る物がキラリ。


「!」


 焦る様子もなく、淡々と左腕を顔の横に上げ立てると、

 ガキィキィッン!

 ドロプウォートの飛び込みざまの横一閃が。


 ローブの下に何かしらの防具を着込んでいたのか、何事も起きていないかの様に受け止め、余裕の半笑いさえ崩す事も無く、

「四大貴族令嬢ともあろう御方が名乗りもせぇず、いきなり斬り付けるとはぁ些か無礼が過ぎますよねぇ~♪」


「やかましいでございますわァ!」


 受け止められた剣先を支点に反動を利用し、

「外道に名乗る名など、持ち合わせておりませんわァ!」

 続けざまに回し蹴りのコンボ。


 しかし難なく後方へ飛び退きかわし、

「あぶない♪ あぶなぁい♪ あぶないですよねぇ~♪」

「クッ!」

 落下態勢に入るドロプウォートであったが、地世の導師が足場にしていた太枝に手を掛けると、


「逃がしませんですわァ!」


 常識外れな身体能力を以って幹を蹴って猛追。先祖返り故の、チートなスペックか。

 すると追われる立場の「地世の導師」がドロプウォートの能力に興味を持ったのか、飛び移った太枝を足場に、

「ふぅむ。ならば余興ついでに少々お相手して差し上げますですよねぇ~♪」

 急反転。

 ドロプウォートの倍のスピードで飛び迫り、二人の接触タイミングはカウンターの上乗せによる倍化に、更に上乗せされ、


(はっ、早いですわァ! こちらの攻撃が間に合いませんですわ!)


 剣を手にしたまま、咄嗟に両腕を十字に交差、


(クゥッ!)


 空中で防御態勢を取るので精一杯であったが、

「え?!」

 反撃して来ると思われた地世の導師は、真横をスルー。


 太枝に着地したドロプウォートもすぐさま反転追尾したが、心の何処かで「攻撃では無かった事」を一瞬でも幸運に思った自身への苛立ちも多分に含め、


「戦うのではなかったのですかァ!」


 逃げる背を責めると、地世の導師は見透かしたように、

「ヒャーハッハッ!」

 からかい笑い、軽口を叩こうとした刹那、


『アタシをシカトしてんじゃないさぁねぇ!』


 右拳に白き輝きを収束させたラミウムが、ニヤケた口の横っ面目掛けて飛び迫り、


「ぶっ飛べぇ変態ローブゥーーーッ!」


 右拳を振り抜き、

 バギィバギィギキィィィ!

 大音を立てたが、大破したのは地世の導師がほんの一瞬、足を着けた太枝だけ。


 当の本人は蝶の様にひらりと身をかわすと、盗賊村の民家の平屋根にストンと降り立ち、後を追い降り立った二人に困り果てた風な口振りで、


「ヤレぇヤレぇ、まったくぅ人の話を聞かない人達ですよねぇ~♪」


 フードから覗く口元に小馬鹿にした笑みを浮かべ、

「そちらが優位に戦える場所を探してあげていたダケ、なんですよねぇ~♪」


「「なっ?!」」


 怒り交じりに驚愕する女子二人。

 国を支えし「四大貴族が一子であり首席誓約者(※自称)」の誇りが、選ばれし「百人の天世」のプライドが著しく傷つけられ、


「何ですってぇえっぇぇぇぇぇ!」

「絶対ぇひん剥いてぇ「フードで隠した不細工ヅラ」を晒さしてやんよォ!」


 怒髪天を衝くが如く激昂するドロプウォートと、ヤンキー張りのイキ顔で怒りを露わにするラミウムであったが、そこは単なる一兵卒とは違う所。

 どれだけ感情を昂らせようとも、紙一重の冷静さは残し、


「余裕な態度に気後れんじゃないよォ、ドロプゥ!」

「無論ですわ! 当然ですわぁ!! 上等ですわァ!!! アチラのお望み通り、二対一も正当でぇすわ!」

「結構な事さぁね!」


 したり顔の二人は打ち合わせも無く右と左に跳ね分かれると、左右からの挟み撃ちを目論み駆け出し、


「それよりラミィ!」

「ぁんだい!」

「貴方は「聖具」が無ければ戦えないのではなかったですのぉ!」

「何だぁい、こんな時に藪から棒に!」

「ですが!」

「ウルサイねぇ! 聖具が無けりゃ「燃費」が悪過ぎるんだよぉ!」

「んなぁ! それって「面倒臭がっていたダケ」の話では、」

「ゴチャゴチャ細かいオンナだねぇ! そんなこっちゃオトコは逃げるよォ!」

「何ですってぇ!」


 いつもながらの不毛な言い争いをしながら、


「まったく以って、下らないですよねぇ~♪」


 余裕の呆れ笑いで棒立ちする地世の導師に、


「「ウル(セェヨォ・サイですわぁ)!」」


「剣と拳」で左右から襲い掛かったが、

「まったく遅いのですよねぇ~♪」

 半笑いを浮かべる地世の導師は半歩下るだけ。二人の渾身の初手を軽々かわしたが、


「コレで済む訳がねぇだろぅボケぇ!」

「これからですわァ!」


 返す左で殴り掛かるラミウムと、ツバメ返し的にV字を描き、追う様に斬り掛かるドロプウォート。

 猛攻を絶えず繰り出し、攻め続ける二人であったが、しかし、


(こっ、攻撃が当たりませんですわァ!)

(っの野郎がァ! 器用にヒラヒラヒラヒラかわしくさりやがってぇえぇ!)


 すると、手すら使わずかわし続けていた地世の導師が「形相で迫るドロプウォート」に嘆き交じりに、女性的でもあった「口調と声色」を突如、男性的に変え、


≪ったくよぉ、首席で、この程度とはなぁ……≫

「な!?」


 驚きと、更なる怒りで動きが固くなった刹那、黒き光を帯びた地世の導師の右掌底がドロプウォートの腹に深々と突き刺さり、

「カッ……カハァ……」

「ぶっ飛びなぁ」

 そのまま激しく突き飛ばされ、屋根の上を砂煙を舞い上げ転げ飛び、


「ドロォーーープゥ!」


 焦りの声を上げるラミウム。

 そんな彼女を横目に、地世の導師は「コチラが本当の素」なのか、変えた男性口調で、


「おぅ~飛んだ飛んだぁ、よく飛んだぁ♪ ったくよぉ、首席誓約者がアレじゃあ「今の時代の勇者」も底が知れるよなぁ~」

(「たくよぅ」!?)


 ギクリと、急に青ざめるラミウム。

(この口癖! この声ぇ!! この話し方ぁ!!! まっ、まさかコイツは!!!!)

 意識は遥か過去をフラッシュバック。


 向けられる「鎧を纏った男女七人」の屈託ない笑顔。


 意識は瞬時に現実に戻り、

「アンタ、まさか!」

 過去の呪縛に絡め捕られた様に、驚愕した表情で身動き出来なくなるラミウム。


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